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氷の黒姫、実はおやつ大好き!? 〜腹ぺこ勇者と甘い時を越えて〜

 ――――シルヴァーナの視点。


「お疲れ様でした」


 従者のダークエルフたちが静かに駆け寄ってくる。

 整った所作で頭を下げ、報告を始める。


「前当主ザルクス様より、お言葉を預かっています」


 私は表情を崩さず、わずかに口元を緩めた。


「聞かせて」


「三勇者から面会の要請があり、現当主であるシルヴァーナ様に一任するとのことです」


 しばし沈黙が流れる。

 短く返事をした。


「分かった」


 やがて、三勇者──戦神サラ、いやしの神レイナ、星の神かなえ──と対面することになった。勇者養成アカデミー「ソウルヴァース学園」の長、セオドール・グラシアスも同席している。


「こうして再会できてうれしい。でも、ダークエルフの当主として、今だからこそ語っておくべきことがある」


 目を閉じ、百年前の出来事に触れた。


「冥界は統治者を失った。最近、私に王位継承の話が届いたけれど──応じるつもりはない」


 三勇者は黙って耳を傾け、セオドールも真剣な面持ちで見守る。その視線を感じながら、深く息を整えた。


「人々を守るという、私の果たすべき役割は、まだこの世界にある」


 さらに、はっきりと告げた。


「私はノクシリオン──ダークエルフの神に仕える者。偽りなど一切ない」


 セオドールが問いを重ねる。


「学園の秘密について、どう受け止めていますか?」


脅威きょういとなることは理解しています。だからこそ、守るべきだと考えています」


 その言葉に、三勇者の表情が柔らかくなる。


 サラが言葉を選び、私に向かって尋ねる。


「あなたほどの存在が、今もバトルリーグに身を置く理由は? 冥界の王にも、神にもなれるのに」


 目を細め、笑みを浮かべた。


「戦いに勝つことが全てではありません。大事なのは、自分の力を確かめ、仲間たちと共に歩むこと。そして──かつてロウィンが教えてくれたように、力の在り方を見つめ直すことです。彼が示してくれた道を、この時代で引き継ぎたい」


(……本当は、この後ロウィンと食事に行きたいだけ。……絶対に言えないわ)


 レイナが小さく笑む。


「あなたとロウィンは、時を越えても変わらない関係なんですね」


 冗談めいた口調に、どこか優しさが混じる。


 私は軽く目を伏せて答えた。


「そうね。百年経っても、心の奥では何も変わらない。ただ……少し素直になれたかもしれない」


 かなえが神妙な顔で口を挟む。


「歴史の記録に、ロウィンと思われる人物がたびたび登場します。本当に彼なのでしょうか? あるいは別の誰か……?」


 表情を引き締める。


「答えは私にもわからない。でも、もし本当に彼なら──これからも互いに関わり続けることになるでしょう」


 セオドールが重々しく付け加える。


「歴史に名を刻む者たちは、真実をおおい隠し、新たな伝承をつむぐこともある。ロウィンも、そうした存在のひとりかもしれません」


 深く息を吐き、皆の顔を見渡す。


「真実は、私たちがこれから関係を築く中で見えてくるもの。過去の絆を大切にしつつ、それに縛られず、新しい関係を築くこと──それが、今の私の役目」


 そのとき、腹の底から小さな音が鳴った。


(……何か食べたい。せめてチョコでも……そういえば、ロウィンは甘いものが苦手だったわね……)


 もちろん、口には出せない。次の音が鳴らないよう、私は息をひそめていた。

 最後までお読みいただき、ありがとうございました!

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