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(11)悠のヤツ!!

頭痛いーーーーー!


急に起き上った私は、自分の置かれている状況がわからなかった。

ベッドの中で体を起こしたまま辺りを見回した。


白いレース使いのベッドカバー。

うすいピンクに施された家具。

上を見上げると、てんがい。

『いつの間に私、お姫様になったのだろう』

そこはまさしく乙女のお部屋だった。


私が姫になるわけないじゃん…

どこだ?ここ…

・・・・・・・・・・・

頭が回らない。

長いこと考えた。


……あっ、麻矢さんの家…

昨日、ものすごく飲んじゃったんだ。

って、か、会社ーーー!

大変!

今何時?!!


二日酔いのズキンズキンの頭を押さえながら、時計を探した。

きらめくストーンでデフォルメされた置時計が目に映った。

陽ざしに当たって頭に響く眩しさ…文字盤が良く見えない。

ベッドから出て時計を手にした。

…く、くじ、9時半~~~?!

もう完璧遅刻。

午後出社にしよ…しかたがない。


部屋を出てリビングに向かうが、誰もいない。

どうしよう、麻矢さんどこだろう。

ソファの近くに行った。

昨晩散々飲み食いして散らかしていたテーブルの上には、メモ書きが一枚あるだけで、

何事もなかったように綺麗に整頓されている。


『おはよう~シメジ。麻矢さまのベッドの寝心地は如何だったかしら?

     私は夕方からお仕事なので悠のお部屋でお昼まで睡眠を取ります。

            勝手にシャワー使っていいから自由にしていってね』


爺さんのような達筆な字で書かれているメモ書きに一礼をした。

ソファの上には、バスタオルと歯ブラシが置かれていた。


自分の鞄からノートを取り出し、お礼の言葉と一度家に戻り会社に行く旨を書き

麻矢の家を後にした。

家に戻る途中で「急な腹痛でこれから病院に行き、午後出社する」などと

見え透いたうそをつき会社に連絡を入れた。



午後一で会社に着くと、私が辞表を出したことがみんなにばれていた。

いろいろ理由を聞かれたりしたが、自分のスキルアップのためと愛想笑いですり抜けた。


3個下の後輩の美奈が私のところにやってきた。

「櫻田先輩、本当に辞めるんですかぁ?」

「うん。ま~ね~」

「なんかすごいさみしいです。先輩がいなくなるの…みんなもそう思ってます」

「ん?どうして~?」 

私は書類を整理しながら受け答えをした。

「先輩自分で気づいてないかもしれないけど、人気者なんですよ?」

「あははは~初めて聞いた。ありがとう~」

人気者かどうかは知らないけど、上司も先輩も同期も後輩もみんなやさしくして

くれていた。

仕事には未練はないが、職場のみんなとお別れはやはり淋しいかなぁ。


「だって先輩、顔かわいいのに、言動とか行動おもしろいんだもん。

 私先輩のこと大好きですよ!」

言動とか行動がおもしろい…?芸人扱い…?

(かわいい!大好き!)あ~~男に言われたいです、その言葉。

後輩の女に言われるとは…。

まぁ、うれしいけどね。

とりあえず、こことはおさらばだ!


退社時間近くになり、外から戻ってきた孝志が、笑顔で近づいてきた。


「おまえも隅に置けないよなぁ。でもまぁ、オレも安心したよ。

 彩香に別れないでくれって泣きつかれたらどうしようかと思ってたけどさぁ、

 オレ以外にもちゃんと男がいるなんてな」

なんの話をしているのか、わからない。


「日曜日の午後に行くから。その時に部屋のカギも渡すよ」

「……ねぇ、男って?日曜日って?なんの話してるの?」

「昨日の夜、電話に出たヤツ彩香の新しい男だろ?その人に伝言頼んだんだけど

 まだ聞いてない?」


夕べ、孝志から電話が来たような…でも私は出なかったような…

薄い記憶をたどってみたが、男と一緒にいた記憶はない。

麻矢と二人だったはず。

「孝志、なんか勘違いしてない?私昨日は女友達の家にいてそのまま泊まったのよ。

 間違い電話でもしたんじゃないの?」

「彩香の携帯にかけたんだよ?そしたら男が出てさぁ。別にもう隠さなくてもいいって!

 とりあえず日曜に荷物取りに行くから~」


まったく意味不明な話の内容に、私の首はフクロウのごとく傾いていく。

帰り支度をし、会社のロビーから麻矢に電話を入れた。



「ええーーー!!悠さんがぁぁ?!」

麻矢から聞かされた悠の勝手な行動。

昨夜の私の記憶の中には、悠などいない。

いつの間に…

なぜか怒りが沸々とこみ上げてきた。


ロビーの高い天井を睨みつけ、しかめっ面の私に電話の向こうから麻矢が話しかけている。

「もっしも~し、ちょっと~シメジ?聞こえてるの?もしもし?」

「あっ、はいはい。聞こえてます」

「もう仕事終わったんでしょう?お店に来ない?どうせ家に帰っても

 一人淋しくご飯食べるだけなんでしょ?」


一人淋しく…その通りなので否定もできず、断る理由もなく麻矢の店の場所を聞き、

会社を後にした。




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