村人Aコースで最弱だった俺、実は“記憶があると発動しない勇者スキル”を持っているらしい
本作品は、小説家になろう様に投稿中の作品を再構成したものです。
オリジナルのストーリーに新たな要素を加え、より深みのある物語に仕上げました。
――存在感ゼロの“村人A”が、世界の命運を背負うなんて、誰が信じる?
俺の名前はロウィン。
ソウルヴァース学園――通称「勇者養成アカデミー」に通う、ごく普通の学生だ。
……と言っても、英雄なんて言葉とは最も縁遠い。
俺が在籍しているのは、学園最底辺の《村人Aクラス》。
その中でも“最弱”とまで言われているのが、他でもない、俺だ。
戦闘スキルの実技テストは、毎回ゼロ点。
魔力量を測定する機械には反応すらされず、「壊れてるのか?」と笑われる始末。
パーティ編成では名前を呼ばれず、出席簿にすら載ってないんじゃないかと疑ったこともある。
ついたあだ名は――「背景」。
ある日の掃除当番、俺の机だけ見事にスルーされていた。
「あれ、ここ誰の席?」という声に、誰も答えなかったときの虚しさは、今でも覚えている。
教師ですら、たまに俺の存在を忘れる。
「……あれ、君いたの?」と真顔で言われたときは、さすがに心が折れた。
そんな俺に、ある日――
学園の頂点に立つ生徒が、信じられない言葉をかけてきた。
《氷の黒姫》と呼ばれる、ダークエルフの美少女・シルヴァーナ。
「ロウィン……あなたは、勇者になる運命よ」
「――勇者だって? お前、冗談を言ってるのか?」
彼女の言葉に、つい反射的にそう返した。
だが、幼馴染のシルヴァーナの瞳には揺るぎない覚悟が宿っていた。
ざわめきがピタリと止み、全ての視線が俺へ集中する。
言葉の意味が頭の中をぐるぐると駆け巡った。
――まさか、そんなことが。
心の中でそう呟いた瞬間、彼女は真っ直ぐな瞳で言葉を続けた。
「本気よ。あなたの中には、まだ誰も知らない“力”が眠っている」
そう言って、制服のポケットから小さな光の球体を取り出した。
手のひらにすっぽり収まるほどの透明な結晶。
中心には、螺旋状の粒子が静かに回転していた。
かすかに温かい光を放ち、耳元では“キィン……”と澄んだ音が響く。
「これを使えば、その力が目覚めるかもしれない」
胸の奥がざわついた。
それが恐怖か、それとも希望か。自分でもわからないまま、俺はそっと手を伸ばす。
――そして、指先が光球に触れた瞬間。
視界が白く弾け飛んだ。
足元が崩れ落ち、感覚も思考も、まるごと空間に飲み込まれていく。
*
気づけば俺は――まったく見知らぬ世界に立っていた。
巨大な石の城壁。
その先には、まるでファンタジーゲームの冒険都市。
道を行く者たちは剣や杖を携え、空には飛翔艇が飛び交っている。
……まるで、始まりの地だ。
そのとき、頭の奥に音が響いた。
『ようこそ、ロウィン。あなたの冒険が今、始まります』
そして、目の前に淡く光るウィンドウが浮かぶ。
名前、能力値、スキル……すべての項目が空白だった。
ただひとつ、そこに表示された選択肢。
『記憶を消去し、勇者としての潜在能力を引き出します。
※過去の経験・人間関係は失われます。
新たな人生を開始しますか?』
――記憶を、消す?
息を呑んだ。
それは、俺自身を“リセット”することを意味していた。
今までのことも、誰かと過ごした時間も、全部――なかったことにする選択だ。
戸惑いのなかで思い出したのは、シルヴァーナのあの言葉。
「……あなたには、まだ気づいていない力がある。だから、信じて」
誰も見てくれなかった俺に、彼女だけが目を向けてくれた。
あれが気まぐれじゃなかったと信じたい。
……だったら。
俺は、震える指で「はい」を選んだ。
再び眩い光が広がり、全てが白に染まっていく。
この先に待つのが、勇者の運命か、それともまた「背景」のまま終わる未来か――
それでも、俺は進む。
なぜなら、信じてくれた誰かがいたから。
そして、俺自身がこの先を知りたいと、初めてそう思ったから。
*
《氷の黒姫》。
そう呼ばれるシルヴァーナの“黒”は、外見の色ではない。
ダークエルフの彼女は、驚くほど透き通るような白い肌をしている。
それでも、皆がその異名を畏れと敬意を込めて口にするのは――
彼女の放つ冷たい気配、裏切りを許さぬまなざし、そして容赦のない強さのせいだ。
彼女の「黒」は、性格とその力に宿る。
だからこそ、学園最上位に立つ彼女は、誰よりも目立つ存在であり――
俺みたいな“空気”は、抗うこともできなかった。
けれど、あのときだけは違った。
彼女だけが、俺を“見ていた”。
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