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(70)今度は彩香と修平…?

アルバム製作最終作業を都内で終え、テレビ出演や地方での仕事などをこなし、

ゴーディオンは、ツアー準備などの打ち合わせで、忙しい日々を送っていた。


私は、相変わらずタレント部でお菓子を食べながらマンガを読んだりして、忙しくない日々を楽しんでいる。



「うひょひょひょひょぉぉ」 と、今日もタレント部に笑いをこだまさせている。

そこへ加山が入ってきた。

「おはようございます」

タレント部スタッフが、緊張した顔で加山に挨拶をする。

私たち音楽部スタッフは知らなかったが、タレント部の人間はきびきびしている吉田プロ№2の加山に恐いイメージがあるらしく、加山は恐れられていた。


加山が背筋を伸ばし、目を光らせ、近くのスタッフに聞いた。

「櫻田彩香、来てるかしら?」

フルネームで呼ばれた。

「は、はい。ソファの…ところに…」

タレント部スタッフが、するどい目つきの加山に怯えつつ、ソファでマンガを読んでいる私を指さした。


加山は、私のところに素早く歩いてきて、頭を叩いた。

「っつーーー。痛―。加山さん、何すんですかぁ~」 

加山は何も言わず、私の耳を摘んで起き上がらせ、スタッフに綺麗な微笑みを残し、

私はタレント部のみんなに、心配されながら、会議室に向かった。



「加山さ~ん、人の至福のひと時を、邪魔しないでくださいよ~」

私は、口を尖らした。

「アホ!ボケ! あんたはいつもいつもタレント部に入り浸って! 至福ばっかして!」

「だって、なんもすることないんだもん。悠は忙しいから世話しなくてもいいし、

 誰も仕事くれないし…」

「……た、確かに…そうなんだけどね…。

 とりあえず、ファンレターとプレゼントの整理でもしてるフリでもしてなさい!

 後で、お菓子持ってきてあげるから! あっ、そうだ。さっき結莉から電話があったわ。

 なんか明日一緒に食事したいらしいわ、彩香と」

加山に言われ、私は会議室から結莉に電話をした。


結莉に、「毎日ひまです」というと、明日の夕方、私を迎えに来てくれ、そのまま食事に行くことになった。


     

         ☆☆☆☆☆☆



翌日、仕事が終わる頃、結莉と修平が、吉田プロまで迎えに来てくれた。

私の仕事が終わるまで、二人は、加山にちょっかいを出し、タレント部に顔を出しに行き一暴れし、あげくの果てには、吉田を一泣かせしたあと、私を車にのせ、吉田プロを後にした。


食事をしてから「W」に行くと、結莉の業界仲間が先に来ていた。


結莉は、いつもと変わらずテキーラを飲み、ほろ酔い加減になった頃、

「あ”――、私、先に車に行ってるぅ」

と、先に駐車場に行き、車の後部座席に寝転がり、新曲を聴いていた。



私と修平は、30分ほどしてから「W」を出て、車に向かった。


後部席に入ろうとすると、「彩香、助手席に座って。私ここが楽だから」と、寝転がったまま言われ、私は助手席に座った。


「痛っ!」 

ドアを閉めた時、ゴミか何かが目に入り、目を押えた。

「どうした?」

運転席の修平に訊かれた。

「目になんか入ったみたい…」

「ゴミか?」

「修平くん、見てやんな!」

後部席から、結莉がえらそうに言った。


「なんで俺なんだよ…ったく。どれ?」

修平は、私の左目をベロッとめくった。

「痛ーーー。なにするんですか! 今、適当にめくったでしょ!!」

「なんだよ、人の親切心を!」

「結莉さ~ん」

私は、結莉に甘えてみた。

「おーよしよし。修平! やさしくみてやんな!」

結莉は、寝転がったまま、また、えらそうに言う。


修平が、私の顔をいろいろと角度を変え見ていたとき、突然二度ほど光が放たれた。

「……ん?」

「なに?」

「どうした?」

三人で顔を見合わせた。

カメラのフラッシュ?


修平と私が、フロントガラス越しに写真を撮られた。

カメラマンは、すでに姿を消している。


結莉はのんびり起き上がり、

「なんかお二人さん、フォーカスされちゃったみたい。あっらまぁ~」

と、のん気に笑った。

「うげっ! ざけんなよ。なんで彩香と撮られなきゃなんねーんだよ! 結莉ぃ」

修平は、悲しい顔で結莉を見た。


「あー、浮気だ! 浮気現場押さえられたんだ! 修平くん!」

「なんでそーなるんだよ。嫁が後ろに座ってて、浮気も何もねーだろー」

修平は動揺していたが、結莉は楽しそうだ。


「結莉さん、どうするんですかぁ?」

「え? いいんじゃない? 別に~」 

あせりもせず、人事のように言う、この人の思考回路がよくわからない…

「よくねーよ! 俺、浮気なんかしてねーのに」

「まっ、どうなるかは来週あたりの週刊誌みればわかるよ」

そう言うと、結莉はまたゴロンと、寝転がった。


「ハァ?」

「ええー?」

修平と私は、結莉を見たが、

「見出しは…リフィール修平浮気発覚! Keiと離婚間近か! みたいなぁ~」

結莉がそう言い笑うと、修平は怒ったあと、涙目になり、しょげまくった。


写真を撮られてから数日が経ち、結莉の言葉どおりというか、見出しそのものが

結莉の言葉と同じだった。


「リフィール・修平浮気発覚!! 世界のKeiと早くも離婚秒読みか!?」


        

           ☆☆☆☆☆

                                        


週刊誌が発売された、この日、俺は、地方の仕事で九州に来ていた。

午後になると、ワイドショーが騒ぎ出し、彩香と修平の写真のことが俺の耳にも入ってきた。

一人のスタッフから写真週刊誌を受け取り、テレビ局の楽屋でそれを見た。


な、なん、なんなんだよ!! これ…!


写真は、修平が結莉でない別の女性と、今にもキスをしそうな写りだった。

相手は…彩香?

目の部分は隠されていたが、彩香だ。

俺は血の気が引いていった。

倒れてもいいですか……。


雑誌を食い入るように見る俺のことを、メンバーみんなが見ていた。

「大丈夫か? 悠は…」

「いや、たぶん大丈夫じゃない」

「やべーな、これから収録だぜ? ヤバくね?」

「あと一時間もないよ?」



「俺…俺…ちょっと散歩行って来るぅ…」

「さ、散歩って…外はダメだぞ! ファンがいるんだから」

亮に言われたが、ボーッとして聞こえていない俺は、楽屋を出て、あてもなく歩き、

局の裏口にある石段に、腰を下ろした。



なんで修平さんなんだよ…。

修平さんは結莉さん一筋のはずだろ?

それに、俺が彩香のことで相談すると、いっつも俺にアドバイスくれてたじゃねーかよ。




         ☆☆☆☆☆



相楽が事務所に連絡を入れ、加山に事情を聞いた。

東京では、修平の所属する「銀ちゃんプロ」が大変なことになっていた。

マスコミ対応に追われ、事務所の外、結莉の自宅マンションの前にはテレビ局や雑誌記者などが押し寄せている。

修平の浮気というスキャンダルではあるが、嫁がKeiということの方が大きい。

海外からの問い合わせも、後を絶たない状態だった。

彩香の身元はバレてはいないが、マスコミは相手の女性を探しまわっているということだ。


とりあえず、彩香は加山の指示で部屋にいて、吉田プロのスタッフには事情を説明し、

みんなは納得をしていた。


「で、その車に結莉さんも一緒に乗っていたんだよね?」

相楽が確認するように、加山に聞いた。

「ええ、それは確実です。本人も結莉さんも修平くんも。

 あと、その日に一緒に飲んでいた業界にの人たちも大勢いたので。

 ただ、結莉さんが写真に写っていないのと助手席に、彩香がいたということで、

 証明がちょっと難しいんですよね…で、悠はどうしてます?」

「ずぶ濡れ状態で…、これから悠には事情を説明するけど、信じてくれるかなぁ? 

 はぁ、これから収録だっていうのになぁ…」



加山との電話を切った相楽は、どこかに散歩に行ってしまった、俺を探していた。

局外には出ていないはずと思い、スタッフに訊きつつ探し、裏出口のところに腰をかけて座り、ボーっとしている俺を、みつけた。

(あ~ぁ、魂いなくなってるよ、悠のやつ)


「悠…?」

「……」

「悠…」

「……」

「(ダメだ…地の果てにセンチメンタルジャーニー中だ) 悠? 大丈夫か?」 

相楽が、俺の体を揺すった。


「…? え、あぁ、何?」

「(おおー魂が戻ってきた、よかったぁ) 写真の…彩香ちゃんのことだが」

「ぇ? それがどうしたのぉ? 俺、ぜんぜんかんけーねー…からぁ…」

「(ぜんぜん関係ない顔してねーってば)…」


相楽が、俺の隣に腰を下ろし、説明を始めた。

あの日、確かに3人で一緒にいたことは、一緒に飲んでいた仲間たちが証明している。

写真を撮られた時、後部席には結莉がいて、彩香の目にゴミが入ったのを

修平が取ってあげようとしていたと、加山から聞いたことを話した。


「……でも、キスしてるじゃねーかよ…」 

俺は俯き、自分のスニーカーの紐をいじくりながら、いじけた。

「写真、ちゃんと見てみろ、キスなんてしてないじゃないか? 

 まっ、信じるか信じないかは、悠次第だがな。とにかく、あの二人は何でもない!

 おまえは今日の収録をちゃんとやれ!ファンの人たちも楽しみに待ってるんだから」

相楽は、そういうと、俺の肩を叩きその場を、離れた。



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