お前に道などない
俺の前でアダム・グラハムが叫ぶ。
「ロウィン、お前が元凶だ! どうしてこんな出来損ないがエリートを倒せる? 『魂の源』の力を理解すらできないくせに!」
赤く光る瞳、狂気の笑み。手から『魂の源』が解き放たれ、アダムの体は異形へと変貌する。
……くそ、余計な自信だ。
俺は呼吸を整え、右手に力を集中させた。クロノスの力が体を貫き、空間が軋む。
アダムの体が暴れようとするのを、俺はその力で押さえつける。逃がすものか。
「な、何だこれは……?」
アダムの声が震える。抗おうとして踏み出す足も、もう止められている。
俺の指先に、魂と力が絡むのを感じる――。
「――終わらせる」
右手に集まる時空の力。空間が歪み、時間が止まったかのような感覚が全身を包む。
「究極時空魔法――クロノ・ディスインテグレーション!」
光が炸裂する。砕け散る時の波がアダムを覆い、存在そのものを削り取る。
肉体が崩れ、魂の源まで引き裂かれる感覚が手に伝わる。
「なぜだ! これほどの力を――!」
声は途切れ、最後に瞳だけがこちらを見た。
「これが……俺の選んだ道か……」
魂の源が虚無に吸い込まれ、アダムは完全に消えた。
静寂。
俺の胸に安堵はない。深い沈黙だけが場を満たしている。
拳をゆっくり握り締め、消えた空間に視線を落とす。
(お前に道などない)
心の中で、ただそう呟いた。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。




