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一礼

私達が恐怖の一夜を過ごしていたころのことだそうである。




「セリーヌ君、疲れはないかね?」

「お気遣いいただきありがとうございます、おとっ、おっ、お……お義父様。その……鍛えておりますので」

照れがある。いい加減慣れてほしい。

お父様とベルナールお兄様とセリーヌお義姉様はシクス侯爵家にご挨拶に出かけていた。

ご挨拶というかご機嫌伺いというか援軍のお礼というか……

あと、セリーヌお義姉様のお披露目という意味もある。先日まで敵対してた勢力の要人だしね。


セリーヌお義姉様のお披露目よりアメリーお義姉様がきたほうがいいのはいいんだろうけど、さすがに妊婦に無理をさせるわけにはいかないし。


お父様達がシクス侯爵家領に到着したとき、ジャン・ヤヒア子爵は折り悪く王軍の支援を受けた賊の討伐に出ていたということでちょうど留守だった。また、パスカル・シクスの弟、ニコラ・シクスはガスティン侯爵家に睨みを効かせるために出陣をしたままだったという。

忙しいことだ……アメリーお義姉様の伝言、誰に伝えるつもりなんだろう。

腹心はいないにしても侯爵本人はいるので面会を求めたところ、すぐにオーケーの返事をもらったらしい。

シクス侯爵家ではそれなりに辺境仲良しクラブが評価されているということだろうか。


「よくきてくれた!」

パスカル・シクスは豪快に笑う。

私はまだシクス侯爵家を訪れたことはないんだけど、うちよりもはるかに都会だし、工業都市だし、人口規模も大きいし、豪勢な場所なんだろう。

「この度は援軍を出していただき……」

「あー、そんなのはいいから! 貴殿らが時間を稼いでくれたおかげでサヴィダン公爵を我が陣営に招くことができたのだ。貴殿らのおかげだ!」

どうやらそういうことだったらしい。

サヴィダン公爵としても自らが次代の王になる野望を捨て切れていなかった……しかし、今回、シクス侯爵家の同盟相手としての辺境仲良しクラブがガスティン侯爵家と対等以上に渡り合ったことで、シクス侯爵の勢力に今のうちに加わっておいたほうが得だ、という考えに至ったらしい。

そう考えると、今回のガスティン侯爵家との戦争は歴史のターニングポイントになり得る可能性があった。

シクス侯爵家、サヴィダン公爵家、アルテレサ伯爵家、ペラン子爵家、そして私達、ペドレッティ伯爵家が揃えば、現在の国王勢力である国王とメンディ大司教を合わせたものより勢力としても上だ……まぁ、南方の海賊で原作ゲーム、王冠の野望の中で王軍と同盟を結んだり、対立したりといろいろめんどくさい勢力であるサンディ・アンツが王の勢力に加わればまた王家勢力が上になってしまう程度の微妙なバランスなのだけど。

とりあえず今は一時的なものであるにしろ、王家よりもあらゆる意味で上回ったことでパスカル・シクスはご満悦なわけだ。


「……ん? なんだ?」

しばらくすると応接の間の外が騒がしくなったらしい。

「私もペドレッティ伯爵に挨拶をするのです! 旦那様だけに任せておけませんわ!」

その声が聞こえてパスカル・シクスは頭を抱えた。

「ここですわね!」

「嫁ぇ……」

応接の間の扉を開けた金髪の美女を見てパスカル・シクスは呟いた……っていうか、あなた、自分のお嫁さんを「嫁」って呼んでるの?


このパスカル・シクスの夫人は原作ゲーム、王冠の野望に登場する人物ではない。

しかしこの世界に転生して生活しているといろいろ人物の知識も得られるものだ。

名前はクリステル・シクス。パスカル・シクスの夫人であり、この国でシクス家に並ぶ名門武家ディガール侯爵家の出身である。ディガール侯爵家領は王家に隣接しており、あの舞踏会の夜の直後に王家の大軍に侵略されて、族滅されていた。

王家への恨みの深い人物である。

「伯爵閣下! このたびのガスティン侯爵との戦い、お見事でしたわ!」

クリステル夫人の言葉にお父様は深く頭を下げる。

「あなたは……ベルナール様ね? うちの旦那と一騎討ちしたらどっちが勝つのかしら、うふふ」

……そんなもんベルナールお兄様に決まってるだろう。

しかし、それはそれとしてベルナールお兄様(武力100)とパスカル・シクス(武力98)はいい勝負になるだろうなぁ。金の取れる一騎討ちだ。

「あなたは……」

クリステル夫人はセリーヌお義姉様を見て、瞬きをした。

「……あなたがジェルメーヌ様かしら?」

私と勘違いした。まぁ、セリーヌお義姉様がベルナールお兄様と結婚した一連の逸話を知らなきゃそんなもんかもしれない。

そこに私はいません。眠ってなんかいません。千の風に、千の風になってあの大きな空を吹き渡っています。

「……はい」

セリーヌお義姉様はしばらく考えて頷いた。


なんで頷いた?

この話の舞台になっているのはイタリアによく似た地形の架空の地域です。

男性登場人物のほとんどにはモデルとなっている人物がおり、「そのモデルとなっている人物の所属している、または所属していたチーム」の本拠地が、その登場人物の勢力範囲となります。


モデルとなっているのはあくまで外見と地域だけであり、その人物の能力や適正、チームの規模や本拠地の規模などはまったく関係ないものとします。


☆今回の登場人物のモデル

ジェルメーヌ・ペドレッティ:ヒト科

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― 新着の感想 ―
[一言] >なんで頷いた? 読んだ感想としてもこれが全て きっと深慮遠謀が次話以降明らかになることでしょう
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