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製本

この世界、紙は貴重品だ。

紙自体の発明はされているものの大量生産技術は確立していない。

一般的には木簡とか竹簡とかパピルス紙とか羊皮紙とか、図書館に収録されている本はだいたいそんな感じだ。

王都の学園には人皮紙の奇書があって、閲覧不可だった。そんな呪われそうな本は永久に封印しといてほしい。

あと印刷技術もまだないから、もし読みたい本があったら借りて写本屋さんにお願いするのが一般的だ。


さて、これはなんだ?

そう、貴重品の紙をふんだんに使って作られた冊子だ。


「……」

4人揃って目の前に差し出されたものを見る。私とエルザとロニーとロランスだ。その目の前には美少女がふんすふんすしてる。

「……ロランスさんはもう読めるかしら?」

「……はい。難しい文字はまだまだですが、優しく書いてくださっています……その、私にも読めるようにという配慮を感じます」

そうね。努力のあとが見られるよね。

それを手に取ってめくる。

中身は可愛らしい丸っこい文字で、イラストもふんだんに使われている。

「えへへ……友達とお泊りに行くなんてはじめてだから張り切っちゃいました」

美少女が笑う。可愛い。美少女だから可愛い。可愛いのは置いといて表紙を見る。

「たのしいりょこうのしおり」と書いてあった。

「あのね、私の護衛で学園までついてきてくれている兵士さんに聞いたんだけど、作戦のときはこういうふうに文字に書いておくことが大事なんですって。その兵士さんはまだ文字を読むことはできないんだけど、せっかく教えてもらったから、作っちゃいましたー」

可愛いかよ、美少女。

税金取るぞ、美少女税高額納税者め。

2冊目を手に取る。

「全部同じ筆跡ね」

「がんばっちゃいました!」

写本屋さんに頼まずに全部自分で書いたかぁ。これは、そこまで熱量を向けるべきところなのかなぁ。

紙という貴重品を使って、全部自分で書いた「たのしいりょこうのしおり」……とりあえず旅行から帰ってきたら家宝にしよう、これ。


美少女が旅行を楽しみにしすぎてて、ちょっとだけプレッシャーになった。




しおりをぱらぱらめくっていく。

美少女は図書館にこもったり、ロニーに聞いたり、同じクラスのアルテレサ伯爵領からきている子達に聞いたりでソウ辺境自治区について調べたらしい……っていうか、ロニー本人がいるんだからその都度聞けばよくない? っていうツッコミは……多分そのツッコミをしたら美少女が悲しそうな顔をする。絶対にしてはいけない。エルザ、ロニー、ロランスにもこの点は共有しておかなければならないね。

なお、しおりの中では「そーへんきょうじちく」と書いてあった。


「そーへんきょうじちく」には「じゅーじん」がいて、みんな犬の顔(ここで「わんわん」と鳴いている犬のイラストが入っている。美少女、意外と絵が上手い。エルザの手元のしおりを覗き込むと、ブチ犬のイラストで「わんわんわん」という書き文字だった。私のしおりは白い犬だったから当たりかもしれない。やったね)をしているらしい。

獣人の人口は5000人ほど。獣人だけの自治区ではないので人間も住んでいるが、そこまで規模は大きくないらしい。

獣人は平和的な種族で、亜人の侵攻にも避難を選んでいるらしい。

そしてアルテレサ伯爵家の庇護を受けるに至る、と。


「いじめないで」って泣いている犬のイラストが入っていた。

可愛い。


200年ほど前に一度だけアルテレサ伯爵経由で当時の国王にも謁見して、それ以来辺境自治区としての統治を認められたらしい。

当時の王様、寛容だなぁ……

以来、ソウ辺境自治区から特に出ることなく、アルテレサ伯爵家とだけ交流する謎の民族となったということだ。

税はアルテレサ伯爵家を通じて払っているらしい。じゃあ交流がないだけで文化レベルも私達と同じと思っていいだろう。

「うーん、なるほど」


「わんわん」のイラストが可愛くて頭に入ってこない。

この話の舞台になっているのはイタリアによく似た地形の架空の地域です。

男性登場人物のほとんどにはモデルとなっている人物がおり、「そのモデルとなっている人物の所属している、または所属していたチーム」の本拠地が、その登場人物の勢力範囲となります。


モデルとなっているのはあくまで外見と地域だけであり、その人物の能力や適正、チームの規模や本拠地の規模などはまったく関係ないものとします。


☆今回の登場人物のモデル

ジェルメーヌ・ペドレッティ:ヒト科

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