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私の涙が、あなたを支える未来

 ――――シルヴァーナの視点。


 ロウィンの番が来た。


 紫の水晶を見つめ、黙って手を伸ばす。指先が触れた途端、激しい衝撃しょうげきが全身を突き抜け、意識が闇に吸い込まれていく。


 水晶が映し出すのは、崩れゆくダークエルフの王国。


 地は裂け、空は砕け、天から無数の神々が降り立ち、破壊を広げていた。王国は、彼らの力によって終わろうとしている――胸が締めつけられるようだった。


 それでも、ロウィンはその只中に立っていた。


「時空管理局の防衛はエリスとマリスに任せた。ここはもう限界だ。シルヴァーナ、君はザルクス様と娘たちを連れて脱出しろ」


 耳を澄ませ、彼の声を胸に刻む。


「転移魔法で、時空の民に送り届ける。俺の命と引き換えに、クロノスの千年魔法で奴らを止める」


 鋭く、力強いその言葉に、私の胸は強く打たれた。


 晩餐会ばんさんかいの場は静まり返る。


 私の顔から血の気が引き、ザルクスの視線は険しさを増していた。


「アルテミス、頼んだぞ。ダークエルフたちを……究極結界を……」


 声は弱まり、力尽きる寸前だった。


「サラ……裏切った形になってゴメン……」


 そして、ロウィンは、最後に最も伝えたかった言葉を心から絞り出す。


「シルヴァーナ……君と出会えて、本当に幸せだった。……愛している」


 その瞬間、彼の身体からまばゆい光が放たれた。

 ――試練の世界は明るく照らされ、ロウィンは現実へと意識を戻す。


 言葉にならない想いが胸にあふれる――体中が熱い。


 ロウィンは立ち上がる。まだ果たしていない約束が胸に残っているのが、はっきりとわかる。


 ザルクスが占術師に歩み寄る。


「これは実際に起こる未来なのか?」


 彼女は短く息を吐いた。


「未来は常に揺れている。しかし、ロウィンが見た光景は、強い予知の力によって引き寄せられた可能性が高い。この試練を超えれば、彼は王国を大きく変える存在となるだろう」


 少し間をおいて、さらに続けた。


「ただ、それがすべてではない。大きな力が、彼を試す。最悪の形で終わることもある。だが、今は進むしかない」


 私はえきれずひざをつき、泣き崩れた。


「ロウィン……あなたが守ろうとしているもの……私が……抱えるにはまだ弱いよ……」


 かすれた声で続ける。


「でも、あなたが愛してくれるなら、もっと強くなる。今度は、私があなたを支える」


 その涙が、私に新たな力を与えていた――これから先、彼とともに歩む力になる、と。

 最後までお読みいただき、ありがとうございました!


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