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学徒

ファブリスは残念ながら余生を牢獄で暮らしてもらうことになった。

ロタン教授がいうには強いられた信条の魔法の犠牲者である『ユニオン』はあらゆる手段をとって、私を殺しにくるということだ。

ペドレッティ伯爵家領から追放したとしても、いずれはなんらかの手段で帰ってきて……素手では私を殺せないことを学習した彼によって私は再度襲われることになるのだろう。

申し訳ないとは思うけど、3ヶ月……彼の命が尽きるまでの間、牢獄の中で監視する以外に方法がなかった。

地獄魔法じゃん、これ。地獄属性じゃん、これ。

しかも本人には言えないしねぇ、これ。『ユニオン』である自覚もないわけだから、私を殺すとか、強いられた信条の魔法とか、彼にとってはおとぎ話と同じことだ。

牢獄の中から呟かれる彼の呪詛は……なんというか、非常に健康に悪そうだった。




1週間ぶりに登校する。

1週間ぶりとか言いながら、私は開校の日のパーティーにしか出席していないので、実質初登校である。なお、おでこの傷痕を隠すために髪型を変えてみた。前髪を下ろしただけだけど。

「あっ、ジェルメーあぁん」

「ジェルメーヌ! 大丈夫だったの!?」

最初に声をかけてくれたナタリーを押し除けて、エルザが私を抱きしめてきた。

なんかナタリーが床でびくっびくって痙攣してる。美少女の痙攣はじめて見たわ。

「王家の暗殺者に狙われてるって聞いたけど、ちゃんと生きてる!?」

あぁ……王の暗殺者ってところまで話が広がっちゃってるか。まぁ、勢力図をちょっと思い浮かべればそれくらいしかないだろうけど。

「王家のイケメン暗殺者が『君を殺すくらいなら僕が死ぬよ!』、『だ、ダメよ、暗殺者! あなたのためなら死ねるわ』って!」

……お、おぉ。必要か、イケメン要素? あと、なんで暗殺者のことを暗殺者と呼んでるんだ? せめて名前で呼ぼうよ。

「イケメン……ではなかったわね」

「え、ジェルメーヌってブサメン好きなの?」

ちゃうわーい。なんで私の嗜好の話になってんだ。

「まぁ、暗殺の件は……大丈夫よ。私、死んでからも化けて出られるほど器用じゃないから命は大事にしないとね……それよりも、ナタリーの方が死にそうよ」

美少女はまだ床でビクビクしてた。顔色が真っ白だ。

「きゃああああああああああ! ナタリー、どうしたの!?」

……なんだこいつ。いい性格してるな。エルザがやっと私を解放して、今度はナタリーをがっくんがっくんやりはじめた……あぁ、そんなに揺らしたら美少女からなにか出ちゃう。出ちゃうよぉ。

「あ、あの……ジェルメーヌ様」

パーティーでロタン教授に紹介された少女が恐る恐るといった感じで私を見つめてきた。

「えっと……マリオンだったわね? オーギュスト村の」

「お、覚えていてくださったんですか!」

そりゃ覚えてるわ。学園から卒業したらスカウトしようと思ってるのに。魔力のある人間は大事。

「あの、村のみんなに領主様の娘様が襲われたって話をしたら今度、お見舞いにワインを送りたいって……受け取ってもらえますか?」

「あら、嬉しいわ!」

主にお父様の治世が認められているのが嬉しい。だからお父様のついでに私にもよくしてくれるんだし。お父様が認められるのは純粋に嬉しい。

あとうちの呑兵衛どもは普通に喜ぶと思う。私がもらうもんだぞ……


「と、いうわけでね。まだこのクラスの級長が決まっていないの」

どういうわけだ……

やっと落ち着いたエルザと美少女に囲まれて、エルザが口を開いた。マリオンや他の級友はちょっと離れたところから話を伺っている。

「私が立候補してもよかったけど、やっぱり学園創設に貢献したあなたが級長になるべきだって思うの」

少し考える。

んー……いやぁ、無理だなぁ。

「そこまで評価してもらえるのは嬉しいけど、今、微力ながらペドレッティ家のお仕事も手伝っているから級長ができるような時間が足りないわ。むしろさっきのを見ててエルザ様が級長にふさわしいと思うわよ」

なんだかんだで牽引力は大事。それに美少女が床に倒れたときに助け起こしてたしね……自分でやったことではあったけど。本来は優しい子なんだと思う。


「えー? えへへー」

エルザは嬉しそうに笑った。可愛いかよ。

この話の舞台になっているのはイタリアによく似た地形の架空の地域です。

男性登場人物のほとんどにはモデルとなっている人物がおり、「そのモデルとなっている人物の所属している、または所属していたチーム」の本拠地が、その登場人物の勢力範囲となります。


モデルとなっているのはあくまで外見と地域だけであり、その人物の能力や適正、チームの規模や本拠地の規模などはまったく関係ないものとします。


☆今回の登場人物のモデル

ジェルメーヌ・ペドレッティ:ヒト科

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