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勇武

軍神と呼ばれる人は、それなりの理由がある。




「捕虜8人目でーす」

「はい、喜んでー」

アルノーやデニス達が次々と縛り上げた捕虜を連れてくる。

「あ、それから9人目なんですけど連れてくることができませんでした」

アルノーが申し訳なさそうに報告してくる。

「あら、逃げられちゃいました?」

「いえ、ケガが酷くて死んじゃいました」

あー、そっちかー。


狭い一本の山道でベルナールお兄様が立ち塞がっているだけでガスティン侯爵軍はまったく押し通ることができなくなっていた。

セリーヌ・ガスティンはまだきていないが、家中でもそれなりに武勇で知られている人達がこきゃっとベルナールお兄様にひねられていく。

まぁ、私はベルナールお兄様には無限の信頼を置いているから、この程度では驚かない。信頼を置いていても心配はするけど。

ベルナールお兄様に勝とうと思うのならサメでも連れてくればいい。サメだったらきっとベルナールお兄様もピンチに陥ることだろう。サメ強い。台風シーズンには空も飛ぶし。


「なかなかやるじゃないか! この狭い山道に仁王立ちとは恐れ入る! しかし、このドラソー様がきたからには好きなようにはさせんぞ!」

ニヤニヤと笑う歴戦の戦士っぽい人が次のチャレンジャーのようだ。大きな槍を持っている力自慢さんっぽい。

「いざ! ……あ、あれ?」

狭い山道である。大きな槍なんて自由に振り回すスペースなどないのだ。当たり前である。

「ちょっと待て。今、突けるように持ち替えるからあひぃん!」

ベルナールお兄様の蹴りでドラソー様は山道を転がり落ちていった。

「……あ、しまった。捕虜にできたな、さっきの」

その通りです、ベルナールお兄様。もう少し頑張りましょう。


「そういえばココ将軍はどこにいきました?」

側にいたデニスに声をかける。こういうイベントが好きそうな人だが、先ほどから姿を見ていなかった。

「はい。他の道はないか、そこからガスティン軍がくることはないか、10人ほどを率いて確認に出ておられます」

「あぁ、そうなのですね」

そう言おうとしたときだった。

「伝令です! ココ将軍が敵集団と戦闘になり重傷を負われました!」

うっ……


伝令に話を聞くと獣道のチェックをしていたココ将軍が、同じく砦への他の道を探していたほぼ同数の集団と会敵し、なんとか撃退したもののココ将軍は大ケガを負ったということだった。

その報告を受けている最中にココ将軍が板に乗せられて砦に帰ってくる。泥と血に塗れた姿だった……こんなになるまでこの砦を守るために死力を尽くしてくれたと思うと胸が熱くなる。

「将軍、聞こえますか?」

「ジェルメーヌ様、ですな? 目に汗が入ってよく見えません」

目に入っているのは汗じゃなくて泥や血だ。本人もそれはわかっているはずである。冗談めかして場を明るくしてくれるいい武将だよ、この人は。

でもこんな傷口に泥が入ったままじゃ手当てもできないだろう……

「あら、それはいけませんね。では汗を洗い流してしまいましょう……でもここは山の砦ですから水は貴重品です。代わりにワインで洗ってあげますね」

デニスに指示してたっぷりと用意してあるワインを一本持ってこさせる。

「はい、どうぞー」

ココ将軍の頭からワインをたっぷりかけ、泥を洗い流すと、彼は嬉しそうに笑った。

「ひどいですな、ジェルメーヌ様。せっかくだからかけるよりも飲ませてくださいよ」

「ケガに障るといけませんから、少しだけですよ」

ココ将軍の肩を支えてもらい、一口だけ口に含ませるとココ将軍は満足そうに笑いながら気を失った。

「……あのケガですけど、将軍は命は助かるかもしれませんね」

運ばれていくココ将軍を見ながら呟く。


一夢庵風流記という、マンガの花の慶次の原作になった小説に中で似たようなシーンがあった。

いくさ人は運が強いものだ。ココ将軍もきっと回復してくれると信じたい。




さて、私は一夢庵風流記と似たようなシーンであったにも関わらず同じ行動をしなかった。


だって前田慶次郎は……その、えっと……おしっこで泥を洗い流してたし……

さすがに貴族令嬢で淑女の私には、それはできないし……

この話の舞台になっているのはイタリアによく似た地形の架空の地域です。

男性登場人物のほとんどにはモデルとなっている人物がおり、「そのモデルとなっている人物の所属している、または所属していたチーム」の本拠地が、その登場人物の勢力範囲となります。


モデルとなっているのはあくまで外見と地域だけであり、その人物の能力や適正、チームの規模や本拠地の規模などはまったく関係ないものとします。


☆今回の登場人物のモデル

ジェルメーヌ・ペドレッティ:ヒト科

ドラソー様:マウロ・カモラネージ

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