鉱石
結論から言おう。
金が採掘された。
まぁ、私は知っていたんだけどね、女神パルミライベント。
原作ゲーム、王冠の野望において季節ごとにランダム発生するこのイベントでは、女神が指差したところを採掘することによって大量の資金がゲットできる。
ゲーム内でなにがゲットできるのかまでは言及されていないが、近くに温泉地があるということだし、なんらかの鉱石なのだろうと想像していた。温泉が出てきても観光資源になり得ても、即資金になるようなものではないしね。即資金になるものといえば、なにかの鉱石だろうと思っていたのだ。
これは本当にありがたいことだった。
原作ゲームにおけるペドレッティ伯爵家の力は決して強くはない。武将の人数がそもそも少なすぎるから内政ができない。内政ができないから国力が上がらない。国力が上がらないからすぐに滅ぼされる。
ペドレッティ伯爵家をプレイするときに一般的によくいわれている攻略法があった。
女神パルミラが早くきてくれるように祈れ。
もう本当にそれしかない不毛の地だったのだ。
そして、今、ペドレッティ家は生き残る道を見出した。
温泉の近くに埋まってる鉱石といえばいろいろあるが、その中でも金が一番有名だろう。
抽出方法によって含有量が変わってくるらしい。影武者徳川家康で大久保長安氏がボロ儲けしてた。
ただ、私はただの一般令嬢であり、前世もただの一般OLなので「アマルガン法」とかいわれても名前は知っててもやり方とかはよくわからない。水銀をどうにかするんだっけ、くらいの認識しかない。んなもん知識のない人間が扱ったら中毒になってしまうわ。
採掘とかその辺りのことはこの世界の専門家に任せよう。
というわけで昨日は掘って、金を見つけて、村人総出で大喜びして、ユーリお兄様の奢りで飲みまくった。
頭痛ぁい……
「……おはよぉございまぁす」
「おはよう、ジェルメーヌ!」
なんで元気なんだよ、ユーリお兄様……いつもよりさらにご機嫌そうでにっこにっこ笑っている。なにかいいことあったんかな。酒か。酒飲めたからご機嫌なのか。
村長とその家族はいない。アルノー達は護衛という立場上、飲んでいなかった。
……飲んだ中での生き残りはユーリお兄様だけか。あぁ、太陽が黄色い。
きょろきょろ見渡す。
「アメリーお義姉様は?」
「まだ寝てるみたいだね。起こしにいってくれるかい?」
あぁ、アメリーお義姉様は私よりもお酒に弱いもんね。仕方ないね。しかし大丈夫かね、アメリーお義姉様。
村長の家は広い。
恐らく客人を迎え入れることがよくあるのだろう。
それこそ他の村の村長がうちにくるときの中継地としてよく使われているのかもしれない。だから客室も複数の数が用意されていた。
階段を登って、2階のアメリーお義姉様の客室の前に行く。
「アメリーお義姉様ー、ジェルメーヌです。大丈夫ですかー?」
……
返事がない。
まだ寝てるのだろうか。
……いや、返事はないがなにか変な声がする。
なにか、苦しそうな……えっ、ちょっと待って。アメリーお義姉様大丈夫?
「大丈夫ですか、アメリーお義姉様!」
激しくノックする。
「うぅ……」
今度ははっきり聞こえた。部屋の中から苦しそうな呻き声が聞こえる。
「入りますよ! 入りますからね!」
大事な家族の緊急事態である。私は意を決してドアを開ける。ドアには鍵はかかっておらず、簡単にドアノブが回り……
部屋の中ではアメリーお義姉様がゴミ箱に顔を突っ込んでケロケロやってた。
飲みすぎかよ。
「大丈夫ですか、アメリーお義姉様……」
大事がなかったことの安堵感と……まぁ、いろいろな感情でへたり込みながらアメリーお義姉様の背中をさする。
トイレまで間に合わなかったんやなー。しゃあないよ、しゃあない。
「うぅ、ごめんなさいね、ジェルメーヌ様……」
苦しそうな顔でアメリーお義姉様が謝る。
いや、いいんですけどね。
「なにか、酔い覚ましのお薬のようなものをもらってきましょうか?」
私の言葉にアメリーお義姉様は首を振った。ゆうたって結構苦しそうよ、あなた?
「昨晩、旦那様にはお伝えしたのですけどね……」
アメリーお義姉様は苦しそうに汗をかきながら微笑む。
「子供ができたみたいなんです」
はい? はい? ……はい?
この話の舞台になっているのはイタリアによく似た地形の架空の地域です。
男性登場人物のほとんどにはモデルとなっている人物がおり、「そのモデルとなっている人物の所属している、または所属していたチーム」の本拠地が、その登場人物の勢力範囲となります。
モデルとなっているのはあくまで外見と地域だけであり、その人物の能力や適正、チームの規模や本拠地の規模などはまったく関係ないものとします。
☆今回の登場人物のモデル
ジェルメーヌ・ペドレッティ:ヒト科




