全滅からの逆転劇! “コンティニュー”が導くもう一つの未来
――――ロウィンの視点。
胸を締めつける不穏な気配が、突然消えた。
まるで時が止まったかのような沈黙が戦場を覆い尽くし、俺の意識が暗闇の底からゆっくりと浮かび上がっていく。
最後に感じていたのは、あの忌まわしいアナザー・エデンと時間の狩人たちの、氷のように冷たい視線だった。
死の淵にいたはずの俺が見たのは、まだ戦いの熱を帯びた緊張感が張り詰める戦場の景色だった。
隣には、限界を超えてなお懸命に戦うエリスとマリスがいた。
肩は細く震え、汗が額から流れ落ちる。
それでも、二人の瞳は揺るぎない覚悟に満ちていた。
体内に失われていた力が、血潮のうねりとともに全身を駆け巡る。
胸の鼓動が轟き、身体の芯から熱が立ち上る。
金色の瞳に、燃え立つような輝きが宿った。
「タイムリーパー――」
脳裏に伝説の名が閃いた。
内なる力が全身を突き抜け、解き放たれていくのを感じる。
視界が光に染まり、次々と新たな力の証が浮かび上がった。
<メニュー画面>
・タイムリバース
時間を逆行し、敗北の運命を拒絶する。
・インスタント・ストップ
数秒間、周囲の時間を凍らせ、敵の動きを完全に止める。
・フォアサイト
未来を見通し、敵の攻撃タイミングを先読みする。
・タイム・ブースト
味方の時間を加速し、反応速度と移動を飛躍的に高める。
・ディスティニーエンブレム
未来視を強化し、刻印された未来を自在に操る。
・コンティニュー
パーティー全滅寸前に時間を巻き戻す究極の切り札。
「エリス、マリス!」
二人の瞳がこちらを鋭く捉えた。
消えたはずの俺たちの帰還に、驚きが走る。だが、すぐにそれは戦う決意に変わった。
「ロウィン……戻ってくれてよかった」
小さく震えるエリスの声に、マリスも険しい表情で頷く。
「ここで終わるわけにはいかない」
俺は短く、力強く言い放った。
狩人たちが四方から迫る。
息を飲み込み、身体が熱を帯びていく。
心の奥底から燃え上がる闘志を抑えきれなかった。
「マリス、魔力の流れを制御してくれ! 俺に突破口をくれ!」
彼女が掲げた杖の先端から淡い魔力が広がり、空間の“ひずみ”を整えていく。
まるで歪んだ時間の地形を平坦に戻す調律師のように、確実に場の魔力を調律した。
そのとき、俺の身体が跳ね上がった。
空間が軽くなり、魔力の流れが俺に集中する。
マリスがくれた絶好のチャンスだ。
「――インスタント・ストップ!」
叫ぶと同時に、世界が凍りついた。
音も風も敵の息遣いすら止まり、まるで絵画の中に閉じ込められたかのように静止する世界。
動けるのは俺だけだった。
(この数秒で、すべてを決める――!)
静止した空間を駆け抜け、俺は敵陣の死角へ回り込む。
狩人の一体にそっと矢印を刻むように手を伸ばし、エリスに狙うべき標的を示す。
これだけでいい。あとは時間が動き出したときに仕留めればいい。
「――動け、世界!」
音が戻った。風が唸った。敵も味方も、同時に動いた。
「今だ、エリス! 撃て!」
エリスの矢が光を裂き、俺の印をつけた狩人の胸を正確に貫く。
同時に、マリスの魔力が火球となって炸裂し、周囲の敵を焼き払う。
呻き声、爆風、焼け焦げた鉄と血の匂い。
何体もの狩人が膝をついた。
しかし敵の数はまだ多い。
俺は冷静に息を整えた。
「タイムリバース――!」
時間が巻き戻る。
痛みが消え、裂けた皮膚も、途切れた息も元通りになる。
まるで世界が、俺たちの“選択”を許したかのように。
敵の動きも初期状態へと戻り、そこには一瞬だけ、無防備な隙が生まれた。
それを、俺は見逃さない。
「――狩るなら今だ!」
駆け出しながら、一体ずつ確実に仕留めていく。
迷いも、恐れもない。ただ、勝利への最短距離を突き進むのみ。
「ディスティニーエンブレム!」
金色の紋章が宙に輝き、視界が未来の断片で満たされる。
アナザー・エデンが放とうとする一撃――その“刻印”が、俺の意識に焼きつく。
「来いよ……お前の未来は、もう見えてる!」
金色の光が俺を包み込み、全身の力が一点に収束する。
渦巻く時間の流れを裂くように、拳がアナザー・エデンへ迫った。
「……滑稽だな。未来を選べると思っているのか?」
アナザー・エデンが冷たく嗤う。
「未来は“固定”されるべきものだ。自由こそが、最大の罪だ」
「なら、俺がその固定をぶち壊す!」
吠えるように叫び、渾身の一撃を叩き込む。
時間が軋み、空間がひび割れる。
アナザー・エデンの瞳がわずかに見開かれ、その身体がゆっくりと崩れ落ちていく。
――この一撃が、未来を選び取る、その第一歩だった――!
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