レフィナ
ポイントを、ありがとう!
悦って何時まで経っても動こうとしないレフィナから一旦装備を取り上げた。
それでようやくこっちの世界に帰って来た。
取り上げた時に何故か手に付着した液体を綺麗に拭い、ようやく帰路についた。
装備は汚らわしいのでレフィナに持たせた。
その帰り道。
「ご主人様っ!!ダンジョンっ!!ダンジョン行きましょうっ!!」
美味しそうな生肉を発見したライオン張りの勢いで『ダンジョン』と連呼するレフィナに、ユイスは早くもうんざりしていた。
「……荷物があるだろう」
レフィナの私物。
それが彼女のアイテムボックスを占拠しているのだ。
魔石が回収できないではないか、と告げてやると、レフィナは「こいつ天才か!?」とか言う目でユイスを見た。
「ッ?!確かに……!!」
背景に雷が見えそうなくらい驚愕し、戦慄している。
何でこいつは戦慄しているんだ。
こっちが逆に戦慄だ。
もうあの装備を使ってみたくて仕方がないらしい。
それ以外のことは全て二の次になっている模様だ。
おかげで三歩歩くごとに『ダンジョン』、『ダンジョン』と呟いている。
冗談でも何でもなく。
そしてユイスが我が家に辿り着いた。
金のあるユイスの家は、一人暮らしとは思えない大きさだった。
レフィナが家を見上げて感嘆した。
「立派なお家ですねダンジョン」
語尾がダンジョンになっていた。
こいつは一体何なんだ。
ユイスは、レフィナとのコミュニケーションを本格的に諦めた。
家にレフィナを招き入れることに若干の躊躇が生まれたが、招き入れた。
残念ながら、奴隷の衣食住は飼い主が見なければならないのだ。
ちなみにユイス邸は一人暮らしなのに二階建てであり、無駄に部屋を余らせている。
ソロ貴族を脱した時に友人を招き入れると言う野望の為だが、今のところその見込みは無い。
全く無い。皆無である。
最近では、同業者すらもユイスから逃げる始末である。
そんな悲しい事実は華麗に無視し、レフィナには空き部屋の一室を使わせようと考えた。
「お前の部屋は二階の、」
ドドド!バンッ!!どさどさどさどさっ!!ドドド!
レフィナはセリフの途中で駆け出し、階段を一息で昇りきると、一番手前の部屋を開き、中にアイテムボックスの中身をぶちまけた。そして扉を閉めてカオスとなった部屋を封印し、また一息で降りてきた後、輝く笑顔を浮かべて、こうほざいた。
「置きましたダンジョン!さあ行きましょうダンジョン!」
「今のは俺の部屋だ馬鹿野郎」
綺麗に整理整頓されたユイスの部屋が、一瞬でどえらいことになったのが見えた。
私物全てを放り込みやがったせいで、おぱんてぃーも見えたくらいだ。
羞恥心とは一体。
兎にも角にも、まずはこのアホに責任もって片付けさせる次第だ。
「ええ?!ではどこに置けばいいのですかダンジョン!?」
あれを『置く』と言い張る度胸だけは褒めてやりたい。
「あそこの隣がお前の部屋だ。放り棄てるな」
「ダンジョン!!」
レフィナは返事をすると、またしても階段を駆け上がって行った。
『はい』と言うセリフさえ忘れてしまったのだろうか。
レフィナの将来が心配になって来たユイスだが、自分の人生ではないからいいか、と考え直した。
片付けという名目のはずだったが、カオスを隣室に移動しただけでレフィナは再び帰って来た。
その間僅か20秒である。
全てアイテムボックスに詰め込み、全て放り棄てただけである。
「準備完了ですダンジョン!ダンジョンに行きましょうダンジョン!!」
「……話は最後まで聞け。ダンジョンは明日だ」
レフィナの輝く笑顔が一瞬で砕け散り、突如蒼白な顔でガタガタと震えはじめた。
「―――ッ?!……そ、それでは、こ、この子達は……?」
斧を抱きしめ、鎧を抱きしめながら信じられない物を見る顔でユイスを見つめて来る。
「この鬼畜生めッ!!」と言う言葉が透けて聞こえて来る。
しかしユイスはバッサリと斬り捨てた。
「明日使え」
もう良い時間である。
そもそも、どのダンジョンに行くかも決めていない。
一番楽なダンジョン行っても徹夜コースである。
無茶は体に悪い。
今日は飯食って寝るべきだ、と言う至極まっとうな意見に、レフィナは打ち砕かれた。
ユイスの冷徹な言葉に、レフィナは灰となった。
ユイスは灰色になったまま帰って来ず、ピクリとも動かなくなったレフィナに、油と布を放り投げた。
布がふぁさぁ、と顔にかかり、油の入った瓶がごんっ!とぶつかった。
しかし微動だにしない。
「磨いておけ」
ユイスが言うと、突然レフィナが覚醒した。
「はいっ!!」
レフィナは装備品マニアなのだろうか。
とにかく手に入れた(借りてるだけだが)高価な高価な玩具で何かしていたいだけなのだ。
迅速に、しかし丁寧に、優しく優しく鎧を磨き始めるレフィナ。
唾液とかで汚したのもレフィナだが。
「ピッカピカにしてあげまちゅからね~。うふっ。うふふふふっ」
非常に不気味だが、これでしばらく放っておいても問題は無いだろう。
問題はあった。
何時まで経っても磨いている。
しかも顔がヤバい。
女として、決して他人に見せてはいけない顔をしていた。
このままどんどんヤバい方向に行きそうだったので、レフィナを装備から離すことにした。
「家事は出来るだろう。手伝え」
「はい!」
暫く磨いていたからフラストレーションが発散されていたのだろう。
レフィナはすぐに返事をした。
こちらに来る前に、斧に熱いキスをしていたのはきっと気のせいだ。
そう信じたい。
ユイスは料理を手伝わせた。
株が大暴落しているレフィナだったが、普通に料理は出来た。
ダンジョンでは数日過ごすこともある。
料理も必須スキルだから当然といえば当然だろう。
しかしユイスは、レフィナが料理が出来なくても驚きはしなかっただろう。
何故ならレフィナだからだ。
「明日が楽しみですね!ふんふんふ~ん」
レフィナは完全に精神を切り替えたのだろう。
上機嫌に鼻歌を歌いながら、手元を見ずにタンタンとリズムよく食材を切っていく。
ユイスは、レフィナが誤って包丁で自分を切っても驚きはしなかっただろう。
何故ならレフィナだからだ。
まあそんなことは無く、普通に料理が出来た。
装備から離したレフィナはまだまともだったので、食卓も一緒だ。
あのままだったら確実に違う場所で食事を取っていたであろうに。
黙っていたら美人なのに。
いや。
黙って、動かなければ美人なのに。
残念で残念で仕方がない。
ユイスが心の中でそんな失礼なことを考えているなど露知らず、残念が、ふと食事の手を止めた。
「ご主人様」
「何だ」
レフィナは一度、じーっとユイスの目を見つめた後、首を傾げた。
「ご主人様は何故そんな殺し屋みたいな目をしているのですか?見られると、とっても怖いです」
この素直さだけは買ってやりたい。
考えなしの馬鹿野郎が。
「……エンチャントのスキルは知っているな?」
「はい!すぐ切れる使えないバフですよね!」
「そこだ」
ユイスは、ピッ!とナイフでレフィナを指した。
『すぐ切れる使えないバフ』。
これがエンチャントの評価を物語っていると言っていいだろう。
確かにユイスも昔はすぐに切らしていた。
戦闘中、驚いた時、疲れた時、逃げている最中。
何かに気を取られると、確かにすぐに途切れさせた物だ。
「はい?」
首を傾げながら、嫌そうにナイフの先端から顔を逃がすレフィナ。
刺さねぇよ。
「バフが切れるのは集中が途切れるからだ。お前は戦いながら違うことに集中できるか?」
レフィナは少し考え込んだ。
その後なんか身体を揺すったりシャドーをした後、再びユイスの顔を見た。
「……無理ですね」
実に素直な返事で大変よろしい感じだ。
ユイスもそれに頷き返した。
「俺は出来る様に特訓した。そうしたらこうなった」
言わば勲章である。
何を恥じることがあろう。
後悔など微塵も無い。
……微塵も。
微塵も…………!!
「へー。じゃあ凄く頑張ったんですねー」
すげー気のない返事が返ってきた。
ユイスも心の奥底で傷ついた。
「でも怖いものは怖いですね!」
続けて放たれた一言でダメージが加速する。
「……」
心に負った大きな傷をこれ以上広げぬため、無言で食事を再開し始めるユイス。
しかし、そこでレフィナがハッ!と何かに気付いた。
レフィナは考えたのだ。
この目と対面で食事するのは心臓に悪いから、珍しく脳細胞を使って考えたのである。
「そうだ!ご主人様、一度目を閉じてみてください!」
「……こうか?」
特に拒否する理由も無かったユイスが目を閉じる。
するとそこには、普通の目を閉じたイケメンが!!
「怖くないですっ!!普通の人です!あれ?ちょっと?格好良くないですか?や、やだ……」
レフィナはまず、怖くないことに驚き、喜んだ。
次に目によって抹殺されていたそれ以外の顔パーツを見て眉を寄せ、頬を染めて、もじもじし始めた。
今更何かを繕ったところで手遅れであることは理解していないらしい。
ユイスが目を開ける。
イケメンが殺し屋になった。
ギャップで当社比三倍だった。
「こっわっ!?え?なんですかこれ?あ、魔法?」
余りの印象の差に、レフィナはそういう魔法があるのかとまで疑い始めてしまった。
「……どんな魔法だ」
ユイスが呻いた。
そんな魔法あるなら、真っ先につかっとるわい。
「ご主人様ご主人様、提案があります」
「なんだ」
暫く眉を寄せて悩んでいたレフィナが再び口を開く。
「ずっと目を閉じていましょう。そうすれば怖くないですから」
「どーっすか?!超名案でしょう!!」みたいなドヤ顔で言ってきたので、ユイスは意図的に半眼を浮かべてレフィナを見た。
「……ひぃっ!!!」
レフィナは蒼白になった。
それがどんな顔だったかは、ユイスの名誉のために黙秘する。
その後、レフィナは驚異的な切り替えの早さで我を取り戻し、普通に腹いっぱい飯を喰らって満足そうにしていた。
そして陣形などの真面目な話も進める(10秒で終わった)。
具体的にはこんな感じだ。
↓
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「どこのダンジョンに行っていた?」
「三番です」
三番目に発見されたダンジョン。
実にわかりやすい。
「ならそこに行くぞ」
ユイスもソロで突破している。
集団で襲われるとユイスでもヤバイが、一匹ずつ釣り出せば全く問題は無い。
「はい」
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後は寝るだけだ、と言う状況になったところで、ユイスがレフィナにコップを渡した。
「これを飲め」
中身は半分ほど入っている。
受け取ったレフィナは、すんすんと鼻を鳴らした後に首を傾げた。
「これは?……お酒ですか?」
「いや、避○薬だ」
オーゥ!!ダイレクト!!
これさえ飲めば安心だね!
ユイスは殺し屋の様な目をしていながら、エロスに忠実だった。
いや、正確に言おう。
ただのオープンスケベだった。
鍛えに鍛えた、常に冷静な自分すらも、冷静なまま「行け」と命じていた。
ならば行かざるを得まい。
「……………………」
レフィナは真顔になり、まずコップの中身を見てから、ユイスの顔を見た。
「何でもするっていったよな?」
レフィナの瞳が動揺に揺れ、虚空を彷徨った。
「……アア、ソウ、デシタネ……。あ、あのぉー、実はですねぇ、私まだ、そのぉ……」
明らかにキョドっているレフィナ(18歳:処女)。
その様子を見て、ユイス(21歳:NOTチェリーGUY)はピンと来た。
「したことないのか?」
「…………はい」
レフィナが冷や汗を流しながら頷いた。
「ほぅ」
「あ、あのぉー……」
「勘弁して頂けませんかね、旦那ぁ。へへへ」と言わんばかりの顔で、ちらりとユイスを見上げる。
「覚悟を決めろ」
ユイスもこんな目になる前は経験があるのだが、最近はそういうお店に行くと店長さんにDOGEZAされてしまうのだ。
おかげで、ムラムラしてる。
それにレフィナが自分で言い出したことである。
慈悲は必要無い。
ピンク色の部分がそう叫んでいる。
「ひぃー?!ちょっ!ちょっまっ!!かくごっ!!かくごきめさせてぇえええええ!」
連行されるレフィナが必死に叫んだ。
「……いいだろう」
まあそれくらいならば良いだろう、とユイスは執行猶予を与えてあげた。
「あ、あああ、ありがとうございますぅぅ!!……ひっ、ふーっ。ひっ、ひっ、ふーっ。ひっ、ひっ、ふーっ」
違うくないそれ?
レフィナはしばらく間違った呼吸法で息を整えなかった後、「女は度胸じゃーっ!!」と言わんばかりに、ぐいっとお薬を飲みほした。
「よし、行くぞ」
猶予は終わったのだ。
開戦の時。
「おっ、おおっ、お手柔らかにぃーっ!!」
みためもおおきかったけど、さわるともっとおおきいとおもいました。
あといろけがたりないな、っておもっていました。
でも、ぜんぜんそんなことなかったです。
とくにこうはんは。
たっぷりたのしみました。
とても描写してはいけないことが終わった後、汗まみれでぐったりと倒れ伏すレフィナ。
「す、凄かったぁ……」
半分は陶酔と、もう半分は「やっと終わった」と言う感じだろう。
レフィナにとっては未知の体験だったが、なるほどアレはアレでああいう感じなのかぁ、と考えると、脳と直結しているレフィナのお口が勝手に動いた。
「あ、あんなものが私の、――むぐぅっ!!」
これ以上言ってはいけないと言う気がしたレフィナは、慌てて枕に顔を突っ込んだ。
セフセフ。
しかしその時、普段使わない筋肉が総動員された結果、腰に重苦しい感覚が。
「はぅっ?!こ、腰がぁ……!回復を下さいぃぃ!!」
賢者と化したユイスは、慈悲の心を以ってレフィナを癒してあげた。
おっぱいを、ありがとう。
Thank you Oppai!! forever!!
エロスには忠実