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擬態

ベルナールお兄様の護衛が5人。

部隊長のアルノーは経験豊富そうなベテラン。

デニスは副隊長ポジションのようだ。がっちりとした体型のベテラン。

ヨアンはテキパキと指示を出してくれたベテラン。

ローランも余計な質問をせず指示に従って助けてくれたベテラン……お兄様、ベテラン好き?

フレデリックはそんなベテラン揃いの中で唯一の若手といえる年齢で、唯一の魔法使いだ。

この世界、魔法があるとは言ってもやはり適性のある人間は少数らしい。数値でいえば魔力30が魔法を使えるラインであり、それを越えない人がほとんどであるらしいのだ。私も多分適正がないからなぁ。

王都に連れてきていた私付きのメイドのルネ。

そして私達2人の兄妹を加えた8人で脱出するわけだ。


恐らく王都の門には検問がお兄様の予想どおりはられているはずだ。

しかし閉門して、通行が完全にできなくなっているかといえば、そこまではされていないと読んでいた。

なぜならメンディ大司教が本拠地とするジェルミ教の総本山は王都から北方の港町、経済都市アジャクであり、アジャクはガスティン侯爵家の所領と隣接している。

王家の勢力圏の、しかも経済的な要地を守るためにある程度の人の移動は必要なはずだ。


門は閉まっていない。移動は不可能ではない。


それが私の読みだった。




え? もし通行が完全に不可能だったら?


そのときは……武力100をけしかけて強行突破すればいいんじゃん?




というわけで私の作戦は修道服を着て突破、だった。


普通に考えて王都の検問であれば国王の指揮下にある軍が受け持つだろう。神聖騎士団がそこに加わるというのはちょっと考えづらい。

だったらジェルミ教関係者の顔がすべて一致するわけではないはずだ。

王軍にとっても現行で国王の勢力として数えられるメンディ大司教の、その忠実な僕である修道士は止めづらいはずだった。

まぁ、現行で国王配下といってもすぐ裏切るんだけど。


ちなみにお金以外は全部置いていくつもりだった。

万が一にも私達がペドレッティ伯爵家の人間であることがばれる資料や家紋などが見つかっては目も当てられない。

しかしそこはフレデリックが大半のものを物質瞬間移動の魔法で先に領土に送ってくれた。

便利だ……

でもこれで人間を転移させることはできないらしい。できたら戦の形が変わっちゃうしね……

あと、重いものを敵の頭上に送って圧死させるとかもできないらしい。いろいろ制約があるんだなぁ……




検問所が見えた。




「アジャクへいくのですな?」

王軍の下っ端兵士がこちらに聞いてくる。

お兄様は目立つ人なので、この集団のリーダーはアルノーということにしてある。年齢的にもそれがいい。

「わかりました。大司教猊下によろしくお伝えください」

やった!

「……いや、お待ち下さい」

やってない!

「そこにでかいのがいるな……確かお尋ね者のベルナールも身長が高かったはずだな」

あっ、そこからバレるの……

「もうじきお尋ね者の顔を知っているものがきます。今しばらくお待ち下さい」

どうしよう。どうしよう……お兄様を見る。目があった。

アイコンタクト……


いけますか? オッケー!


「きぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!」

私は渾身の力を込めてお兄様にビンタした。


すかっ!

届いてない! 背ぇ高ぇな、お兄様!


勢いでお兄様を睨み付ける。

お兄様は仕方なく腰を屈めてくれた。


テイク2!

ばちぃん!

いい感じにビンタヒット! お兄様はびくともしていない。むしろ周りの他のみんなが動揺してる。

ルネ、そんな目で見ないで。


「お前が! お前のようなでくの坊が! お前なんかがいるせいでお尋ね者などと間違われ、大司教猊下の名前にも泥を塗るのだ! なぜお前などのために時間を取られなければならないのだ! 詫びよ! 敬愛する大司教猊下に命をもって詫びよ!」

自分で髪を掻き毟る。おもむろに検問をしていた兵士の前まで歩いて行き、手を出した。

「なっ、なんですかぁ?」

なんで涙目になってんの、この人。

「剣を貸してください」

「へっ?」

「剣を貸してください。このでくの坊の膝から下を切り落とします。そうすれば身長も妥当なものとなり、お尋ね者などと不名誉な誤解を受けることもなくなりましょう……さぁ、剣をお貸しください」

あからさまに動揺する兵士。


実際、私だってそんなことをするつもりはなくて、渡してもらった剣をお兄様にパスして、お兄様に武力100パンチをしてもらうつもりなのだが。

「そっ、そこまでしないでいいですぅ……通っていいですぅ」

あ、そう? 悪いわねー。

8人で無事検問所突破。通りながら兵士に見せつけるようにお兄様のお尻を蹴ったり。


オペレーション安宅である。勧進帳は読まなくてよかったみたい。




これで死地は脱せた、と思う。


お兄様に土下座しなければ。あとルネと護衛さん達の私を見る目が、その……

この話の舞台になっているのはイタリアによく似た地形の架空の地域です。

男性登場人物のほとんどにはモデルとなっている人物がおり、「そのモデルとなっている人物の所属している、または所属していたチーム」の本拠地が、その登場人物の勢力範囲となります。


モデルとなっているのはあくまで外見と地域だけであり、その人物の能力や適正、チームの規模や本拠地の規模などはまったく関係ないものとします。


☆今回の登場人物のモデル

ジェルメーヌ・ペドレッティ:ヒト科

アルノー:デメトリオ・アルベルティーニ

デニス:マッシモ・アンブロジーニ

ヨアン:クリスティアン・ブロッキ

ローラン:マッシモ・オッド

フレデリック:ダヴィデ・カラブリア

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