契約よりも重い愛
数時間後。西の特区、厳重な防備を誇る魔導要塞。
そこでは、私欲に溺れた魔導科学者たちが、手に入れた『龍骨の笛』を祭壇に祀り、次なる龍の召喚――すなわちアキの再来を待ち構えていた。
「この笛さえあれば、あの最強の龍を兵器として……」
その言葉が終わる前に、要塞の外壁が、巨大な質量によって内側へ爆ぜた。
「――うるさいって言ってるんだよ、その汚い妄想」
土煙の中から現れたのは、少年を背負ったまま、煤一つついていないアキだった。
警備兵たちが一斉に魔導銃を向けるが、アキが鼻で笑った瞬間、すべての銃身が飴細工のように捻じ曲がった。
「な、なんだお前は!? 龍……!? 龍なのか!?」
「アキ、あの祭壇にあるのがそうじゃない?」
シキがアキの肩越しに指差したのは、どす黒く光る龍の遺物。アキの先祖の骨を削り出した、呪わしき笛。
「……あぁ、あれだ。私の指先を狂わせ、当時の私の静かな時間を汚した、不愉快の塊」
アキは一歩踏み出す。その圧力だけで、周囲の科学者たちは地面に這いつくばり、肺から空気を搾り出される。
アキが笛を手に取ろうとしたその時、要塞の主らしき男が這いつくばったまま叫んだ。
「待て! それは『契約』の証だ! 龍族は契約に逆らえないはず……! 我ら一族は、お前の先祖と……!」
「契約? ……あぁ、そんなカビの生えた縛り、今の私にはノイズでしかないんだよ。……今の私の『主』は、こいつ(シキ)だけだ」
アキは冷たく言い放つと、祭壇から笛をひったくった。




