表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
42/102

(42)出た!暴走夫婦…

いつも読んでいただいているみなさま、ありがとうございます。この『話』より、別ストーリー「恋する男・暴走中」の結莉&修平が登場します。ただの暴走夫婦として流れに入ってくるだけですが…。

車の中から麻矢に連絡していたので個室をキープして置いてくれた。

部屋に顔を見せた麻矢は、接客に忙しいから後で来ると言い、すぐに仕事に戻り、

俺たちは二人で食事をしていた。


―――トントン。

ドアが開いた。


「いよっ!!」

「えへへ!」

麻矢かと思いきや、ドアのところには、ニンマリ顔の男とほくそえんでいる顔の女が仲良く立っていた。

『結莉&修平の暴走夫婦』が登場してしまった。

「き、来てたんですね…」 俺の顔は引きつる。


『Kei』という名で世界的有名な作曲家で大酒飲み・結莉。

人気№1ロックグループ・リフィールのボーカリスト・修平。

尊敬に値する音楽家二人で、私生活でも俺と麻矢はお世話になっているのだが、

お騒がせ夫婦として有名だ。

ただ、何か問題を起しても良い方に転んでいくのが、この夫婦のすごいところでもあるし、

誰からも愛されているということも、これまたすごいんだけど…。



「なんか、お邪魔だったかしらん?悠ちゃん?ん?ん?」

「ぜんぜん、邪魔じゃないよな!悠!!」

「だよね?」 「だよ!!うん!!」

勝手に夫婦二人で会話をし、うなづき合い、勝手に修平が俺の横に座り、勝手に結莉が

彩香の隣に座った。


―――邪魔です!!

と、言いたいが、言えるわけもなく…

今日も俺はこの夫婦に流されていくんだろうなぁ。

いつものことだけど…。


店のスタッフが、結莉用にテキーラのボトルとグラスを持ってきた。

……もしかして、ここに長居する気ですか…


俺が彩香を紹介しようとしたら顔見知りだったことに驚いた。

レーベル会社のパーティで麻矢に紹介されていて、その後も何度か会っているらしい。


「悠ちゃん車だからお酒ダメでしょ?じゃぁ~彩香ちゃん、これ!」

結莉は彩香に、空のロンググラスを手渡した。

「結莉さん、彩香、あんまりお酒飲めないから…」

俺が言うと、結莉が冷ややかな視線を俺に浴びせ、真顔で言った。

「テキーラなら、そんなにキツくないからっ!!」

何をもってこの人は、テキーラをキツくないときっぱり言い切れるのだろうか…


「無理に飲ませるなよ、結莉。おまえと違うんだからさぁ。彩香ちゃん可哀相だろ?

 なぁ、悠!」

俺の肩に腕を回し、結莉に対して修平が偉そうに言ったが、結莉の目が怖い。

この時、修平を睨みつける結莉の後ろで「尺八の音色」がBGMとなって響いた。

俺には、ちゃんと聞こえた。


きっと、家に帰ったら修平さん…〆られるんだろうなぁ。かわいそうに…。


「じ、じゃぁ、いただきますので…」

修平を睨み続けている結莉の腕を引っ張り、彩香が結莉の前にグラスを出した。

「ん?そ~ぉ?じゃ、今日は少しだけにしようね?彩香ちゃん?」

そう言うと、ニコニコと笑い、結莉はロンググラスの四分の四までテキーラを注いだ。


わかりません。俺は結莉さんが、わかりません…

それのどこが、少しなんですか!


結莉と彩香は二人で乾杯をし、テキーラを飲み始めた。


「で、どこ行ってきたの?今日は」

「ポンポコポンランドに行ってきたんです」

彩香が答えた。


「ええ~~!!もぉ!ラブラブなんだぁ」

結莉は麻矢から何かを吹き込まれているようだ。

「……いやいや、結莉さん…違うし」

彩香が結莉にツッコミを入れている。


「ポンポコポンランドにデートに行くと別れるって聞いたことあるぜ!」

修平がまた変なことを言い出した。


な、なんですかーーー。それ!

俺、聞いたことねーよ!そんな話!


俺が変な顔をしていると、修平が続けた。

「なんかさ、そこに恋人同士で行くと、別れる確率が高いんだって。

 だから俺、結莉とは絶対ポンポコポンには行かないんだなぁ、これが!!

 まっ、俺たちはすでに夫婦だけど、俺はぜってー行かない!!」

「私たち別に、恋人同士じゃないですから~」

彩香が手を左右に振って否定した。


そうだよ…恋人同士じゃ…ないよ、俺たち…

わかってる…そんなこと…


「そっか!あなた達二人は恋人同士じゃないんだったら、大丈夫だよ!ね!

 まぁね、都市伝説みたいなもんだからね、そんなの~。

 私のマネージャーだって今のだんなさんとポンポコポンに行って、

 そこでプロポーズされて結婚したんだから、迷信迷信!」

結莉は、チラッと俺を見てから、なにかを企んだ目をして彩香の肩をバンバン叩いた。



そして、俺と彩香はこの先、この暴走夫婦にいい様に遊ばれることになる。

特に、結莉の目の奥深くに隠されている企みに、俺は気がつかないでいた。



さんざん暴走夫婦に弄くられまくり、俺と彩香が家に帰ったのは深夜2時を回っていた。

彩香が自分の部屋に入ろうとした時、小さな箱にちゃんとりぼんがついた、

さっき買ったストラップを手渡した。


「これ、やるよ。ポンポコポンで買ったんだ」

「何何?」


彩香が包みを開けてストラップを出した。

「た、高そう…なんですけど…」

「ん?そうでもないよ。いつもメイドやってくれてるから、12月のボーナス…」

「ボーナス?貰っていいの?!」

「うん…」

「わーい!ありがとう~。大切にするね!」


彩香はいつも素直に嬉しそうな顔をする。

子供っぽくみえてしまうのもその所為かもしれないが、俺はそんな彩香の笑った顔が大好きだ。

ただ、本人に好きだと言えない俺は、その笑顔を見るとせつなくなる。



彩香はルンルンと部屋に入って行ったが、俺も同じものを買ったとは言わなかった。

恥ずかしくて……言えるわけがない…。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【恋愛遊牧民G】←恋愛小説専門のサイトさま。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ