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英雄たちの凱旋と、ダンジョンに愛されすぎた執事

 唯奈ゆいなとリチャードが宿屋を出ると、優しい日差しが通りを照らしていた。


 一歩踏み出したその瞬間――


 シルヴァーナ、ロウィン、シャドウクロウ、シルヴィア、セリナ――見慣れた顔ぶれに思わず立ち止まる。


「えっ、何? どういうこと?」


 唯奈が慌てて声をあげる。


「ダンジョン攻略を終えて、元の世界に戻るところよ」


 シルヴァーナが肩をすくめる。


「唯奈もダンジョンに?」


 ロウィンが興味深そうに尋ねる。


「はい、今から潜ります!」


 唯奈は拳をぎゅっと握った。


「生きて帰ってこいよ。できれば、カワイイ顔のままでな」


 シャドウクロウが軽く手を振る。


「また冒険の話を聞かせてね。変なモンスターに追いかけられた話とか」


 シルヴィアは微笑む。


「“あの二人、面白い目にう”ってざわめいてるわよ」


 セリナが精霊たちの声を伝えた。


 リチャードは優雅に頭を下げる。


「シルヴァーナ様、お久しぶりです」


「リ、リチャードさん?」


 シルヴァーナが目を丸くした。


「……あなた、まだダンジョンに?」


「ええ、唯奈様が挑戦するので、下見をしておりました」


 リチャードは落ち着いた声で答える。


 唯奈は驚きで顔を赤くする。


「えっ、嘘!? 聞いてないんだけど!」


「執事って、そこまでするものなのか?」


 ロウィンが苦笑した。


「……お嬢様の安全を最優先するのは当然かと」


 リチャードは考え込むふりをする。


「で、その結果は?」


 シャドウクロウがにやり。


「……わなにかかり、モンスターに追われ、挙げ句の果てにダンジョンの主に、“ずっとここにいて欲しい”と引き止められました」


 リチャードは静かに答えた。


「また妙なことを!」


 唯奈は頭を抱える。


「少々歓迎が手厚すぎました」


 リチャードが軽く笑みを浮かべる。


「精霊たちが“次に来るときは、ダンジョンに正式登録されてる”って言ってるわよ」


 セリナがくすくす笑った。


「いやいや、そこは遠慮します」


 リチャードは前方に目をやる。


「では、お嬢様。そろそろダンジョンへ向かいましょう」


 唯奈は大きくため息をつき、うなずいた。


「もう、しょうがない……行きましょう!」


「せいぜい、ダンジョンに気に入られないように気をつけろよ!」


 シャドウクロウが笑いながら手を振った。


「ご忠告、感謝いたします。ですが……もう手遅れかもしれません」


 リチャードは軽くウィンクした。

 最後までお読みいただき、ありがとうございました!

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