02.鍛錬②
風があった。
もっと言えば、それは暴風だった。
空間の中心で、渦を巻くようにして荒れ狂う。畳を削り、天井を掠め、柱を抉る。
風を起こしているのは、人間だ。
ふたり。
入れ代わり立ち代わり、十合、二十合と剣戟を交わす。
その交錯は止まるところを知らず、拮抗したままいつまでも続くかとも思われたが、一方が踏み込んだ一撃をもう一方がいなし、反転した一撃を振るい、踏み込んだ一方が一足に後退して距離を置くことで一瞬の静寂が生まれた。
数メートルの距離をもって対峙するのは、白城と、向枝だった。
身に纏うのは守護連の戦衣ではなく、紺色の道着のようなものだ。得物も、向枝は無手だが白城は木刀を持っている。真剣ではない。
鍛練である。
ふたりは陽が昇る前から向かい合っており、既に数時間近く戦い続けているが、未だ終える様子がない。一瞬前までの激しい交撃が嘘のように、静かに睨みあっている。
白城は木刀を担ぐようにして構え、相対する向枝を睨む。対する向枝は無手であることに加え、構えることもなく自然体に立っている。
打ち込む隙を互いに探りながら、じりじりと接近していく。




