鱗に刻む独占欲
雲海よりも遥か高く、空気を吸い込むことすら忘れるような静寂に包まれた山頂の都。
その一角にある薄暗い工房で、アキは指先ほどの小さな鉄の塊と対峙していた。
「……あと、一分」
彼女の瞳は、宝石のような硬質な輝きを放ち、机の上に散らばった数千のパーツを射抜いている。
手にしているのは、数百年前に下界の人間から贈られたという『魔導銃』。もはや発射機構すら化石化したその機械を、アキは三日に一度は完全に分解し、目に見えないほどの歪みを修正し、また寸分の狂いもなく組み上げる。
それが彼女の、この数世紀における唯一の「ハマり事」だった。
一度興味を持てば、世界の終わりまでやり続ける。それが龍の、いや、アキという個体の性質だ。
「……よし。完璧な噛み合わせ」
ピンセットの先が、極小のネジを捉えたその瞬間。
下界の底から、空気を切り裂くような、鋭く、高く、そして醜悪な『笛の音』が響き渡った。
「…………っ」
アキの指先が、わずかに震える。
0.01ミリの狂い。数百年守り続けた「完璧」に、ノイズが混じった。
「……誰。私の時間を、邪魔したのは」
低く、温度のない声が工房の壁に跳ね返る。
その音の主は、先祖がかつて人間と交わした『契約』の合図だ。龍を呼び出すための、一度きりの強制力。
「……あぁ、そう。……契約、だっけ。不愉快……本当に、不愉快。せっかく、ここからが一番楽しい調整だったのに」
アキは手に持っていたパーツを、これ以上ないほど丁寧に、ベルベットの布の上に置いた。一ミリのズレも許さない配置。彼女の執着が、その丁寧すぎる動作に現れている。
椅子から立ち上がると、彼女の背後で薄暗い影が大きく膨れ上がった。
少女のような華奢な輪郭が、暴力的なまでの質量を持った「巨大な翼」へと溶けていく。
「契約だから行く。……でも、私の鱗に一箇所でも傷をつけてみろよ。……契約外の『掃除』をしてやるから」
黄金の瞳に冷徹な殺意を宿し、アキはテラスから真っ逆さまに、雲の下へと身を投げた。
厚い雲を突き破り、アキは急降下した。
地上からは、豆鉄砲のような光の束が次々と飛んでくる。現代の人間たちが必死に練り上げた最大火力の魔法。それがアキの鱗に触れるたび、パチパチと乾いた音を立てて霧散した。
「……あー、もう。うるさい」
アキは大きく溜息をついた。
右から迫る魔導艦隊が、耳障りな警報を鳴らしながら主砲を向けてくる。先祖が結んだ契約さえなければ、今すぐあの鉄の塊を握りつぶして工房に戻りたい。
「部屋の掃除を言いつけられた子供の気分。……不愉快」
アキは羽撃き一つせず、ただ尾を横になぎ払った。
それだけで大気が圧縮され、巨大な衝撃波となって艦隊を押し流す。墜落する艦から悲鳴が上がるが、アキは一瞥もくれない。契約の範囲はあくまで「危機の回避」だ。目の前の羽虫たちに構う時間は、彼女にとって一秒の価値もなかった。
やがて砲撃が止み、静寂が訪れる。
敵が全滅したのか、あるいは恐怖で引き揚げたのか。どちらでもいい。
アキは地上に降り立つと、龍の巨躯を魔術で削ぎ落とし、中性的な少女の姿へと収束させた。ローブの襟を正し、煤一つつかなかった指先を眺める。
「……さて。どこかな、笛を鳴らしたバカは」
人間に見つからないよう気配を消し、迷路のような街の路地へと入り込む。
喧騒から外れたその場所で、アキの足が止まった。
視線の先、行き止まりの路地裏。
そこには、魔法で編まれた淡い光の障壁が展開されていた。物理的な衝突を許さない、絶対的な「檻」だ。
その壁に向かって、一人の少年が拳を叩きつけていた。
「…………」
アキは無言でそれを見つめた。
少年には魔力がない。そんな拳で魔法の壁が壊れるはずもない。それなのに、彼は皮が剥け、骨が見え始めた拳を、一ミリの迷いもなく振り下ろし続けている。
呼吸を乱し、血を流し、それでも瞳の光だけは死んでいない。
アキは、今まで自分が工房でいじり続けてきた、静かなパーツたちを思い出した。
あれらは、触れなければ動かない。
だが、目の前のこれはどうだ。
壊れても、壊れても、誰に命令されることもなく、ただ一途に、非効率な突進を繰り返している。
アキはゆっくりと歩み寄り、少年のすぐ後ろに立った。
「……へぇ。面白い玩具だな、君は」
その声に、少年が肩を震わせ、振り返る。
アキは初めて見る「動く執着」を前に、凍りついた黄金の瞳をわずかに細めた。
そう呟いたアキを、少年――シキは、血と汗にまみれた顔で見上げた。
驚きよりも先に、その真っ直ぐな視線がアキを射抜く。魔法が使えない、路地裏に捨て置かれたような存在。それなのに、その瞳にはアキが山頂でいじり続けてきた魔導銃の精密な輝きよりも、ずっと強い熱が宿っていた。
「……なんだ、お前。あっち行けよ。巻き込まれるぞ」
ぶっきらぼうなシキの言葉に、アキは鼻で笑った。
「巻き込まれる? 私を誰だと思ってるの」
その時、路地の入り口から下品な笑い声が響いた。シキを魔法の壁に閉じ込めたいじめっ子たちが、獲物の様子を見に戻ってきたのだ。彼らはアキの姿を見るなり、嘲るような声を上げる。
「おい、新しい遊び相手か? そいつは魔法も使えない欠陥品だぜ。お前も一緒に閉じ込めてやろうか?」
放たれた初歩的な攻撃魔法。アキはそれを避けることすらしない。指先を軽く振るだけで、飛んできた光の礫は霧散し、逆にいじめっ子たちの足元の石畳が、爆発したかのように跳ね上がった。
「これはもう私の所有物だ。…………宣戦布告、と受け取っていいんだな?」
アキの声から、一切の温度が消えた。
いじめっ子たちが悲鳴を上げて逃げ惑う中、アキは逃がさない。怒鳴ることもなく、ただ淡々と、物理法則を無視したような動きで一人ずつ確実に地面に叩き伏せていく。骨が軋む音が路地に響くが、アキの表情は変わらない。
「何? 死にたいの? いいよ。お望み通り殺してやる。ゴミの分別に理由は要らないだろ」
本気で命を刈り取ろうとしたその瞬間、袖を引かれた。ボロボロのシキが、震える手でアキを止めていた。
「……もう、いいよ。行こう」
アキは不機嫌そうに目を細め、最後の一人をゴミのように蹴り飛ばすと、シキに向き直った。
「……チッ。契約は『助ける』ことだったっけ。不愉快。……おい、立て。付いてこい」
「え、どこに……」
「私の家。君は今日から、私の管理下だ」
こうして、山頂の都から降りてきた偏屈な龍と、魔法の使えない少年の奇妙な生活が始まった。
最初は、まさに「遠い親戚の、訳ありなガキを押し付けられた」ような態度だった。
アキはシキに最低限の食事と寝床だけを与え、自分は工房に引きこもって銃をいじり続ける。シキが話しかけても「うるさい」「触るな」「そこにいろ」と、素っ気ない言葉で突き放す毎日。
だが、アキの執着心は、少しずつ形を変えてシキへと向けられ始める。
シキが不器用に家事をこなそうとして失敗すれば、「非効率だ」と文句を言いながら、結局は完璧にやり直してやる。シキの服が破れていれば、「視界に入るだけで不快だ」と吐き捨てながら、龍の魔術を込めた丈夫な布で縫い直してやる。
「勘違いしないで。君は私の玩具なんだ。……汚れたまま放置するのは、私の誇りが許さない」
そう言いながら、シキの怪我をした拳に、無言で特製の薬を塗り込むアキ。
シキが痛みに顔をしかめると、アキは不器用な優しさを隠すように、さらにそっぽを向く。
「……痛いなら、次は壊れないように動け。……いい? 壊していいのは私だけなんだから」
素っ気ない態度の裏側で、アキの中に「シキという存在」を完璧に管理し、守り抜きたいという、どす黒いほどの独占欲が静かに、確実に育ち始めていた。
三年の月日は、アキの頑なな態度を少しずつ、けれど決定的に変えていった。
アキは相変わらず不機嫌そうな顔で工房に籠もることが多かったが、シキが「これが読みたい」と呟けば、数日後には下界の街でしか手に入らない希少な本が机に置かれていた。
シキが「街の空気が懐かしい」と漏らせば、アキは露骨に溜息をつき、シキの前に背中を向けて屈む。
「……一回だけ。契約外の特別サービス。さっさと乗りな」
山頂から下界へ至る道は、人間には到底踏破できない絶壁の連続だ。だが、人化していてもその身に宿る力は本物の龍である。シキを背負ったアキは、羽が生えているかのような軽やかさで崖を駆け下りる。
背中に感じるシキの鼓動と体温。かつては「不快な熱」だと思っていたそれが、いつの間にかアキにとって、調整の狂った魔導銃の部品よりもずっと、心地よく、安心させるものに変わっていた。
街へ出れば、アキはシキの服の裾をぎゅっと掴んで離さない。
「はぐれたら、探し出すのが面倒だから」
そう言い訳をしながら、シキに近づく通行人を鋭い眼光で威嚇し、シキが興味を示したものは、金貨の重さも考えずに片端から買い与えた。
そんな穏やかな、けれど危うい均衡の上にある日常。
それが崩れたのは、ある買い出しの日のことだった。
街の広場で、かつて路地裏でシバき倒した「いじめっ子」の一人と遭遇する。
彼は今や軍の魔導兵として徴用されており、当時の屈辱を片時も忘れてはいなかった。
「……その顔、あの時の女か? それに、魔法も使えないゴミのシキ」
男は怯えながらも、増援の兵士たちを背後に従え、アキを指差した。
アキはシキを自分の背後に隠し、冷めた視線を向ける。
「……何? また掃除されに来たの。暇なんだね」
だが、男は勝ち誇ったように笑った。
「とぼけるな。お前のその『魔術』、軍の鑑定官が不審がっている。ただの人間があの時の壁をあんな風に壊せるはずがない。……お前、この街を襲ったあの『襲撃の龍』の仲間か、あるいは……」
その言葉に、周囲の空気が一変した。
街の人々の視線が、好奇から恐怖と敵意へと塗り替わる。龍は彼らにとって、数百年おきに現れる天災そのものだ。
シキが不安そうにアキの手を握る。アキはその手の震えを感じ取り、内心で舌打ちをした。
自分一人なら、この場で全員を肉片に変えて、山頂に戻ればいいだけの話。
だが、今の自分には、守るべき「最高の玩具」が――いや、守らなければならない家族がいる。
「……シキ。帰るよ」
アキは男たちを無視して翻る。
だが、男の放った「化け物女!」という罵声と共に、兵士たちが一斉に魔法の杖を構えた。
これが、後に「数十万の軍勢」と「一頭の龍」が激突する、大戦への序曲だった。
アキたちが街で見つかってから、事態が臨界点に達するまで時間はかからなかった。
龍の目撃情報は瞬く間に軍の司令部を駆け巡り、恐怖は最速の伝達魔法となって国中を駆け抜けた。アキにとっては数百年ぶりのほんの暇つぶしだった下山が、人間たちにとっては「災厄の再来」という非常事態として処理されたのだ。
山頂へ続く唯一の街道。そこを、数万、数十万という鋼の波が埋め尽くした。
空を覆う魔導艦隊、地を這う重装魔導歩兵。近代魔法の粋を集めた殲滅陣形。
アキとシキは、その中央にいた。
「……はぁ。本当に、人間って学習しない個体ばっかりだね」
アキは大きく溜息をついた。
周囲を幾重にも囲む銃口と杖。放たれる殺気。
普段のアキなら、ここで欠伸をしながら「掃除」を始めるところだ。しかし、今の彼女の隣には、魔法の使えない、あまりにも脆い人間がいる。
「シキ。私の後ろから一歩も出るな。……言っただろ、君の管理権は私にある。シキが勝手に死ぬのはゴメンだ」
素っ気ない言葉とは裏腹に、アキは人化の術を維持したまま、自身の魔力を薄く広げてシキの周囲に不可視の防壁を張り巡らせていた。
「……龍を差し出せ! そうすれば、その子供の命だけは助けてやる!」
軍の指揮官が拡声魔法で吠える。
アキは冷めた黄金の瞳で、その男をじっと見つめた。
「差し出す? ……何を言ってるの。私が、私のものを、誰かに渡すわけないだろ。お前たちこそ、その汚い指をこっちに向けないで。……私の玩具に、ノイズが混じる」
対話は決裂した。
数万の魔法兵装が一斉に輝きを放ち、空を焦がすほどの光条が、一点に集中する。
アキは無造作に右手を振り、迫りくる魔法の嵐を空間ごと捻じ曲げた。
だが、その瞬間だった。
軍が放ったのは、正面からの面攻撃だけではなかった。
死角、遥か遠方の魔導狙撃班が、アキではなく、背後の「守りやすい標的」を狙って、対龍用の穿孔弾を放っていた。
「あ――」
小さな、乾いた声。
アキが振り向いた時、シキの肩が大きく跳ねた。
防壁を貫通したわけではない。アキが完璧に防ぎきれなかったわけでもない。
ただ、数十万の殺意の奔流の中で、一筋の弾丸が、ほんの僅かな運命の悪戯でシキの脇腹を掠めたのだ。
シキがよろめき、膝をつく。
白いシャツに、急速に鮮やかな赤が広がっていく。
「…………」
アキの視界から、色が消えた。
正確には、シキの流した「赤」以外のすべてが、価値のない灰色に塗り潰された。
アキの頭の中で、かつて工房で大切にしていた玩具を壊された時の、あの不快な感覚が蘇る。いや、そんな生易しいものじゃない。
心臓の奥が、氷つくような冷たさと、全てを焼き尽くすような熱さに支配される。
「……シキ。……シキ?」
アキが触れると、シキの手はいつも通り温かかった。けれど、その温かさが、今この瞬間も体外へ漏れ出している。
アキはゆっくりと立ち上がった。
周囲の兵士たちは、シキが傷ついたのを見て勝機を確信したのか、一斉に歓声を上げ、次の魔法を充填し始める。
「……それは、私への宣戦布告って解釈でいいのか?」
その声は、驚くほど静かだった。
叫びもせず、怒鳴りもせず。
ただ、絶対的な断絶。
「そうだとしたら……?」
軍の指揮官が、勝ち誇った顔で次の合図を送ろうとする。
「あっそ……じゃあ死んでくれ」
アキが指をパチンと鳴らした。
その瞬間、数十万の軍勢を取り囲む空気が、一瞬で「消失」した。
「何? 死にたいの? いいよ。お望み通り殺してやる。……ゴミの分別に理由は要らないだろ」
アキの姿が、人型のまま、影のように膨れ上がる。
黄金の瞳はもはや少女のものではない。
原初の龍の、それも最も深く重い殺意を宿した、処刑人の目だった。
蹂躙が、始まった。
数十万の軍勢が放つ魔法の輝きが、一瞬で色褪せた。
アキが踏み出した一歩。ただそれだけで、大地は悲鳴を上げて陥没し、最前列の魔導兵たちはその圧力だけで肉塊へと変わる。
「な、なんだ……何が起きてる!? 撃て! 撃ち続けろ!」
指揮官の絶叫。だが、次の瞬間、彼の視界から空が消えた。
アキが手を一振りしただけで、上空を覆っていた魔導艦隊の半分が、まるで見えない巨大な手に握りつぶされたかのように歪み、爆炎を上げて墜落する。
「うるさいって言ってるんだよ」
アキは無表情のまま、戦場の中央を歩く。
放たれる矢も、魔法の砲弾も、彼女の数センチ手前で凍りついたように静止し、カサカサと乾いた音を立てて砂へと変わっていく。
それは戦闘ですらなかった。
ただの、効率的な排除作業。
アキが指をさすたび、数千の命が光の塵となって消滅する。
アキが息を吐くたび、数マイルに及ぶ陣地が絶対零度の氷原へと化す。
「逃げろ! 怪物だ! 龍だ!」
「助け……っ」
命乞いは届かない。アキの耳には、シキの苦しげな呼吸音しか届いていなかった。
数十分後。
かつて数十万を数えた軍勢は、生存者を探す方が難しいほどの惨状に変わっていた。
残ったのは、静寂。そして、血の匂いだけ。
アキは返り血を浴びたまま、膝をついているシキの元へと戻った。
先ほどまでの冷徹な処刑人の顔はどこにもない。そこにあるのは、大切な宝物を壊してしまった子供のような、絶望と執着が混ざり合った顔だ。
「……シキ。シキ、しっかりして。……ごめん。私が、もっと早く掃除を終わらせていれば」
アキは震える手でシキを抱き上げた。
幸い、弾は急所を外れている。だが、人間という生き物の脆さを、アキは嫌というほど理解していた。放っておけば、彼はあと数十年で勝手に「壊れて」しまう。
「……嫌だ。絶対に、嫌。……私の玩具を、勝手に終わらせるな」
アキは決意した。
龍の一族に伝わる、最大の禁忌。
先に死ぬのが分かっている相手に、自分の命を分け与えるという、あまりにも重すぎる契約。
「……シキ。起きて。……私を、見て」
アキは自分の指を噛み切った。
溢れ出すのは、深紅ではなく、黄金に輝く龍の真血。
彼女はそれを、意識の朦朧としているシキの唇へと押し当てた。
「……これを飲めば、もうお前は人間には戻れない。……私と同じ、孤独で永い時間を歩むことになる。……拒否権なんて、あげないから。一生、私のそばで壊れ続けていろ」
シキが本能的にその血を飲み込む。
その瞬間、少年の傷口が猛烈な勢いで再生し、肌には龍の鱗を思わせる淡い光の紋様が浮き上がった。
『血の契約』。
それは、死ぬまで解けない、究極の独占欲の証明。
数日後。山頂の都。
工房には、いつものようにパーツをいじるアキの姿があった。
だが、三年前とは決定的に違う光景。
「……アキ、いい加減にしてくれ。これ、いつまで続くんだ?」
ベッドの上で、シキが困ったように笑っている。
その体には、アキが「傷一つつけさせない」と執念深く着せた、最高級の魔導防護服。そして、アキの尻尾がシキの腰をしっかりとホールドし、文字通り一歩も外に出さない構えだ。
「……黙れ。お前はまだ安静が必要。……あと三百年くらいは、私の目の届くところで寝ていろ」
アキは、シキの頬に自分の顔を寄せる。
ドライだった彼女はもういない。
シキに触れ、シキを愛で、シキを管理することに、永劫の時間を捧げると決めた「デッロデロ」の龍がそこにいた。
「……シキ。大好きなんて言わないよ。……お前は、私のものだから。……ね、分かった?」
アキは満足げに目を細め、新しい「お気に入り」との、終わらない物語を楽しみ始めた。
個人的には、アキが軍勢を「ゴミの分別」と吐き捨てる冷酷さと、その直後にシキを心配して震える手のギャップにこだわりました。
大好きと言わずに「血の契約」で縛り付けてしまう重すぎる愛。そんな二人の、騒がしくて静かな工房での日常が、これからも続いていくことを願っています。




