その涙は、遠い日の記憶
勇者養成アカデミー「ソウルヴァース学園」のVIPルームは、豪華絢爛な空間だった。
大きな窓から見下ろすと、試合会場が広がり、選手たちが最後の調整を行っている。
部屋の中心に座る三勇者、戦神サラ、癒しの神レイナ、星の神かなえは、その様子を見守りながら、ある人物の記憶に思いを馳せていた。かつて人間界で共に戦った仲間――ロウィン。忘れがたい存在が、今日この場所に立つというのだ。
高い椅子に腰を下ろしたマスターの一人、オルフィスが目を閉じ、ゆっくりと口を開いた。声には試合への期待と、自らが育てたアリオスへの誇りが滲んでいる。
「今日はアリオスが出場します。彼の力を、皆さんにも見ていただきましょう」
その言葉に場の空気が張りつめる。だが、サラはわずかに眉を寄せ、問いかけた。
「それより、もう一人の出場者について教えてください」
オルフィスは意外そうに目を開き、少し息を整えてから答えた。
「ロウィンのことですね」
どこか言いづらそうな口ぶりだった。
「確かに才能はありました。けれど、結果を残せない男でした。何度挑戦しても、成功には届かず……」
その言葉を聞き、三人の表情は揺れた。
サラは疑念の目を向け、レイナは悲しげにうつむき、かなえは驚きをあらわにした。
遠い昔の記憶がよみがえる。
彼は確かに、不器用だった。だが、誰よりも必死に戦い、大切な人を守ろうとしていた。
その姿を三人は、何よりも鮮明に覚えていた。
「ロウィンが出るなんて、にわかには信じがたい……」
かなえがぽつりと呟く。
「直接見るまで、何とも言えないわ」
レイナは静かに微笑んだ。
試合が始まり、ロウィンは時間加速のスキル『タイム・ブースト』でアリオスの防御を突破。
迷いのない動きで、一撃を決めた。
会場に静けさが広がる。
三人の視線は、黙って彼の姿を追っていた。
切なく懐かしい感情が、胸の奥からこみ上げてくる。
サラがそっと言った。
「変わってない。戦い方も、あのときのまま」
レイナは目元に指を添え、そっと拭った。そして、穏やかな笑みを浮かべながら言葉をつなぐ。
「また目にする日が来るなんて、夢みたいだわ」
かなえは小さく息をのみ、言葉を絞り出す。
「どうして……こんなに胸が苦しいの……」
再び剣を取った彼への敬意と、胸を締めつける想いが、三人の目に涙を浮かばせていた。
過去が今に重なり、未来の光が淡く揺れていた。
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