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才と来とーー愛と  作者: かや
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2. 堪え忍ぶ人


「西条クン!」


机を思い切り叩かれた音に竦み上がった西条クンこと西条忍(さいじょうしのぶ)は、大きな音で威圧を表現された為、こちらも目を瞑って顔を背けて怯みを表したかったが、一応ここは公の場。それに大袈裟な動き(オーバーリアクション)は成人を果たした女なら慎むべきだ。そう思い、肩を震わせる程度に留めて、彼女は全身を(おのの)かせた。


「何て事をしてくれたんだ!ーーで何とかなったから良いようなものを、××がーーになっていたら、どうなっていた事か!」


ここは執務室。今、忍に激怒している上官の部屋だ。

六畳の密室に二人きりで、彼女の為に配慮されたかどうかは知らないが、結果的に女性の体面を保ってくれている辺り案外、人柄は良い男性なのかもしれない。

小言が済み落ち着いたのか、忍の上官は一息吐いて、先程とは打って変わって静かに目を閉じた。


「どうしたものか…」


顔の前で両手を組み、忍の進退について悩んでいる。

上官の背後の壁には世界地図が貼ってある。書類を片付けるには打って付けの部屋で、空調も効いていて、普段なら居心地の良いはずの個室も、この重苦しい雰囲気の中では、軍服を着た身体にも圧が入り、背筋が更に伸ばされるというもの。忍は微動だに出来ない。


このままでは不味い。最悪の判断が下れば、彼女を軍隊から追い出しかねない。

忍には弟が一人いる。年の離れた弟だ。彼らの両親は既に亡く、たった一人の肉親を養わなくてはならないから、彼女は士官学校を卒業し、仕官したというのに、ここで除隊処分が下ったら意味が無い。

何とか反論したかったが、こちらは部下で、あちらが上司。パワーバランスが非常に弱い立場だ。発言権などあろうはずも無い。


Any way ! とにかく何とか弁明しなければ。

だが、何とか弁明しなけば。

光の速さで思いを逡巡させていたところに、上官から続きが再開された。


「西条少尉ーー」


両者の目が合って暫しの沈黙の後に、忍は最終通告を言い渡された。



「君、子守は出来るかね?」





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