表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
39/102

(39)彩香の寝顔

次の日の夕方、出かける前、彩香に声をかけようかと思ったが、深沢とのデートのための

支度をしているのか、まだ部屋にいるようで、結局ドアをノックできなかった。

心晴れないまま、俺は玄関を出た。



音楽仲間との食事のあと、クラブに行って飲んでいたが、彩香のことが気になって楽しめない。


―――今ごろ商社野郎と一緒かよ…ムカつくぜ、商社野郎!!!


頭の中で蠢く顔も見たこともない商社野郎を、パンチで消しては一杯飲み、またパンチで消し一杯飲むを、一人で繰り返し、何杯飲んだかわからないほどになっていた。

だけど、ぜんぜん酔えない。


深夜、1時近くに店を出て、タクシーを拾い、くっ付いて来た女と家の前で降りた。

彩香がこの家に来てから女なんて連れ込んでいない。

他の女なんてどうでもいい。

仕事が終わってこの家に帰ってくれば必ず彩香がいる。

彩香の「おかえり」の声が聞きたくて、早く顔を見たくて、俺はいつも急いで

帰ってきていた。

だけど、どうせ今日は彩香だってお泊りでいないんだから、おあいこってことだ。


家の外から4階部分を見上げた。

―――電気、点いてない…泊まり…彩香は商社野郎とお泊り。

    だ~れもいない…ふんっ。


溜息と共に寒さに負けた白い息を吐きながら、俺はそのまま女を連れて4階に上がった。

玄関に入ると、すりガラスで出来ているリビングの扉に青白い光が反射していた。

「あれ?テレビ点けっぱなしか?」

部屋の電気は消されているが、テレビの光が見えた。


女を玄関に待たせ、リビングを見に行った。


大きなテレビの前で彩香が毛布を被って寝ている。

「彩香…?出かけたんじゃ…」

家にいたんだ…そうかぁ。

俺はなんだかホッとして、顔が緩む。

単純すぎる、俺。


彩香の横に腰を下ろし、少しの間、彩香を見ていた。



あっ!女…忘れてた…玄関に待たせっぱなしだ。

女の所に戻り、真面目な顔で言った。

「悪いけど、帰って!今、タクシー呼ぶから」

「ええ~!なによぉ~それぇぇ~~」

女がごねるが聞く耳は持たない。というか、無い!


俺は携帯からタクシーを呼んだ。

「悪いね!この埋め合わせは…あー、ない!」

おまえなんて相手にしてられない。

タクシー代を渡し、女をとっとと追い出した後、すぐに彩香のところに飛んで行った。

彩香が言うように、俺は女に対してサイテーな男だ。


テレビの電源を落とし、彩香の横に座り直して、眠っている彩香の顔をジッと見つめた。

頬を撫でる。

俺の指先は、知らない間に彩香の柔らかい唇を触っていた。


仕事だったとはいえ、キスをしたことのある彩香の唇…

ジッと見つめた。

ジッと見つめた…

…………見つめすぎた…

うっ、ヤ、ヤバイ…しもの方が…。

く、く、くるしいぃぃぃぃ~。


彩香の寝顔を見ているうちに、下半身がパンパンになってきた。

俺は我慢したが、つ、辛い…ムリ、無理かもしれないーーー!!

一人、頭と心の中でのた打ち回りながらも、気を散らそうと一生懸命考えた。


座禅を組み、目を瞑って思い起こした。

亮の顔。

誠の顔。

キヨの顔。

相楽の顔。

社長の顔。

……麻矢の……

よ、よし!な、萎えた!!最強だよ、麻矢!

人間頑張れば何とかなる!!


俺は結局、家にいた彩香に安心して、酒が急に回り出し彩香の隣で、いつの間にか寝てしまっていた。




              ☆☆☆☆☆


深夜4時近くに麻矢が帰宅し、リビングの電気をつけて驚いた。

床の上で悠と彩香が丸まって寝ている。

悠は毛布も掛けず寒いのか彩香にぴったりとくっ付いていたが、悠のしあわせそうな顔に麻矢は思わず笑みをこぼした。

すぐに照明を消し、悠の部屋から掛け布団を取りに行き、二人に静かに掛けた。

「おやすみっ!チュッ!チュッ!」

と、麻矢は二人分の投げキッスをしてリビングを出ていった。

      



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【恋愛遊牧民G】←恋愛小説専門のサイトさま。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ