15 トラウマ
ここ数ヶ月ずっと追っ手から逃げ続けていた。
上手く姿をくらましてきたはずがどこからか情報が漏れたのか俺が生きているこで損をする奴らが俺を暗殺しにやってくる。
「カイネル様からお手紙でございます。」
領地はカイネルに任せきっており、俺はずっとドラゴンを追いかけるふりをして暗殺者を巻くため野宿生活を強いられていた。
「内通者が炙りたせました。早くご帰還願います。」
ボロボロの紙に一筆走り書きで書かれたその手紙を受け取った。
「今すぐ、帰るぞ。」
数ヶ月続いた野宿生活もやっと終わりが見えた。ヴィアがいなくてよかった。彼女にはこんな辛い思いをさせるわけにはいかなかったから。今頃何をしているのだろうか、暖かい土地でゆっくり幸せに暮らしてるのだろうか。彼女の体温を首元に感じる瞬間が今を生きてることを実感させてくれる唯一の希望だった。
巨大転移魔法を使用し100人ほどの部隊が領地へと帰還した。
「殿下、ご無事で何よりです。早速ですが内通者の始末に取り掛かりましょう。」
屋敷に入るや否やどこからともなくカイネルが走ってきて仕事の内容を話し始めた。
ああ、ウィアは元気なのだろか、何をしてるんだろう、
ギィィ古い扉か開く音がする。
「殿下この者が内通者でございます。」
何も考えずにカイネルの後を着いてきていたら目の前には内通者とカイネルが呼ぶ暗殺者が手足を拘束され座っていた。
「お、お前は…まだ生きていたのか。」
椅子に座っていた男を俺は見たことがあった。
そいつは6年前俺の母親の護衛を任されていた男だった。
そいつは6年前、俺の母親を暗殺した男だった。
「お前は生まれてはいけなかったんだ、はぁっはっは、」
なけなしの力を振り絞るかのように声を出したその相手に俺は怯んでしまった。昔の記憶が蘇る。かつて王宮時代に虐げられていた過去の傷が渦を巻いて痛み始める。
やばい、熱がこもり始めた。
「殿下、しっかりしてください。」
遠くでカイネルの声が聞こえる。汗が止まらない。動悸も止まらず意識が遠のき始めた。7歳の頃、俺の母親は無惨な死を遂げた。葬式もなくただの火葬だけだった。王族の一員であったはずなのに、そしてそのあまりにも無惨な死に方に俺は恐怖と怒りで第1魔力暴走を起こし魔力が発現した。
今俺はフラッシュバックより魔力が暴走を起こしていることは理解している。でもどうも勝てそうにない。
「カイネル任せた。」
俺は情けなく部屋を出ることにした。久しぶりに帰った屋敷は暗く長い長い廊下を1人で歩くのはとても寂しかった。まだ動悸がするまま部屋に着くとそこには誰かの気配を感じた。
「誰だ、そこにいるのは、、。おい。出てこい。誰の差し金だ。」
もういい加減にして欲しかった。次から次へと、この命が憎かった。もう全てを終わらせたかった。




