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(80)彩香悩む

悠と、ちゃんと付き合いだしてから、二人で仕事以外での外出することも多くなった。

日曜日のお昼、散歩がてら家の近くにある大きな公園のドックランを覗きに行き、

その近くにあるカフェで、ランチをしていた。


悠が席を外した時、後ろに座っていた女性たちの会話が、聞こえてきた。

「あれって悠だよね」

「うんうん、そうだよ」

「やっぱりカッコイイ~」

「一緒にいる人彼女かな」

「ええーそんなのショック!」 …………


忘れていた。

悠は、有名人だった…


以前の私は、悠の立場を考えて行動していたはずなのに、お互いの気持ちが分かってから、悠といられることで浮かれていた。

何も考えなくなっていた。

ファンのこと、事務所のこと、ゴーディオンのこと。

外で公に、軽々しくプライベートを一緒に過ごしては、いけないんだ…



*******************************



俺がトイレから戻ると、彩香が頬づえをつき、伏せ目がちに、ボーっとしていた。

「どうした? 彩香?」

「え? あぁ、ううん、何にも」


そのあと、彩香は事務所の仕事の話をし出した。

ゴーディオンが忙しすぎて、加山がスケジュール管理に頭を悩ませているとか、

ファンレターの数は誰のが多いとか、明日の取材は何時からだとか……

そんなのどうでもいいよ、俺。

仕事の話なんて…どうでもいいのに。


「休みの日くらい仕事の話すんなって。今日の夜、麻矢の店に行く?

 あっ、そうだ! おまえさぁ、俺のボクサーパンツ、シーツと一緒に糊付けしただろ!

 あれ、止めろよな、パリパリで穿き心地悪いし、

 ちょっと…辛いなぁ~穿いてて、なんか、なんかなんだよなぁ~へへ」


笑いながら彩香の方を見ると、ものすごく睨んでいた。



******************************



人が、人が必死に「私は事務所スタッフです!」と、周りにアピールするような話をしているのに、悠は、のん気にパンツの話をし出した。

間違ってシーツと一緒に糊付けしたパンツの話なんて、今はどーでもいいじゃないのよ!


私が睨んでも、悠は、うれしそうな顔をしているだけだった。




         ☆☆☆☆☆



ゴーディオンが出した新しいアルバムがベスト3に入り、悠たちは、忙しく動いていた。

事務所の前には、前以上にファンの人たちが、来るようになっている。

そして、悠のスキャンダル目当てにカメラマンが、たびたび出没していると、社長から聞かされ、悠も私も、気をつけていた。

私は、自宅玄関ではなく、事務所側の玄関を使って4階を行き来し、郵便ポストの名前も消し、私宛のものはすべて「美坂 方」を付けるようにした。


もちろん、加山、音楽部スタッフは、私と悠のことは知っている。

誰も何も言わず、見守ってくれていた。

ただ、私はこの家を出ようか、迷っている。

今、悠との事が公になるのは困る。

事務所にもゴーディオンのみんなにも迷惑をかける。


そして、麻矢のことも、私は気になっていた。

麻矢は、本当はリチャードと一緒に暮らしたいと考えている。

だけど、麻矢がまだ、ここを出ることができない理由。

麻矢は何も言わないが、たぶん、それは、私がこの家にいるからだ。

悠と私が二人だけで、ここに住むわけにはいかない。



私は加山に相談することにした。

麻矢のことは言わず、事務所に来るファンの人やゴーディオンにとって、今は一番大事な時で、人気に支障をきたす様なことは避けたいと、話した。



「それで、彩香ちゃんは4階を出るつもりなの?」

「はい。悠の食事とか身の回りは、事務所に通勤しながら、今までと同じにできると思うし、

 この近くにアパートでも借りれば、時間的にも問題ないと思うんです」


加山は、家を出る必要はないと、言ってくれたが、とりあえず、吉田と相談するから少し待ってくれと、言われた。

だが、吉田は何でも麻矢に言ってしまう。

吉田経由でこのことは麻矢の耳に入っていた。

何も知らず、私は加山からの返事を待っている。



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