第2話 暗闇の向こう側
第2話 暗闇の向こう側
わたしが昨夜、頑張って作ったパワーポイントの資料と、すぐに印刷した吉田くんの資料。
これを武器に、何だか呆然としているわたしを置いて、吉田くんは素晴らしいプレゼンを展開してくれた。
あまり役に立たなかったわたしは、そのまますぐに吉田くんに引きずられ、会社の外に出た。
二人で並んで町を歩くと、凄まじく背の高い吉田くん。
ルックスの良さと相まって、注目を浴びている。
吉田くんは、時々わたしを見下ろしては、にっこりと笑い、歩くスピードもわたしに合わせてくれている。
誰……?
本当は、あなたは誰なの?
その質問を投げかけようとした、その時。
わたしと吉田くんの前に、一陣の風が舞った。
髪とスカートを抑えたわたしの前に、素早く広い背中が立つ。
「きゃー!!」
通行人の悲鳴。周囲が大騒ぎしている声が聞こえる。
でも、わたしには吉田くんの背中しか見えなくて……
「何!? 何が起きたの?」
わたしが混乱して尋ねると、吉田くんは緊迫した様子で、わたしを背後に庇ったまま一歩下がった。
「思ったより、早かったな……藤森さん、俺から離れないで」
「え……?」
吉田くんの言葉の意味が分からずに、わたしは吉田くんの腕の隙間から、前を覗き込んだ。
瞬間、衝撃で息が詰まる。
わたしと吉田くんの前にいたのは、ゾンビゲームに出てくるような、半分腐った、元人間みたいなの……
それに、背中に羽が生え、僅かに宙を浮いている、顔が牛で体が人間の、異形のものだった。
知ってる……わたし、このシーン知ってる!!
夢で見た、あの場面に自分がリアルに立っていることが、信じられなくて。
呆然と、吉田くんの紺色のスーツの背中を見つめていた。
わたしの日常が、音を立てて崩れ始める。
目の前に現れたのは、涎を垂らし斧を振るう「牛の怪物」。
そして、絶体絶命のわたしを救ったのは、
完璧なスーツに身を包んだ「彼」の振るう一振りの剣だった。
――物語はここから、真実へと動き出す。
次回、新章「終わりの始まりの序奏」開幕。
第1話「異形の怪物とスーツと剣」へ続きます。




