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(51)イブは彩香と…

パーティーが終わり、みんなが帰って行ったのは深夜4時を回っていた。

「悠は2時から仕事なんだから、早く寝なさい」と、麻矢口調で彩香に言われ、俺が4階に戻るときも、彩香はまだ3階で一人、片づけをしていた。


昼前に部屋から出てリビングに行くと、彩香は眠っているようで、テーブルには昼食の用意がしてあり、3階はきれいに片付けられていた。

俺は昼食を食べ、迎えの車で仕事に向かった。




****************************



私は、夜、結莉ファミリーのクリスマスパーティーに来ていた。

クラブを貸しきり、ライブありDJありでたくさんの人が集まり大盛り上がり。

結莉は自分が主催者にも関わらず、人が多すぎてうるさいのは嫌いと、ダンスフロアには行かず、ずっとVIPルームでテキーラーを飲んでいる。

私は結莉の横で、テキーラの正しい飲み方の指導を受けていた。

それは、誰から見ても、お酒の飲めない人から見ても決して正しい飲み方ではない…。


私が指導を受けていると、部屋に俳優の谷口雅俊が入って来た。

整った顔つきは、目を見張るほどだったが、人気があるのかないのかわからない準主役級の俳優だ。

だけど、テレビにはしょっちゅう出ている。


「顔が良すぎて、今ひとつ光輝くものがない悲しい俳優!それは谷口雅俊くんでーす」


本人を目の前に、堂々と結莉がそう紹介した。

雅俊は、私の横に座り、いろいろと話しかけて来てくれた。

途中で修平に呼ばれ、私がダンスフロアに下りて行くと、今度はメチャクチャ

カッコイイ人を紹介された。




********************************



人々が楽しいクリスマス・イブを過ごしている中、俺が仕事を終え、家に着いたのは10時を少しまわっていた。

彩香は…家にはいない。


深沢と一緒なんだもんな、いるわけないよな…


一人ブツブツ言いながらリビングの床の上で転がっていた俺は、思ってしまった。


「電話しちゃないよ、悠くん!でも商社野郎と一緒だしな~。あいつと一緒だからこそ

 電話をするべきだよ、悠くん!!だよなっ!イブくらい邪魔してもマリアさまも許し

 てくれるよな?うん!」


などと、アホな俺は、一人で天使と自分を演じていた。


携帯の彩香のメモリーを表示した。

画面を眺め、迷いに迷い、思い切ってコールボタンを押す。

が、コールのみで出ない。


……なんで、出ないんだよ。

くわぁーーー。もう1回かけてやる!!


なぜか今日の俺はムキになっている。

頭を掻きながら、もう一度コールボタンを押し、コールが続き諦めて切ろうとしたとき

「はい」 と出たのは男の声。


……深沢か?

一瞬、よからぬ想像が俺の脳裏をかすった。

彩香が出ないということは、彩香はシャワー中で…?

ホテル……なのかーーーー!



しかし、人の話し声とか騒がしさが電話の向こうから聞こえて来ている。

俺はつばを飲み込み、「えーと、彩香…」 と言うのが精一杯だった。


「あっ、彩香ちゃんなら、今席をはずしているんですが、戻ってきたら折り返すよう

 に伝えておきます」


相手は丁寧に言った。

俺は電話を切ったあと、お得意の体育すわりのまま携帯を眺めて、彩香のコールを待っていた。



*******************************



私が結莉のいる部屋に戻ると、ソファに置きっぱなしにしておいた携帯を雅俊から渡された。

「彩香ちゃんの携帯に何度か電話が入って、僕、出ちゃったんだ、ごめん。

 で、その人に折り返しますって、勝手に言っちゃったんだけど…」

「あ?そう?ありがとう~」

「もしかして、彩香ちゃんの彼氏?」

「ん?私彼氏いないも~ん」

「そうなの?じゃ、僕、立候補なんてしちゃおうかな?」

雅俊は笑えない冗談を言った。

「ははは~~」

と、私は、乾いた笑いをしながら携帯の履歴を見た。


携帯の表示は「ポン吉」

「悠?なんの用だろう…」


「悠」は「ポン吉」

「結莉」は「あねさん」

「修平」は「くり坊」


その他、有名人の登録名は、名前を替えてメモリしている。

携帯紛失時の万が一の時のためだ。



私は携帯を持って部屋を出て、静かな場所に行き、悠に電話をした。



*******************************




眺めていた携帯が鳴り、俺はすぐに出た。


「悠?電話くれた?」

「どこにいんの?今」

俺は冷静な声を作って訊いた。


「結莉さんのクリスマスパーティよ」


え?……

そういえば、俺もメンバーも誘われていたが、仕事だからと断ったんだ。

忘れていた…。

彩香も誘われてたのか…。


「さっき、男が出た。彩香の電話に…」

「あぁ、修平さんに呼ばれて携帯置いたまま席外しちゃったんだ。

 だから部屋にいた人が代わりに出てくれたみたい」


彩香の携帯に勝手に出やがって!!

どこのどいつだ!

俺を焦らすんじゃね!



「で、なんか用だったの?私に」

「え…あっ、あーーー、みんながおまえに礼を言っとけって…」

「お礼?なんの?」

「昨日は、いろいろこき使っちゃって忙しくさせたから…」

「そんなのいいよ。別に無理してやったわけじゃないし、私も楽しかったから」

「ん…とりあえず…ありがとう…」

「いーえ、どういたしまして」


彩香が電話を切りそうだったので、俺はとっさに訊いた。

「…で!おまえ、今日…遅いの?」

「ん?今何時?11時か…もうそろそろ帰るよ。みんなはたぶんこれからだろうけど、

 私はもう帰る」

「そ、そうなんだ!じゃ、俺迎えに行ってやるよ。場所わかるし」

俺はもうこの時点で立ち上がっている。


「ええ?いーよ。タクシーで帰るから」

「今日、クリスマスだぜ。タクシーなんて捕まるわけないだろ?」

すでにダウンに片方の腕を通している。

「じゃぁ、電車で帰る。まだ電車余裕であるし」

「近くに着いたら電話するから!待ってろ!」

俺は車のキーを握り締めた。


「え…もし、もしもーーし?」

―――プーーー。


俺はそそくさと電話を切り、玄関を出た。




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