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(15)いつの間にか、吉田プロ就職

吉田プロで仕事を始めて数日が経ち、私は音楽部やタレント部に来客があると

お茶を入れ、音楽部で雇われたのだが、タレント部のファンレターや贈り物などの

整理もしていた。

そして、事務所スタッフからの情報で出会ってから数ヶ月の麻矢の素性がわかった。


この町の地主の祖父を持ち、父親も自分で企業を起こし成功しているという。

この建物も麻矢の祖父の持ち物で、4階部分を麻矢が使い、1階・2階を父親の

大学時代の後輩である吉田が事務所として使用している。

麻矢のあの品の良さは生まれ持ってのお嬢様だったからだと納得した。


音楽部にデスクは置いてあるが、吉田プロ全体を仕切っている№2加山由佳里の

ところにコーヒーを運んだ時に言われた。

「彩香ちゃん、お昼前に『ゴーディオン』のメンバーが打ち合わせで事務所に

 集まるから後で紹介するわね」


『ゴーディオン』とは、4人組の半ビジュアル系バンドらしい。

この「半ビジュアル系」という意味が、よくわからない…。

半分ビジュアル?じゃぁ、残りの半分は…?


事務所に貼られているポスターを見る限りでは、綺麗な男が4人並んで写っていて、

なんだかみんな無愛想にこっちを睨んでいる。

せっかくのポスターなんだから、もっとニッコリ微笑むとかピースするとかすれば

いいのに…

私はポスターの前で、首をかしげた。

歌番組にはたびたび出演しているようだが、音楽に興味がない私はその手の番組は

ほとんど見たことがない。

日常でも流行り歌さえ聴かないし、わからないや…。


今のところ私の仕事内容にはタレントと直接関わることはないので、

「所属アーティストについては徐々に知っていけばいい」

と加山から言われ安心していた。



11時を過ぎるころ、一人・二人・三人とゴーディオンのメンバーらしき人たちが、

ちょこちょこっとスタッフに挨拶しては、応接室に消えて行った。

加山からゴーディオンの担当マネージャー・相楽を紹介される。

見た目、強面で背が高くがっちりとしたものすごく厳つい。

ビビリの私はビクビクしながら彼に付いて応接室に入った。


「おはよう」 相楽が声をかけると3人は寝転がっていたソファから身を起こし、

「ち~す」 などと、ものすごい軽い挨拶をしている。

なんだかなぁ~…。挨拶くらい、ちゃんとしようよ…


「ぁあ?悠はまだか…まぁいっか。みんな、こちらが先日から新しくスタッフに

 加わった櫻田彩香さんだ。あんまり迷惑かけんなよ」


ゆう?「悠」を思い出したがポスターの中にはいなかったし、名前が同じだけなの

だろうと思い、とりあえず自己紹介をした。

「櫻田彩香と申します。この業界は初めてで、ただいま勉強中です!

 何でもコキ使ってください。一生懸命頑張ります!」

そう言い、おじぎをした。


「ねーねー、彩香ちゃんっていくつぅ?」 

ドラムのキヨが馴れ馴れしく聞いた。

「アホっ、女性に歳を聞くな。失礼だぞ」 

ベースの亮がキヨに言った。

どうやら亮は紳士的素質を持ち合わせているようだ。


「あっ、28才です。三十路近し…です」 

「そうなん?見えねぇ。俺らより3,4個上なんだ。若く見えるよ彩香ちゃん!」 

「えっ、若く見える?わたし!うっわ~い」

ギターの誠の言葉に少しばかり有頂天になってしまい、両手を挙げて素直に

喜んでしまった。

みんなに笑われ、ハタッと気がついたがすでに遅い。


はぁ…まただ…おだてられるとすぐに木に登ってしまう。

新規一転、大人の女で仕事を始めようと思っていたのに…

やはり無理はしない方がいいのだろうか。



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