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【絶望】バトルマスター、試練で本性が暴かれる

 婚約者候補の一人、バトルマスターのエリオットが立ち上がり、紫色の水晶に手を伸ばす。指先が触れた瞬間、強烈な光が全身を包み、彼の意識は遠のいた。観客たちの視線が一斉に注がれる。


 ――試練の始まりだ。


 私は冷静に見つめる。霧に包まれた不穏な景色の中、彼の目が開く。何もわからず、ただ混乱している様子だ。


「……ここはどこだ?」


 声が空間に反響し、奇妙な感覚を伴って広がる。


 ああ、面白い。


 彼の内に眠っていた意志が、目を覚ましたのだろうか。


「冥界、魔界、人間界──すべてを支配する。シルヴァーナはその手始めにすぎない。捨て駒として使えばいい」


 自らの野心に酔い、私はその反応を楽しむ。


「それも選択の一つ。ただし、試練を越えられればの話ね」


 私の声はあっさりとしていたが、挑発の意味は明確に伝わる。


 観客たちがざわつくのがわかる。


「本気で言ってるのか……?」


「いや、あの男には何かある。軽口じゃない」


 会場の空気は重い。期待と不安が入り混じって、息遣いすら緊張に変わる。


 ザルクスの表情は変わらないが、目の奥には探る光が宿っている。


「力を持つ者が進む道は自ら決める。しかし、欲望だけではたどり着けない。試練を通して、それを証明せよ」



 しばらくすると、エリオットの声が闇を貫いた。


「どういうことだ…! 俺の力が通じない? ふざけるな、認めん!」


 彼の本性が、姿を現す。


「シルヴァーナも差し出す! すべて、俺が支配するための手段だ!」


 黒い霧が渦を巻き、欲望を嘲笑あざわらうかのように輪郭りんかくを濃くする。


「力を使うとは、その責任を負うことでもある。今のお前は、自らの欲にまれているだけだ。そんなものに価値はない」


 ザルクスの言葉が、彼を打ちのめす。


「試練は力そのものじゃない。その力をどう使い、何を守るために振るうかが問われる。お前はそれを示せなかった。だから何も与えられない」


 一つひとつの言葉が、彼の胸に突き刺さるのがわかる。


「どれだけ望み、どれだけ犠牲ぎせいを払おうとも、越えられない者には何も与えられぬ」


 ザルクスの存在そのものが、壁となって彼を押し返す。


「今のお前には王の器は見えない。考え直すことだ」


 その言葉で会場全体が静まり返る。誰も動かず、息だけが濁った空気の中に残る。


 試練の結末はまだ見えない。


 だが、私にはわかる――彼の心は決して無傷ではない。

 最後までお読みいただき、ありがとうございました!

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