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兵力

「……というような感じの場所を戦場にしたいんですが、よさそうな場所はあるでしょうか?」

「このあたりはどうだ?」

というわけで私はベルナールお兄様の指定した場所を地図で見ていた。

うん、よさそうだ。マルセル川は深く流れも早いため橋で渡らなければならない。

先人が作り上げた頑丈な石橋と、その近所にある砦……うん、これは都合がいい。

ベルナールお兄様、いいとこ知ってるなー。


ペラン子爵は自分が疑われたことの責任を取るという名目で、子爵本人が700人の兵を率いて駆けつけてくれるそうだ。

お父様がそれを聞いて「やっぱり私が出陣してもいいんじゃないかな?」とか和ませるジョークを言ってくれて大変おもしろかった。伯爵ジョークおもしろい。

アルテレサ伯爵も800人の兵を出してくれている。

そしてシュヴァリエから200人とペドレッティ伯爵家から1000人。これが精一杯だ。

対するガスティン侯爵家は4000人が出陣したという情報が入ってきていた。


ティボー・ガスティンはなかなかやると思う。


織田信長という人物がいる。

彼が天下に近づくことができた要因はいろいろあるが、相手よりも少ない兵力で戦わなかったことは要因の一つとしてあげられていいと思う。

凡人であれば……桶狭間で、あれだけ劇的な人数差を逆転させる成功体験をしてしまったら、それに引きずられることはないだろうか。

「自分はあの桶狭間で勝利したのだから、少数の兵力でも勝つことができる」と思わないだろうか。

「いざとなれば少数でも勝利することができる」と思わないだろうか。

信長は、そういったことをまったく思わなかった。だからすごい。

信長は不敗の指揮官ではなかったけれど、あれだけ鮮烈な成功体験をしながら、その生涯で相手よりも少ない動員数だったのは桶狭間と本能寺くらいのものだろう。

数は力だということをわかっていたということだ。自分がどんな経験をしようとも兵力を集めるという基本からはぶれなかったということだ。

ガンダムに12機のリックドムをぶつけたコンスコンさんは間違ってないんだ! 戦争は数と言い切ったドズルさんは間違ってないんだ!


ティボー・ガスティンは北の田舎者を見下さなかった。

見下さず、数で優位に立つことができるだけの兵力を送り込んできた。

つまり強敵であるということだ。


以前、ムウィ渓谷で見た、ガスティン軍の主力は軽歩兵と軽騎兵だった。

早さで撹乱する方法を取るのだろう。

騎馬の速度が勝負を決めた戦争は数多い。

ハンニバル・バルカさんのカンネの戦いなんてのはその最たるものだろう。

兵力が強さであるのと同じくらい、早さも強さだ。


まずは騎兵の早さを止めなければならない。

そのためには……

「……ベルナールお兄様、私に200人の兵とシュヴァリエのピルムスを貸していただけないですか?」

「お前が……お前が指揮をするのか?」

私だってしたいわけじゃない。だけど……

「ベルナールお兄様はペドレッティの軍神です。私が考えていることを実行しようと思ったら少数の別働隊でガスティン軍の騎兵を釣る必要があるのですけど……ベルナールお兄様はあまりにも強すぎて釣られてくれないような気がします。少なくとも私が相手の指揮官なら『ベルナール・ペドレッティが前線に少数でいるとか、絶対罠じゃん』って思います」

「そのためにお前が率いるというのか……」

ベルナールお兄様は難しい顔をする。

「はい。こんな作戦を考えています」




「なるほど。話はわかった。確かにお前が指揮をとったほうがいいのかもしれん。さっそくアドリアンに兵站の仕事ができたな」

私の話を聞いて、ベルナールお兄様は顎を撫でながら、とりあえず理解してくれた。

軍神の理解を得るなんて幸せなことだ。軍神の理解が得られる作戦なら、失敗してもそこまで悪いことにはならないだろう。

「しかし、俺が後退しろと言ったら絶対に逃げるように」

「わかりましたわ」


「あと、どっちにしてもお前が危険な目に遭う作戦であることは変わりないから1年間禁酒な」

な、なんだ、と……?

この話の舞台になっているのはイタリアによく似た地形の架空の地域です。

男性登場人物のほとんどにはモデルとなっている人物がおり、「そのモデルとなっている人物の所属している、または所属していたチーム」の本拠地が、その登場人物の勢力範囲となります。


モデルとなっているのはあくまで外見と地域だけであり、その人物の能力や適正、チームの規模や本拠地の規模などはまったく関係ないものとします。


☆今回の登場人物のモデル

ジェルメーヌ・ペドレッティ:ヒト科

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