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異世界ディメンション・アーク――執事リチャードの裏任務
異世界ディメンション・アーク。
夜明け前の街は、まだ深い静けさに包まれていた。
灯りの消えた大通りを、かすかな風だけが通り抜けていく。
宿屋の一角で、リチャードは通信クリスタルを指先で軽く叩いた。
淡い光が揺れ、仲間たちからの短い合図が返ってくる。
――もうすぐだな。
執事としての冷静な顔を崩さず、リチャードは小さく息を吐いた。
唯奈様には知らせない。心配をかけたくない。
再び光ったクリスタルが、仲間の準備完了を告げる。
彼は音もなくポケットにそれをしまい、ベッドで眠る唯奈を一瞥する。
今こそ動く時。
執事としての「裏の任務」が始まる。
リチャードは扉を静かに閉め、
人の気配の消えた街路へと歩み出した――。
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