1話
水槽屋。
こんなところに、熱帯魚を売っているところが出来たんだ。
天井まで、同じ形の水槽が左右の壁一面に並んでいる。
小さい、熱帯魚が番いで泳いでいる水槽が一つ。
こんなに並んでいる、水槽の中で、この目の前の水槽だけにその熱帯魚がいた。
水槽ごとお安くするよ。
店の奥から声がした。店の奥はカーテンで仕切られていて声の主は見えない。
初心者なら丁度その子達だね、育てやすいよ。
再び声がした。
一人で寂しいし、魚なら犬猫の様にペット禁止のマンションの決まり事には引っかからないだろうし。そう思っていると。
決まったなら、住所と連絡先のメモをそこに置いておいてくれ、直ぐに配達するよ。代金は後でいい、お嬢さんのような綺麗な人にはもっとサービスするよ。
暫く考えた。
本当に寂しくて耐えられなかった、親友だと思っていたのに、長年付き合っていた彼。
その彼を、何の後ろめたさも無く盗っていった。
怒りと、情けなさと、人間不信とが相まって憔悴しきっていた。
その矢先だ、寂しさが勝ったのだろう、連絡先の書いたメモをその店に置いて、後にした。
目を通していただき、ありがとうございます、あと少し続きます。