ダンジョンに咲く、別れと再会の光
その頃、空に突き刺さる光の柱が現れ、深夜の町がざわめき始めていた。
唯奈はまぶたをこすりながら呟く。
「パレードでも始まったの……?」
重い体を起こし、窓の外に目を向ける。
「リチャード……?」
屋台でりんご飴を買ってきてくれるだろうと、胸の奥でそっと期待している。
「そういえば、シャリオンとずいぶん会ってないわね。まだ怒ってるのかしら……私がプリンを食べたこと、本当に子供みたい」
ふと決意が固まり、唯奈は宿屋を飛び出した。
町の遠くまで異常な光が広がっている。
人々の声が耳に入る。
「ブラックスターズの結界があるから心配ない」
「死の迷宮の方角だ」
「誰が戦っているんだ?」
その言葉に、唯奈の胸は締めつけられた。
自分を置いて誰かがダンジョンを攻略している──それだけで、心がざわつく。
剣を握り、光の先へ駆けた。
「危険だ!」
門番兵の叫びは届かない。
唯奈は無視して進む。
月光に赤く輝くヴァルゴアスの巨体が、地面を引き裂くように爪を振るう。
ローディアスは微動だにせず力を受け流した。
リチャードとルビーは力を研ぎ澄ませた。
張りつめた空気の中で、放つべき一撃が静かに形を取っていく。
光の先にたどり着いた唯奈の目に、リチャードが映った。
「お嬢様! 来てはいけません!」
唯奈は反射的に足を止めた。
その瞬間、ルビーが冷たく笑い、呪文を唱えた。
『デスブレイク──』
即死魔法がリチャードに迫る。
彼は言葉なく空に合図を送り、刹那──光速で流星が降り注いだ。
猛烈な衝撃がルビーを吹き飛ばす。
体外に霧のような黒い生命体が現れ、怨念の声が周囲にこだまする。
唯奈は聖剣を振り、暗黒の力を浄化した。
流星の正体はシャリオンだった。
「あいたたた!」
驚いた唯奈が叫ぶ。
「助けに来てくれたの?」
リチャードは即死魔法を受けたものの、「命の盾」が身代わりとなって砕け散った。
致命傷こそ免れたが、全身に痛みを抱えたままルビーへ走り寄り、時空輝石をその手に託す。
光が放たれ、彼女のコンティニュー画面が開いた。
「リ、リチャード……ごめんね……」
涙をこぼすルビー。
「私……ダンジョンの女神に転生するから……待っていてほしい」
リチャードは優しく手を取り、コンティニューを押した。
ルビーは光に包まれ、ゆっくりと姿を消していった。
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