表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

50/113

元婚約者の大軍、魔導士の呪文でお帰りいただきました

 ――――シルヴァーナの視点。


 居城の前に立つと、目の前にはかつての婚約者候補、アルヴァス王子がいた。


 彼の顔には異常なほどの怒りが浮かんでいて、私を鋭く見据えている。その背後には、彼の命令で集められた無数の軍勢が広がり、張りつめた空気が辺りを支配していた。


 アルヴァスは深く息を吸い込む。


「試練を受けて、あんな恥をかかされるなんて……! 俺は全てを失ったんだ!」


 私は動揺を見せず、冷静に答えた。


「失敗の理由を私に押し付けるのは間違いです。試練は力を試すためのもの。もともと王にふさわしくないのでしょう」


 アルヴァスの顔が歪み、怒りをあらわにした。


「ふざけるな! 俺を侮辱ぶじょくしたばつを受けろ!」


 その瞬間、背後で気配を感じた。ロウィン、唯奈ゆいな、そしてフェリシアが駆けつけてくる。


 ロウィンはアルヴァスの動きをじっと見つめていた。

 その隣で、フェリシアが私に問いかける。


「戦わなければいいのですね?」


 私はうなずいた。


「任せてください」


 フェリシアは目を閉じ、呪文を唱える。


「エスパニオール・ドゥーム……」


 まるで呪いのように響き渡り、アルヴァスの心に直接届いた。顔色は一瞬で青ざめ、軍勢の動きも止まった。自然と武器を握る手が緩み、戦意も消えていく。


「どうしてこんなことに……!」


 アルヴァスの叫びだけが、静まり返った戦場に響いた。


 フェリシアは大きく息を吐き、言った。


「今のあなたに戦う意思はありません」


 アルヴァスは肩を落とし、やっとのことでつぶやく。


「引き揚げろ……」


 軍勢は無言で去っていった。


 私はフェリシアに向き直る。


「あなたの力がなければ、事態はさらに深刻になったかもしれません」


 フェリシアは微笑む。


「戦わずして勝つことができるのなら、それが最善ですから」

 最後までお読みいただき、ありがとうございました!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ