幻影のシルヴァーナ、誘惑の女神イヴリス
――――ロウィンの視点。
VIPルームの扉を開けた瞬間、胸の奥で心臓が跳ねた。
――シルヴァーナ。
間違いない。あの姿、あの気配。
けど……何かがおかしい。現実感が薄い。
「……ようやく来てくれたのね」
甘く囁く声が、耳の奥に溶け込む。
足元がふわりと浮いた気がした。
「どうしてここに……?」
問いながら、頭の中で疑念が渦を巻く。
夢か、幻か、それとも――。
「あなたに会いたかったからよ」
その言葉に、思考がかき消されていく。
視界が揺らぎ、輪郭が溶けていく。
「……こんなにも惹かれてしまうなんて」
差し出された手。
気づけば、俺はその手を取っていた。
唇が触れた。
低く甘い声が、胸の奥深くまで染み込む。
「あなたの心は、もう私のもの」
世界が遠のいた。
感覚が闇の底へ引きずり込まれていく。
「しっかりしろ!」
霧の向こうから、誰かの声が響いた。
光が差し込み、俺の腕を誰かが掴む。
――ヴァルカたちだ。
気づけば、俺は引き戻されていた。
「一体、何が……?」
シルヴァーナの姿はもうない。
代わりに立っていたのは――イヴリス。誘惑の女神。
その微笑みには、抗えないほどの魅力が宿っている。
悪寒と熱が同時に全身を駆け抜ける。
俺は息を呑み、ただその瞳を見返すことしかできなかった。
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