9領主
「おかえりなさいませ。いかかでしたか?」
素早くマリアンが出迎えてくれた。
「最悪な状態だ、できれば明日までに人を送りたい。人員を選抜してほしい。」
「承知いたしました。」
「ああ、宜しく頼んだ。朝の五時ごろには出発できるように頼む」
「レオン様は出発なさらないのですか?」
ここまで切羽詰まっているのならお前がいけと言わんばかりにマリアンは返事をした。マリアンの子の物応じない態度にはいつも肝が冷える。
「俺は宝石の卸先を見つけなくてはいけないから行くことはできない。」
私が石にした人たちは加工すると国でも有数の宝石としてかなり注目を浴びてしまう。しかしながらそんな名品の宝石の生産元が私たち存在してはならない者たちのいる場所だと知られてしまえば、私が生きていることがばれてしまう。それだけはどうしても避けたいのだ。
「さようでございますか。、、では、ヴィヴィアンお嬢様を領主としてお送りするのはいかがでしょうか」
ますっぐなクルミ色の瞳が主に向かって意義を唱える姿はほかの人からすればありえない景色だろう。これはここでは結構ある光景ではある。
「それはできない、」
真っ赤な宝石も負けてはいない。
「なぜです?%’&%(&)’&G、、、、、、」
マリアンは急に声を小さくし、レオンの耳元にこそこそと話しをしたので何を言っているのか分からなかった。
「ーーーー分かった。ヴィア、明日朝が早いんだが、領主として向かってくれ。すぐに会いに行くから心配しなくていい、」
私がいまだに一人で寝るのが怖いと思っている彼はさすがに過保護すぎる。私だって彼と同じように領主としての教育をしっかりと受けてきた。ここ二年でカイネルさんが王宮勤めの信頼できる仲間をたくさん連れてきてくれたため何とかここまでこれた。
「心配しないでうまくやるわ。レオンも寂しくなったら言いなさいよ。すぐに戻ってくるから。」
からかうと耳を真っ赤にして部屋から出て行った。
その日の夜。部屋で休んでいると、
コンコンコン「ヴィア、入ってもいいか」
レオンが夜に会いに来るのは本当に久しぶりのことだった。
「どうしたの?怖い夢でも見た?」
からかいながら扉を開けると耳を真っ赤にして突っ立ていたレオンが中へと入ってきた。
「少し話しがある。中に入っていいか?」
入ってきてのいいかって聞いてきているくせにもう中に入っている。
「もう中に入っているでしょ。で、話って何?」
「、、、。あそこの領主を君にしようと思うんだ。一応隣国ではあるが紛争が絶えない地域のせいで領主の名前が変わることはよくあることらしい。だから他国の俺たちの名前になったってあまり気にされないはずだ。それに俺の名前を使うのもまずい。」
「あなたが決めたことなら任せるわ。あんなに素敵な土地を収められるなんて嬉しいけど、名前を変えればいいんじゃないかしら、」
あんな素敵な土地を私なんかがもらってしまっていいのかと考えたがきっと彼にも考えがあるのだろうと、考えることをやめることにした。
「それじゃあ、、何かあったら、、。いや、何でもない。お休み。」
不器用な彼なりに心配してくれているのが伝わりひんやりと冷たかった夜がなんだか少し暖かくなった気がした。