【悲報】ダークエルフの婚約試練、スケベすぎて耐えられない
――――ロウィンの視点。
俺とシルヴァーナは、長い年月を共に過ごしてきた。だけど、婚約期間の試練はそれまでの何倍も厳しいものだった。ダークエルフの文化では、この期間、何より「誘惑に耐えること」が重んじられる。
その夜――シルヴァーナの城の広間。石造りの壁には金の装飾が施され、天井から吊るされたシャンデリアが柔らかく光っている。外は冷たい風が吹いているけど、城内は暖かく、静かな緊張感に包まれていた。
「こちらでおくつろぎください。膝枕をいたしますわ」
花のように柔らかい笑顔のリリスが、俺の前に歩み寄る。その微笑みの奥には、確かな挑発の色が潜んでいた。
俺は視線を逸らす。子どものころは一緒に無邪気に遊んだ仲間だが、今の俺には簡単に受け入れられる話じゃない。
「ありがとう。でも、今は遠慮する」
リリスの表情がわずかに曇った気がしたが、すぐに笑顔を取り戻して立ち去った。
「残念ですわ」
俺はその背中を見送りながら、心の中で自分に言い聞かせる。
(我慢だ……!)
次に現れたのは、メイドリーダーのアルティアだ。落ち着いた瞳に穏やかな光を宿し、こちらを見つめる。
「お久しぶりですね」
「昔みたいに、一緒にお風呂に入りませんか?」
懐かしい思い出が胸をかすめる。だが俺は赤面し、首を振るしかなかった。
「さっき入ったばかりだから……」
アルティアはわずかに目を見開いたが、すぐににこやかに笑った。
「ふふ、諦めませんわ」
その言葉に、心臓が跳ねる。俺は思わず拳を握り、気持ちを落ち着ける。
そして最後――あのヴァルカだ。シルヴァーナ直属の親衛隊長で、恐るべき恋愛バトルマスター。軽装の鎧を脱ぎ、じりじりと距離を詰めてくる。
「俺に魅力がないのか?」
追い詰められるような感覚が俺を襲う。
「……ごめん。今は一人でいたいんだ」
彼女は口元に薄い笑みを浮かべた。
「ふん、面白い男じゃないか」
その後も誘惑は途切れなかった。リリスの優しさ、アルティアの包容力、ヴァルカの強引さ。どれも接し方は違うが、共通しているのは、俺の心を試すことだった。
迷いそうになるたびに、シルヴァーナの顔を思い浮かべる。
「魔王と戦ったほうが、ずっとラクだったかも……」
俺は前を見据え、続く試練に備えた。
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