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(36)ライバル商社野郎!

出かける準備をして12時前にリビングに行くと、彩香は全身黒尽くめの格好いい姿で俺に

「ちょっと待て!」と手で合図をしたあと、腰に手を当てて上を向いて健康ドリンクを

飲んだ。


なんか最近、俺に対する態度が麻矢と似てきているのが気になる。

「プハッ!」 

飲み干したようだ。

はいはい、お疲れさん…。


「悠も出かけるの?」

「ん、一緒に」

誠には言っていないが、二人にするわけにはいかない。

彩香の携帯がなり、誠が下に着いたと連絡が入った。

アイツは本当に時間に性格なやつだ。

玄関の前には誠の愛車・四駆が止まっていた。


「いよっ!誠!」

「あれ?悠も出かけんのかよ」

「うん、彩香と!」

「ぁあ?」

「つーことで、誠、残念なことにおまえも一緒だけどな」

「ハァァァァ?!」

誠の目は点になっていたが、そんなことはどうでもいい。


「私、運転しようか?二人後ろに乗りなよ」

「仕事じゃないんだから、今日の彩香ちゃんは助手席だよ。オレ運転するから」

誠が助手席のドアを開け、彩香を乗せようとした。


何格好つけてんだよ!誠!

ってか、いつもチャラチャラな格好なのに今日は普通じゃん。

俺は彩香を引っ張り、後部席に押し込んだ。


「誠、おまえ運転手な!俺、助手席に乗るから~」

鼻歌交じりの俺は、そそくさと助手席に座った。

「……(ったく、わがままなヤツだ!おもろいなぁ。バレバレの行動)」

誠が心の中で笑いながらそんなことを思っているとは全然しらなかった。


誠は小声で俺に言った。

「悠…なんで、デートの邪魔すんだよ!」

「はぁ?服買いに行くんだろ?ふーく!ふーーーーーーっ!く!」

俺が誠の前髪に思い切り、息を吹きかけると、今度は誠が俺の頭に頭突きをしてきた。

「っーー、ぁにすんだよ!誠ぁ!」

誠の顔は、楽しそうに笑っている。

ゴチャゴチャともめつつも、車を発進させて、3人の楽しいドライブが始まった。


だけど、昨日の今日で俺の強敵なライバルが姿を見せ始めた。

それは、誠じゃなかった…



**************************************



誠の運転で原宿まで車を走らせる。

土曜日のR246、三軒茶屋あたりが少し混んでいた。


悠と誠って仲がいいんだぁ。なんか兄弟喧嘩みたいのをよくしているところを

目撃するけど、さっきもゴニョゴニョと戯れていたし。


私は後ろの席から二人を見ながら仲間っていいなぁ~などとうらやましく思った。

男同士の仲間ってこんなのなのかな。

喧嘩していても途中からふざけあいになって、いつのまにか肩組んでいるような…


私の携帯が鳴り、表示されたのは知らない番号。

「はい。…はいそうです。……あっ!どうもお久しぶりです~」

私の声が『余所行き』になっていく。


悠が振り向いた。

前を向け!と手で追い払ったが、「誰~?」と大きな声で聞いてくる。

……あんたの声を相手に聞かせてどうする。

電話の向こうは二週間前に紹介された、商社に勤める深沢だった。


「え?へへっ、今、事務所のミュージシャンと一緒にいるんです。えっ?いえ、

 マジシャンじゃなくて、ミュージシャン…ははは~似たようなもんですけどね…」

深沢との会話の声は愛想良く、悠に向けている顔は怒っている。

器用だと自分で思った。


「え?今?あっ、ぜんぜん大丈夫ですよ~大した仕事じゃないし。ははっ!」

右側に座っていたが、悠が前を向かず、こっちを見続けていたので左側に移動した。


「そうだったんですかぁ?いえいえ、そんな。ふふっ」

深沢に、「早く連絡を取りたかったが海外出張で日本にいなかった」と説明された。

「え?水曜日ですか?もぉぜんっぜん大丈夫です~いっつも夕食淋しく一人なんですよ」

夕食は悠と食べることが多いが、とりあえず今は『一人』を強調しておこう。


背もたれとヘッドレストの間から悠の目が見えた。

器用に体を捻ってこっちを見ている。

……邪魔!

私は指でVの字を作り、隙間から悠の目めがけて突っつく真似をしたが、勢いがつき

片方の目に直撃してしまった。


「うわぁぁぁ!!いてーーー!!なにすんだよ!!痛――――――」

大声を出し、一人助手席でもがき苦しんでいる。

誠は悠の痛がり方に、なぜか喜び、大うけだ。


「あっ、いえ、なんかタレントの一人の目にゴミが入ったみたいで…芸能人なんて、

 わがままでぇ、ちょっとのゴミでも大騒ぎなんですよ、大したことないのに、ね?」

私は深沢と水曜日の夜、食事の約束をし、電話を切った。


久しぶりのデート。

それも何気にいい男、商社マン、32歳、独身。

完璧だ!!よし!!


「大丈夫?悠~」

一応声を掛けた。

涙目の悠が睨みながら、振り向いた。

「ごめんごめん」

軽くあやまる。


*************************************



電話で話す彩香の声がいつもと違っている。

どこか作られた、女をアピールするものだ。

で、相手は誰なんだ!

聞いていると、水曜日に約束をしたようだ。

そこまでは聞いていたが、目を突付かれ、もがいている間に彩香の電話は切れていた。

誠の「大丈夫かぁ~」と俺を気遣う声が楽しそうなのがムカつく。



「彩香ちゃん、彼氏できたの?」

誠がバックミラー越しに聞いた。

「ううん。彼氏じゃな~い。まだ!!」

まだ!を強調した。


…まだ?相手は、商社野郎か?昨日話していたヤツか?!


「……確率0.001%の男?」

「ふん!だったらなによ。誘われちゃったも~ん。だから確率は少し上がりました!」

「何?確率って」

誠に聞かれ彩香は商社野郎の話をし、「私の春ももうすぐそこよ!」と、

冬を迎えたばかりの季節に挑戦状を叩きつけていた。


「デートの約束したんだ」

誠は俺をチラッと見てから彩香に言った。

「水曜日にね!仕事終わってから!」

ものすごくうれしそうだ。

「俺の飯、どーすんだよ。水曜日の飯!!」

「水曜日仕事でしょ?ラジオでしょ?悠のスケジュールはちゃんと把握してるから、私」

「……」


この日から、俺・佐久間悠の切ない日々が始まった。





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