夢枕
「じゃあ、その本人に一度会ってみましょうか」
「会いに行く?」
「いこう」
「いこう」
そういうことになって、昼休憩に彼女のクラスに行くことになった。
年若い娘さんが夢枕獏構文で移動するのは、私は彼女らのこれからが少し心配だ。
私達よりも1歳年齢が下のクラスの前まできて、少し中を覗き込む。
「あー」
すぐわかった。
誰からも話しかけられず、彼女は前を見て、座っていた。
うーん、気高い。
彼女は誇り高い人物なのだろう。強い意志が感じられた。
「かっこいいわ……」
私の横でエルザが呟く。
「あっ、ナタリー様!」
私達が教室内を観察していると、1人の女子生徒がこちらに気づいた。ナタリー? ナタリーって誰だ? ……あぁ、美少女のことか。忘れてた。
女子生徒が声を上げるとクラスの注目がこちらに集まり、ロランス・カンデラも一瞬こちらを向いて、すぐに視線を前に戻した。
「ごきげんよう。あ、ジェルメーヌ様、エルザ様、紹介しますね。この子は……」
どうやらペラン子爵家領の子供らしい。はいはい、どうぞよろしくー。
「先輩方と会えて光栄です」
学園内なんだから、そりゃ会う機会もあるでしょうよ。まぁ、ちょうどいい。
「ちょっとこっちにきてくれるかしら」
「え?」
とりあえず女子生徒を拉致して、目立たなさそうな物陰に連れ込む。エッチなことをするつもりはないから安心してほしい。
「えっ? えっ? な、なんですか?」
挙動不審になる女子生徒に……いや、ここは私じゃなくて美少女に話を聞いてもらうべきだろう。さっきもすぐに見つけてもらえたところから領民と美少女の関係は良好なようだし。
「え、えっとね、悪いことを聞いてしまって。あなたが悪いわけではないのだけど、とても悪いことで、それが本当だったら私も怒っちゃうのだけど、あなたを怒るわけじゃないし、怒りたいわけでもなくて、クラスの中で悪いことをしてる子がいるって聞いて、あなたのことじゃないんだけど」
下手か。下手かよ、美少女。はい、尋問者交代。
「答えなさい!」
「な、なにをですか?」
……エルザは私の方を見た。いや、聞くべきことを聞きなさいよ。
エルザも下手かよ。仕方がない。
「……この学園は身分に関係なく、学ぶ姿勢こそがすべてだと思っているわ。上下もない。でもあなた達のクラスで最近、上下ができていることを聞いてしまったの。私はそれを正さなければならないと思っているわ。あなたを責めるつもりはないのだけど、状況を教えてほしいの」
「あっ」
女子生徒は一言漏らして俯いた。うん。私は微笑む。
「偉い」
その態度に私は声をかける。女子生徒は意外そうに顔を上げた。
「あなたは教室でなにがあったかを知っている。そしてそれを恥ずかしいと思っていたから俯いた。恥を知るということはとても勇気のいること。あなたはとても立派ね」
「……うぅ」
泣きそうな女子生徒を美少女が抱きしめる。
「ジェルメーヌ様がおっしゃったとおり。あなたはとても勇気のある子よ……あなたの教室でなにがあったのか、教えてちょうだい?」
「ナタリー様ぁ」
女子生徒は泣き出してしまった。
それはそれとしてナタリーって誰だっけ? ナタリー? ……あぁ、美少女か。
「いい話ねぇ」
なんでエルザも泣いてんのよ。いい話か? ほんとぉ?
女子生徒の話をまとめると、最初はアルテレサ伯爵領からきている子達がカンデラ将軍の娘を中傷したらしい。
カンデラ将軍はそれくらいアルテレサ伯爵にとって重要な人物だったし、領民達にとっても頼りになる人物だったようだ。
だからこそ許せなかったのだろう。カンデラという名前だけで彼女はいじめられていた。
ここまではわかる。
いじめは悪いことであるという前提の上で、気持ちだけはわかるのだ。
「でも彼女は……その、話し方が気持ち悪くて」
はて、話し方が気持ち悪いとは?
実際に彼女に話を聞いてみなければならないだろう。
「ロランス・カンデラさんね」
教室の中で私とエルザと美少女で彼女を囲む。彼女は不機嫌そうに勝ち気そうに私達を睨み付ける。
「ちょっと話がしたいのだけど……そうね、ちょっと図書館まで一緒に来てもらえないかしら」
彼女は本当は断りたいのだろうが、私達が上級生だからか、少し考えて立ち上がった。
「あかりまひた」
……えっ? 呂律が回ってない……?
この話の舞台になっているのはイタリアによく似た地形の架空の地域です。
男性登場人物のほとんどにはモデルとなっている人物がおり、「そのモデルとなっている人物の所属している、または所属していたチーム」の本拠地が、その登場人物の勢力範囲となります。
モデルとなっているのはあくまで外見と地域だけであり、その人物の能力や適正、チームの規模や本拠地の規模などはまったく関係ないものとします。
☆今回の登場人物のモデル
ジェルメーヌ・ペドレッティ:ヒト科