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(18)CM出演?!流れるままに…

ゴーディオンが、2月に発売されるファッションブランド「Vivace Chieko」の

香水のCMに出演することになり、朝早くから撮影スタジオに入った。

CM使用曲は「ゴーディオン」が担当。

「Vivace Chieko」の広報担当と加山は知り合いらしく、加山も朝から撮影現場に

同行していた。


ゴーディオン4人の他に、モデルの女性が一人出演する。

モデルの女性は19歳のヨーロッパと日本のミックス。悠の相手役になる女性で、

ものすごくかわいらしい人だと、メンバーが浮かれ気味に話していて、悠の鼻の下は

完璧に伸びていた!と、私は確信している。



CMの内容は、黒い衣装を身につけた罪を犯した(なんの罪か設定なし)

「ゴーディオン」4人が並び、そこに白いドレスを身に纏った天使の羽をつけた女性登場。

(このとき天使の顔アップ)

天使が差し伸べた手が、悠の頬に触れると(見つめあった悠と天使の横顔アップ)

上から白い羽と「Chiekoの迷想の香り」が舞い落ち、4人をやさしく包み込む。

(香りはお茶の間のみなさんには全然伝わらない)

すると、「ゴーディオン」の4人が白い衣装に変身。

白い衣装になった4人が並び、天使を抱きしめる悠(4人はカメラ目線、天使は後姿)

Vivace Chieko  New 「eau de toilette」 ――――Chiekoの迷想


そしてそこでナレーション。

――――― 人生、迷った先には Vivace Chieko   Chiekoの迷想~



「こんなフレーズで、いいのかどうか。わけわかんな~い」

私たち吉田プロ・スタッフには全く関係ないが事務所では、話し合って受けていた。



*******************************



朝、9時前。

まだ家にいた私に、撮影で人手が足りなくなったからすぐ来て欲しいと加山から

連絡が入り、スタジオの場所を聞き、タクシーで駆けつけた。


スタジオに着くと、入り口ロビーには加山が待っていてくれた。

「おはようございます~」 

のんびり挨拶をしたが、加山は余程時間に追われているのか、

「おはよう!こっち!」 と私の手を引っ張り走り出した。

何も言わず、撮影が行われる場所に放り込まれた。

スタジオの中にいた人たちが、一斉に私を見た。

ゴーディオンは、フィッティング中なのか、まだいない。


すでに撮影機材がセットされていて、ゴーディオン待ちのようだ。


な、なんか…雰囲気が恐い…ち、ちびりそう…。

ビビりの私は、みんなの視線を直接受け、2歩ほど後ずさりをした。


「彩香ちゃん!身長何センチだ?」

相楽に聞かれた。

「えっ、ひ、ひ、165㎝です…」


みんなは急に輪になって、ゴニョゴニョなにか話し合い出した。

私は、スタジオの扉付近で、突っ立ったまま何事かわからず、前にも後ろにも動けず

固まっていた。


「よっしゃー、決定だ」 

プロデューサーらしき人物が言うと、一斉にみんなが私の方を向いた。

またチビリかけた。


「もともとのモデルさん、173㎝だけど8㎝、どうにかしましょう。

 ドレスだし、ヒールでなんとかなるでしょう」

スタイリストが言った。

私は何がなんだかわからないが、微笑みながら、少し膝を曲げ身長を低くした。

「あっ、小さくなった…」 加山にツッコまれる。


「じゃ、メイクと衣装の方、チェックしてあげてくれるかな」

プロデューサーの声にヘアメイクが動き出した。


「ちょっ、ちょーーっと、待ってください!」

私はあせりまくった。

「か、か、加山さ~ん。どういうことですかぁ?」

「あー、こういうこと!」


「実はね、モデルさんがここに来る途中、急に腹痛で救急車で運ばれたの。

 急性盲腸炎らしいんだけど、連絡が入って」

加山に説明された。


ゴーディオンやスタジオ、その他もろもろのスケジュールを考えると撮影は

今日中に終わらなければならないため、時間的に余裕がない。

モデル事務所も代わりのモデルを捜していたが、

そんな中、相楽の「彩香ちゃんでいいんじゃないか?」の非常に安易な一言で、

現場の関係者で相談した結果…こうなったと。


加山は私の肩に、右手、左手とポン、ポンとおき、続けて言った。

「ゴーディオンのため!吉田プロのため!CMのため!!…お願い…」 

そして私に手を合わせた。


「私できません!素人で一般人です!それに、モデルさんは19歳だったじゃない

 ですか…私は、に、にじゅうはち…です!それに、かお…顔だって……」

自分で言いながらどんどん声が小さくなる。

「あーー、大丈夫大丈夫、んー彩香ちゃんはかわいい!若いわぁ~プリティ~」

(そんな取ってつけたように…言われても)


「い、いやです。加山さんの命令でもこれはムチャです、できません。そんな簡単に

 素人の私に決めちゃっていいわけありません!大切なCMなんですよ!」

私は頑張って突っぱねた。


「でも、プロデューサーも広報もOK出てるの…ん~、よし!特別手当!ギャラよ。

 ギャラ!特別給金!どう?!」

うっ…心が揺らぐ…ギャ、ギャラーーーー。

はっ、いかんいかん!お金に惑わされたら人生終わりだ!!

(人生 迷った先には Chiekoの迷想)

なんだかへんなフレーズが頭を横切った。


「イヤです」

もう一度、突っぱねた。


「彩香ちゃん!撮影後には、ボウボウ苑の焼肉よ!!ギャラ&ミートよ!!」

加山は私の肩に手を置いて揺さぶった。


ええーー!!

私を肉で釣ろうとしている…加山…であった。


迷う…私はとても迷っている。

芸能人御用達の焼肉店、ボウボウ苑。肉の美味さは天下一。

超庶民の私は絶対自分では行ってはいけない店として、私のメモ帳に

書きとめられている店。

高すぎて自腹で行くのは無理。この先、死ぬまでに行けるかどうかもわからない、

あこがれのお店。


一度も食べたことがないと、前に加山に話していたのを加山は思い出したのかも

しれない。

「……」


返事ができない私に、追い討ちを掛けるかのように、相楽が言った。

「じゃ、わたくし相楽が、奮発して彩香ちゃんにだけ特別に、

 (超高級和牛霜降りロース100g8000円)の肉を一人前付けよう!

 どうだ!これで!!」


ええーー、超高級和牛霜降りロース100g8000円?100g…8000円…?!

ひ、ひぇぇぇ!!

「やります!私。社運を懸けて!」

肉の値段に軽い眩暈を起こしつつ、思わず真剣な眼差しで即答してしまった。


100g8000円の肉なんて見たことない。当たり前だが食べたこともない。

この先、絶対一生食べられない……


少し間を置いて我に返ったが、すでに私はシャワー室に放り込まれたあと、

メイク室にいた。

ものすごい自己嫌悪に陥った。

バカだ…私は…バカだ…


メイクをされ、カツラをのせられ、衣装を着させられた。

なされるがままに、私はベルトコンベアーの上にいた。

流される人生…これほど、空しいものはない…


「櫻田さん、あまりお直ししなくて大丈夫よ、スタイルいいのね。ただ丈だけは

 仕方ないわね」

スタイリストが手早く、白いドレスのサイズの応急処置をした。

撮影時に、背中に大きな天使の羽をセットして完了だ。

羽はリモコンで動かせるように製作したため、内部に機械が入っている。


「天使、準備OKで~~す」

スタジオの扉を開けて、ヘアメイクさんが監督に言った。

加山が近づいてきて、私を褒め称え、おだてた。

「うんうん!!かわいい~~~!28に見えないから大丈夫よ!!」

……一言多いんですけど…。


すでにゴーディオンは、監督やプロデューサーと打ち合わせをしていた。

加山に手を引かれ、監督の元へ行った。

「おっ!!いいじゃん!ぜんぜん問題なし!さすが、相楽くんだね~見る目あるよ」

監督に褒めまくられ、ちょっと浮き足立った。


隣にいた悠は目も合わせずニコリともせず、軽く会釈をした後、監督の方に顔を向けて

しまった。

みんなは、天使役交代を聞かされていないようだ。


「みんな!おはよう!」

私はゴーディオンに挨拶をした。

私の声に4人が、一斉に私の方を見た。

「…」「…」「…」「…」

「え…、な、なによ…」


「え!!彩香ちゃんなの~?かわいーじゃん!!」

あ、あら、そう?うふ!


「なんでなんで!天使だ天使~~」

え?そんなぁ~。


「すっげーー、いつものさやちゃんじゃないよーーー」

…いつもの私って…どんだけ?

などと、一人一人に心のツッコミを入れて行ったが、悠だけは何も言わず、

私をジッと見ていた。


口を開けたまま見ている悠に、向かって言った。

「何、ジロジロ見てんのよ!」

「……な、なんで、お、おまえが、そんな格好してんだよ!」



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