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断ち切る未来(ディスティニー)──絶望の先に見た光

 ――――ロウィンの視点。


 俺の拳がアナザー・エデンの胸を貫いた瞬間、空間が割れ、世界そのものが悲鳴を上げた。

 きしむような振動が地を揺らし、破れた空気の轟音ごうおんが耳をつんざく。

 冷気が刃のように走り抜け、全身を切り裂いた。


 時間が狂い始める。

 過去と未来の境界がねじれ、景色が崩れ、存在そのものが不安定になる。

 時のほころびからは、まるで映像のフィルムが千切れるように過去の断片が飛び出してきた。


 その混沌の中心で、彼女の悲痛にも似た声が漏れた。

 砂のように細かく崩れ、光の粒となって消えていく彼女は、形を失いながらも必死に留まろうともがいていた。


「……あり得ない……私が……こんな……形で……」


 震える声に、絶望と困惑がにじむ。


 その瞳の奥にふと浮かぶ一筋の涙。

 それは、すべてを制御し続けた“管理者”としてではなく、孤独を背負ったひとりの存在として流されたものだった。


「私が……時間を固定しなければ……世界は、壊れるの……!」


 何度も過去をやり直し、理想の“正しい未来”を探し求めるあまり、その繰り返しが時空に歪みを生み、世界そのものをむしばんでいた。

 それでも彼女は止まることができなかった。

 だが、その信念こそが、彼女自身をつぶおりになっていたのだ。


 俺は深く息を吸い込み、震える拳を握り締めながら静かに告げた。


「そんな未来は、もう終わりにする」


 胸の奥が焼けるように熱い。

 それでも、俺は前を見据えていた。

 絶望に負けた自分を、もう二度と繰り返さないために。


 無数の時間の断片が浮遊し、俺を呑み込もうとうごめく。

 だが、俺の視界は曇らない。

 その未来の渦の中で、俺は彼女のすべての行動を見通している。


「絶望の中でしか、希望の光は生まれない。だからこそ、俺はこの闇を断ち切る」


 ディスティニーエンブレムが黄金の輝きを放ち、無数の未来の光が旋回しながら裂け目を飲み込んでいく。


 俺は全身の力を込めて――

 アナザー・エデンの胸の奥、中心核へと剣を突き立てた。


 彼女の表情が、まるで迷子になった幼い子どものように乱れた。

 痛み、悲しみ、そして……かすかな安らぎが、その表情に広がっていく。


「──ああ……やっと、終われる……のね……」


 そのささやきと共に、そっと目を閉じた。

 風も音も消えた静まり返った世界で、まるで霧のように――消えていった。


 そして、訪れる静寂。


 ねじれた空間がゆっくりとえ、風が吹き抜ける。


 俺は、大きく息を吐いた。


 世界は、確かに変わっていた。


 空気の匂いが違う。

 空の青さが、かつてよりも少し澄んで見える。


 エリスとマリスが駆け寄ってくる。

 その目に浮かぶ安堵あんどと困惑が、すべてを物語っていた。


 拳を握りしめたまま、俺は空を見上げて呟く。


「……希望も、絶望も抱えたままでいい。未来は、そうやって傷つきながらも前に進むものだ」


 完璧かんぺきなんて幻想だ。痛みも後悔も、すべて俺たちの力に変えていく。

 最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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