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契り  作者: 月蝕刻
season1
6/14

朝焼けを拒む腕の中で

「……どこ行くの」

低い、けれど甘く掠れた声がシキの耳元で響いた。

翌朝。カーテンの隙間から差し込む朝日が、馬車の中を白く染めている。シキは一晩中、隣にいるアキの体温と、自分の制御不能な心臓の音に翻弄され、結局まともに眠れたのは空が白み始めてからだった。

少し重い頭を振って、こっそりベッドから抜け出そうとした、その時だ。

「っ……!」

腰に、ひやりとした、けれど強固な感触が巻き付く。

アキの尻尾だ。

人化していても、彼女の意思一つで現れるその「龍の体の一部」は、シキの胴体を優しく、けれど絶対に逃がさないという確信を持って拘束した。

「アキ……起きてたの?」

「……お前が心臓をバクバクさせて、ちっとも寝ないから。……気になって、私も浅い眠りしかできなかった」

アキは目を閉じたまま、尻尾の力を強めてシキを自分の胸元へと引き戻す。

シキの背中がアキの柔らかな体にぴたりと密着し、逃げ場がなくなる。

「あ、あの……ごめん。その、狭いかなって思って」

「狭くない。……お前が私のそばから離れる方が、私にとっては不都合」

アキはゆっくりと目を開けると、寝起き特有の潤んだ黄金の瞳でシキをじっと見つめた。

そして、自由な方の手でシキの頬をなぞり、目の下の僅かな隈を指先で確認する。

「……寝不足。顔色が悪い。……今日は予定を変更して、ここで昼まで寝る。私の腕の中で、強制的に」

「ええっ、でも、せっかくの旅だし、景色が……」

「景色なんて、お前の健康より優先される価値はない。……ほら、目をつぶって。私の心拍に合わせて呼吸して」

アキはシキの頭を自分の肩に埋めさせ、大きな猫のように喉を鳴らす。

シキにとっては、心臓が爆発しそうなほどの「恋愛的なドキドキ」だが、アキにとっては「大切なパーツの不調(寝不足)を正すためのメンテナンス」という名目の、極上の独占タイムだ。

(……これじゃ、余計に眠れないよ……)

シキは内心で悲鳴を上げるが、アキの尻尾は満足げにシキの脚にまで絡みつき、文字通り「一蓮托生」の形を作っている。

読者がこの光景を見れば、「ラブラブすぎて当てられっぱなしだ」と思う反面、アキの尻尾がシキを完全に『捕獲』しているその絵面に、やはり「逃げ場のない愛」の重さを再確認することになるだろう。

「……おやすみ、シキ。……いい夢見なかったら、承知しないから」

アキの独占欲に満ちた子守唄を聞きながら、シキは再び、甘くて重い眠りの中へと引きずり込まれていった。

pixivで先行公開してます。個別投稿をめんどくさがってるだけですが………

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