【ハイファンタジー(コメディー)】二人旅の追放合戦
暑い。地獄かここは。
ギルド拠点を発ってから早半日、俺達はいまだ灼熱の砂漠から抜けられずにいた。
剣士の俺でさえそろそろ体力の限界だ。
隣では魔法使いリクが地図を片手にぐったりしている。
「……なぁ、まだ着かないのか? オアシス」
「おかしいな、この辺りのはずだけど……」
おいおい、まさか迷ったのか?
このままじゃオアシスが見つかる前に干からびちまうぞ。
「ねぇこの状況、カイトのスキルで何とかならない?」
「〈時間停止〉でか? さすがに無理だろ。せいぜい発動中、陽ざしが和らぐ程度で」
「ホントに!? なら一旦休憩しようよ!」
俺の言葉にリクが急に元気を取り戻した。……まあ確かに、いい加減ここらで一息つくのも手か。
と思ったらすでにリクが動いていた。彼のスキル〈即席創造〉で砂漠の上に物体が生成される。
「はい、砂時計作ったよ。スキル発動に必要でしょ?」
「……こういうときだけ素早いのな、お前」
俺がスキルを発動し、砂時計がひっくり返る。と同時に、周囲の時間が凍結。
ちなみに〈時間停止〉発動中は、身体が多少動かせる程度で移動はできない。
つまりこのそびえ立つ砂時計の砂が落ちきるまで、俺達は砂漠のど真ん中から身動きが取れないわけで。
「……なぁ、お前が作った砂時計、デカくね?」
「たくさん砂が採れたからね。贅沢に使ってみた」
うん、そりゃあ砂漠だし、砂ならいくらでもある。
落ちきるのに丸一日以上かかる巨大砂時計が作れるほどにな。
「ってアホかおまえは! 普通に考えてもっと小さいの作れよ!」
「えぇ!? だったら先に言ってよ、せっかく作ったのに!」
はぁぁ!? なんで俺が悪いみたいな態度なんだよコイツ! 毎度毎度ロクなもん作らねぇ無能スキル持ちがよぉ!
「あーもう我慢ならねぇ! お前のような無能はパーティにいらん! 追放だ!」
「はぁ!? カイトの方が無能だろ! 追放する側は僕だ!」
「うるせぇ! お前の方が出て行け!」
「嫌だね! 出て行くのはお前だ!」
「いやお前が――」
……ん? いや待てよ?
こういうのって大抵、追放された側の方が実は有能だったりするよな?
でもって追放した側は報いを受けるわけで。
「へへーんだ! 有能な俺を追放して時間の檻に閉じ込められてやんの! ざまぁ!」
「それは僕の台詞だ! 日頃の行いが祟ったなバカめ!」
あ、コイツ手のひら返しやがった!
結局、「二人旅だからどちらが追放しようが同じ」だと気づくまで、俺達は一日中ギャーギャーと騒ぎ倒したのだった。
【お題:砂漠、時間 テーマ:実は仲良し 文字数:1000字】




