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脱出王に“詰み”はない ― 次元の扉を開く者
ロストエコーズの深層部。
空間がねじれ、震動が一行の体を揺さぶった。
気づけば、白一色に満たされた世界に立っていた。
壁も床も、区切りは感じられない。
「……これ、まさか閉じ込められてる?」
ゼノスが周囲を見渡し、声が少し弱まる。
ミストラルは息を呑み、警戒を強める。
だが、オスカーだけは前へ進み、ぼんやりとした輪郭に手を触れた。
「大丈夫だ」
短い言葉に、不安の影はない。
両手を広げると、青白い紋様が周囲を駆け抜け、光の脈動が領域全体に広がった。
『エスケープ・シフト』
空中に扉がいくつも現れ、ひとつずつその形を現していく。
オスカーは迷わず近くの扉を押し開いた。
光が差し込み、通路が生まれる。
オスカーは軽く笑った。
「ほらな。脱出王に“詰み”はないんだよ」
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