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契り  作者: 月蝕刻
season2
17/19

報酬は、お前の一生

アキは笛を手に、シキをおんぶしたまま要塞の屋上へと移動した。

夕焼けが、破壊された街並みを赤く染めている。

「アキ、それ、どうするの? また吹かれたら嫌だよね」

「……壊す。でも、ただ壊すだけじゃ芸がない」

アキはシキをようやく地面に下ろした。……が、すぐにその手を恋人繋ぎで固く握りしめ、逃げ場を失くす。

「シキ。お前が言ったんだ。古い契約を終わらせて、新しい旅に出ようって」

「うん。……あんな古い骨の笛で縛られるアキ、見たくないもん。アキを縛っていいのは、僕だけがいいな……なんて」

シキが少し照れ臭そうに、けれど「感覚の麻痺した重い愛」を口にする。

アキはその言葉に、内臓が焼け付くような歓喜を覚えた。

「……あぁ。そうだよ、シキ。お前だけが、私を縛っていい」

アキは龍骨の笛を片手で粉々に握りつぶした。数千年の歴史を持つ契約が、塵となって風に舞う。

そして、彼女は自分の指先を少しだけ噛み切り、溢れた黄金の血をシキの唇に塗った。

「古い契約は終わった。……ここからは、私とお前だけの、龍のルールも人間の倫理も通じない契約だ」

アキはシキの耳元で、甘く、重く囁く。

「シキ。お前はもう、私なしでは生きられない。私も、お前なしでは世界を滅ぼしてしまう。……この契約の報酬は、お前の『一生』だ。いいな?」

「……うん。喜んで。僕の全部、アキにあげるよ」

シキがアキの首にしがみつき、二人は壊れた要塞の屋上で、世界で一番深いキスを交わした。

古い笛の音はもう聞こえない。

これからは、アキが刻むシキの心音だけが、彼女の世界のすべてになる。

アキは再びシキをおんぶすると、満足げに微笑んだ。

「……さて。帰ろうか、シキ。……工房のベッドで、この『新しい契約』の続きを、じっくり教え込んであげるから」

「あはは、アキ、またお仕置きするつもりでしょう?」

「……当たり前だ。私の時間を邪魔したバカのせいで、お前の管理が数日分滞ったんだから。……覚悟しなよ」

超音速の風の中、二人の笑い声だけが、夜の帳に消えていった。

物語が飛んだりしてるのは私の手元にある原文のデータがちょっとしたミスで8割ほど吹き飛ぶ事件があったからですね。許してください。

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