“氷の黒姫”との最強なデートが、バトルよりハードな件
――――ロウィンの視点。
バトルリーグの決勝が中止となり、イベントはそのまま幕を閉じた。それに伴い、リーグは廃止され、勇者の教育制度も大幅に改革された。俺たちは、戦いの世界から距離を置き、平穏な日々を送ることになった。
ある日の午後。
シルヴァーナがふと俺に、挑戦的な笑みを浮かべながら問いかけてきた。
「ねぇ、私とロウィン、どっちが強いんだろう?」
その言葉に、俺は一瞬戸惑った。
「それはもう、氷の黒姫に決まってるよ」
シルヴァーナはその答えに満足そうに笑い、得意げに胸を張った。
「ふふ、ちゃんと分かってるじゃない。でもね、実は私、自分が負ける気なんてしないの」
俺は肩を軽くすくめながら言った。
「みんなシルヴァーナの方が強いって思ってるよ」
その言葉に、彼女の目が鋭く光った。内に秘めた負けず嫌いな部分が顔を覗かせるが、俺の柔らかな声に表情を緩めた。
「それより今日はデートだろ? せっかくなんだし、楽しもう」
シルヴァーナはその提案に、満面の笑顔で応じた。
「そうね。じゃあ、行き先を決めましょうか」
俺は目を輝かせながら、嬉しそうに色々な候補を挙げていく。
「地下の迷宮探索、魔法と呪術の研究、薬草や毒の調合、闇の食材を使った料理、星読み……」
「待って、それ、普通のデートじゃないでしょ」
呆れた声に、俺は目を丸くしてから、照れ笑いを浮かべた。
「いや、シルヴァーナの得意分野ばかりだから、楽しいかと思って……」
シルヴァーナは少し考えた後、ふっと微笑んだ。
「じゃあ、久しぶりに私の家に来ない?」
思いがけない提案に、俺は驚きながらも彼女を見た。
「君の家、か……?」
「そう。最近は研究に没頭してて誰も招待してなかったけど、今日は、ゆっくり過ごしたくて」
その言葉に、俺は優しく頷いた。
「それなら、きっと楽しい時間になるね」
並んで歩きながら、穏やかな時間を過ごした。
シルヴァーナの居城に到着した俺は、懐かしさを感じながら足を踏み入れる。
そこから漂ってくる濃密な魔力。冷たく神秘的な雰囲気。ダークエルフの血が色濃く反映されたその空間に、自然と心が引き込まれていった。
空中には黒い目玉が漂い、来訪者を監視している。ダークフェアリーたちが呪いの言葉を遊び半分で囁き、ダークドラゴンたちが自由に歩き回っていた。久しぶりに会った俺に、甘噛みしながらじゃれついてくる。
「前より賑やかになってないか……?」
俺が苦笑して言うと、シルヴァーナは楽しそうに答えた。
「そうでしょ? セキュリティは万全よ。今日は特別に、みんなには静かにしてもらってるけどね」
その言葉に、俺はほっとした表情を浮かべた。
屋敷の奥へ進むと、メイドが無音で働いている。外敵を発見すればすぐに闇の魔法を行使するよう訓練されているその姿勢に、あらためて感心する。
さらに親衛隊が現れ、シルヴァーナに報告する。
「敵対勢力の掃討、完了しました」
「ありがとう。ロウィンが来てるから、詳しい報告は後で聞くわ」
シルヴァーナがそう言って、軽く俺の肩に手を置いた。その時、地獄の番犬ケルベリスが現れ、おもちゃをくわえて俺の前に座った。おもちゃはなぜか生きている天使だった。
「……やっぱり、君の家って不思議と落ち着くな」
思わず呟いてしまったその言葉に、シルヴァーナは笑みを浮かべながら応えた。
「ふふ、ありがとう」
その時、一人のメイドがシルヴァーナに耳打ちをしてきた。
「前当主のザルクス様が面会を希望されています」
予想外の言葉に、俺は驚きつつもシルヴァーナの反応を待った。
「分かったわ。けれど、今日はロウィンと過ごす時間を優先したいの。会うのは後にする」
彼女の言葉に、俺は心の中でほっと息をついた。このひとときが何より大切だと、素直に感じていた。
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