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契り  作者: 月蝕刻
season1
9/13

公開処刑(ウェディング)

会場は街の教会でも、龍の神殿でもなかった。アキが一夜にして山頂の工房の前に作り上げた、白磁と金剛石の特設祭壇だ。

招かれたのは、震え上がる街の有力者たちと、面白がって空を埋め尽くす龍の親族たち。

だが、主役であるシキの姿は、祭壇に登るまで誰にも見えなかった。アキが「私の許可なくシキを直視するな」と、不可視の結界で覆い隠していたからだ。

「……シキ。怖いか?」

祭壇の裏、アキはシキの婚礼衣装を整えながら、その震える指先を自分の口元に寄せた。

シキが着せられているのは、布というより「魔力の防護壁」を織り込んだ重厚な白銀の衣。アキの鱗を加工して作られた、世界で最も硬く、最も美しい拘束具だ。

「……怖くないよ。ただ、みんなが見てると思うと、ちょっと緊張するだけ」

「……お前を見る奴らは、私が全員、石像に変えてもいいんだよ?」

「だめだよ。今日は、お祝いの日なんだから」

シキが苦笑してアキの頬に触れると、アキは満足げに目を細め、シキの薬指に「あの指輪」を嵌めた。

【公開処刑(という名の誓い)】

二人が祭壇に姿を現した瞬間、龍たちの咆哮と、人間たちの悲鳴に近い歓声が響き渡った。

アキはシキの手を引くのではない。シキの腰を抱き寄せ、自分の体の一部であるかのように密着させて歩く。

「……静かにしろ」

アキが短く、冷徹な声を放つ。それだけで、空を覆う数百の龍たちが一斉に沈黙し、地上に平伏した。

「今日、この時から。この男、シキは私の一部となった。……こいつに触れることは、私の心臓を素手で掴むことと同じだと思え」

アキは神父も介さず、参列者たちに向かって言い放つ。それは誓いの言葉ではなく、宣戦布告だった。

「こいつが望むなら、私は世界を焼き払う。こいつが傷つくなら、私は歴史を止める。……シキを損なう全ての事象は、私の敵だ」

アキはそこで言葉を切ると、シキの方を向き、その瞳に宿る狂気的なまでの愛を露わにした。

「……シキ。お前はもう、自由じゃない。私の腕の中でしか息ができない、私のものだ。……後悔してないか?」

数千の視線がシキに注がれる。普通の人間なら、その重圧だけで発狂しかねない光景だ。

だがシキは、アキの腕の強すぎる力加減に、かつてない安らぎを感じていた。

「……後悔なんて、するわけないよ。……アキ。僕を、一生飼い殺してね」

シキがアキの首に手を回し、自ら唇を重ねる。

その瞬間、アキの背後から巨大な魔力の翼が展開され、山頂を黄金の光が包み込んだ。

【読者の代弁者・バルガスの独り言】

空中からそれを見ていたバルガスは、深いため息をついて隣の龍に話しかけた。

「……見ろよ、あの坊主。自分から首輪を締め直してやがる。……アキもアキだ。あんな幸せそうに獲物を喰ってる顔、千年生きてて初めて見たぜ」

「……あいつら、もう二人だけで別の宇宙に住んでるな」

そろそろハッピーエンドですよ……?

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