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僕と瞳  作者: 蓮根三久
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眼  光



 最近、ようやく夏が抜けてきたようで、本格的に乾燥した風が吹き荒れるようになった。秋はどこへ消えたのか、僕には見当もつかない。


 今日も放課後の教室で残っていると、見慣れた長髪が視界に入った。



「やられたわ」



 暗田はそう呟いた。その長い髪で顔が隠れているせいか、彼女の感情は読みにくい。



「つい昨日よ。私が帰り道を歩いていたら、変な男に追い掛け回されたわ。おそらくあいつが眼球強盗よ」



 彼女は、ヨウの家での出来事は何一つ覚えていないようだった。まぁ、家に入った瞬間に気絶させられたらしいので、そうなっていてもおかしくはない。彼女の勘は鋭いので、やがて眼球強盗にたどり着くのかもしれない。そう思うと、少し不安だ。



「そうなんだ、それは災難だったね」


「災難?そんな言葉じゃ言い表せないくらい最悪よ」



 彼女は不満をあらわにした。僕は、彼女の顔を覗き込んだ。髪に隠れてよくわからないが、彼女の左目があるであろう場所には黒いくぼみができている。眼帯というものを知らないのだろうか。



「絶対に殺してやるわ。眼球強盗」


「あぁ、頑張って」



 僕は、ポケットの中で、彼女の左目を転がしながら答えた。



 彼女の目は完成されていた。と言うより、そもそも目という物は完成されている。それなのに、ヨウは片目を抉りだして、自らの欲求のために用いていた。僕は考えたのだ。どうすれば、彼が反省して、今後、そのようなもったいない行為をしなくなるのか。


 そして出た答えが、「一度、自分が片目を奪った人物と向き合えばいい」だった。コレクションという自分の目的を果たすためでなく、ただ抉るという行為をさせ、自分がしたことの非道さを痛感させればいいのだ。


 そうすることで、彼は暗田を見るたびに顔をしかめ、意識的に視界に入れまいとするようになっていた。おそらく、彼はもう他人の眼球を抉り取る行為はしなくなるだろう。



 今回の件で得をしたのは、間違いなく僕だろう。なぜなら、僕は友人を得るのと同時に、ずっと欲しくてたまらなかった、暗田の眼球を手に入れることができたのだから。


 ヨウが今後殺人を犯そうが、僕の知ったところではない。

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