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走狗

「私も書物でしか知らない魔法でした」

ロタン教授が口を開く。

部屋の中はロタン教授だけの声が響き、私は思っていた……


……お父様呼ばずに話を進めちゃってもよかったのかなぁ。


まいっか。


「この魔法は強いられた信条の魔法と呼ばれている、非常に邪悪な魔法でございます」

強いられた信条……

名前の響きが嫌な雰囲気だ。

「魔法は役に立つものだけでなく、人を傷つける目的のものも数多くございますが、その中でも最も卑劣な魔法でしょう。この魔法にかけられた人間は術者の手先……『ユニオン』となるのです」

操られてしまうということだろうか。

ロタン教授の口は非常に重い。この魔法のことは口にするだけでも汚らわしいと思っているのかもしれない。

「『ユニオン』を操るだけではありません」

静まりかえった室内にロタン教授の重い声だけが響く。

「例えば、ベルナール様が馬を下りた後、当然に馬の世話をするように、ユーリ様がそれを見て、当然に騎士の勲を詩に歌い上げるように、ジェルメーヌ様がそれを見て、当然に『まーたやってる』という顔をするように……強いられた信条の魔法の犠牲者である『ユニオン』は、自分の役割として、己の知識と力量を用い、当然のごとく標的を殺すのです。そしてそれを忘れてしまう」

……あー、だから現行犯であるにもかかわらず彼はそれを覚えていないのか。

「なんておぞましい……」

アメリーお義姉様が両手で口元を覆い呟く。私の年収低すぎポーズだよ、それ。

「ということは、あいつをいくら尋問しても無駄ということか?」

無実ではないにせよ、自分の知らないことで拷問をされたファブリスかわいそう。

「……はい。しかも『ユニオン』にされたものにとっては、もし標的を仕留めたとしても魔法から解放されることはありません。それは『ユニオン』にとっても呪いなのです。『ユニオン』にされたものは次第に体が蝕まれ、早ければ半月、長くても3ヶ月のうちに命を落とします」

地獄かよ。さすがにファブリスかわいそうすぎる。だからといって牢獄から出したら私が狙われちゃうわけでしょう? ……地獄かよ。

「例えば彼は今、牢獄に入っております。ジェルメーヌ様と面と向かっても彼が豹変することはないでしょう。しかし、もしジェルメーヌ様が彼の手の届く範囲に近づいたら、その瞬間、彼はあなたに襲いかかるでしょう」

己の知識と力量っていうのはそういうことかぁ。

「この魔法は私にも使うことはできません。使うことができるのは余程の魔力を持ったもののみ……」


なるほどね。

メンディ大司教、魔力100。ゲーム内魔力値ナンバー1。余程の魔力ですねぇ。


「しかし……なぜ素手だったのだろう。そんなことが起きてほしいわけじゃないが、あいつがナイフでも持っていたらジェルメーヌは助からなかったかもしれない」

ベルナールお兄様が呟く。

「推測でよければ」

私が指を立てると、ベルナールお兄様がこっちを向いた。

「メンディ大司教が『いつでもこんなことができるんだぞぉ』って隠し芸を見せつけて、私たちを牽制しようとしているという可能性」

ベルナールお兄様が呆れたような顔をする。

「なんの意味があるんだ、それ」

「……王家から離脱するときに『自分はこんなにも役に立つ』とアピールできます」

私の言葉にみんながはっとした顔をした。

「大司教が王家勢力からの離脱を考えている、だと……?」

「別に大司教にとって自分が王になるという野心がなければ、教団内での地位だけを考えているのなら、誰が国王になってもいいわけでしょう? むしろ『自分が寝返ったことにより王を打倒できた』なんていう実績ができれば権力は今以上に大きく保つことができます……まぁ、わかんないですけどね」

ベルナールお兄様は難しい顔をした。

「王家から暗殺の要請を受けて『暗殺を試みたんですけど無理でしたぁー』と言い張りながら、シクス侯爵家に対して『やろうと思えばやれたけど、やらなかったんですよぉー』って媚を売ることもできますよね。両方にいい顔を見せられる……まぁ、どっちからもお見通しでしょうけど」

ペドレッティ伯爵家がシクス侯爵家に近いにはすでに国内で周知の事実だ。私自身は要人でもなんでもないけど、その家族を「暗殺しなかった」というのはある程度の意味はあるのかもしれない。

ベルナールお兄様は天を仰ぎながら大きく息をつく。

「……大司教は寝返りを考えている、という推測なんだな?」

はぁい。だってメンディ、ゲーム内のシナリオ3で実際独立してるもん。

この話の舞台になっているのはイタリアによく似た地形の架空の地域です。

男性登場人物のほとんどにはモデルとなっている人物がおり、「そのモデルとなっている人物の所属している、または所属していたチーム」の本拠地が、その登場人物の勢力範囲となります。


モデルとなっているのはあくまで外見と地域だけであり、その人物の能力や適正、チームの規模や本拠地の規模などはまったく関係ないものとします。


☆今回の登場人物のモデル

ジェルメーヌ・ペドレッティ:ヒト科

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