農村
「ようこそおいでくださいました、ユーリ様、アメリー様、ジェルメーヌ様」
ルノワ村に到着すると村長の熱烈な歓迎を受けた。そのまま恐縮する村長を馬車に招き入れて、また馬車を走らせる。
村の中に入ると、馬車の家紋を見た作業をしている村人さんが立ち上がって頭を下げてくれる。
こういうのはお父様の日ごろの為政があってこそであり、本当に素晴らしい政治家だと思う。
ゆうて、平時に必要な能力と戦時下に必要な能力はまったく違うものだから、ゲーム、王冠の野望内では能力値トップクラスとはいえないんだけど。
それでも素晴らしい父親であり政治家だと誇ることができる。
さて……
「なんで私はここにいるんですか」
私の言葉に顔を見合わせるお2人。
「なんでって……」
「この村にくるべきとおっしゃったのはジェルメーヌ様でしょう?」
そうだけどっ! そうだけどさっ!
私はユーリお兄様、アメリーお義姉様と一緒に馬車に乗っていた。馬車の外にはいつも護衛してくれるアルノー達。
私はユーリお兄様とアメリーお義姉様に旅行してイチャコラしてもらおうと思ったんだけどなぁ。
なんで私もついてくることになってるんだろう。
まぁ、いいか。私がちゃちゃっと仕事を終わらせて、その間に2人にいちゃついてもらったら……いや、見ないふりするのもストレス溜まるな。やっぱやだな。なんで私、同行してんだ。
ユーリお兄様も伝説知ってるんだから働いてくれればいいのに。
「この村はなにか特産物はあるのですか?」
「麦を作っておりますが、それ以外に特産といえるものは……谷を越えたオーギュスト村でブドウが作られているので、うちの村でも育てようとしてるものがちらほら出てきております」
特に特徴のない村ということだろうか。さっきから村人さんの姿を見ているが、特に高価な身なりをしているわけでもないが、特に貧しいということもなさそう。普通。
しかし、ブドウ……ワインか。そのオーギュスト村がうちの呑兵衛達を育てたのか。
「まだ確定したわけではないのでわかりませんが、今、この村に新しい『なにか』が見つかったとして、農業からそちらに転換することは可能ですか? ちなみに、その『なにか』はうまくすれば麦よりもブドウよりもはるかに儲かるものとします」
村長はそんなことは今まで考えたこともなかったのだろう、目を瞬かせる。
「時間をかけて説明すれば可能だとは思いますが、やはり先祖代々の農民ですのですぐにというのは難しいと思います」
「ご立派です。村人の1人1人がご自分の仕事に誇りを持っていらっしゃるということですもの」
それにこの村長も立派だ。さっきのは即答できる類の質問ではないもんね。
「いい村だね」
窓を開けて、冬の冷たい風を浴びていたユーリお兄様が呟く。
「秋に来たかったな。この辺り全体が麦の実りで黄金に染まる景色を見てみたかった」
ユーリお兄様の言葉に村長が照れたように笑った。可愛い。
まぁ、麦じゃなく金に染めてやるんだけどねー、げへへ。
村長の家に通される。
もちろんうちの館ほど大きくも豪華でもなく、村長は「汚い家です」とひたすら恐縮していたけど、私達を迎えるために丁寧に掃除とかした感じで、むしろこっちが申し訳ない。なんだかんだで広いのは広いお家だった。あと、この村長が貧しいわけじゃないけど領民が貧しいなんてことがあったら私達の責任だもんね。もっと頑張らなきゃ。
「ようこそいらっしゃいました」
村長の奥さんと家族が出迎えてくれる。多いな、家族。やっぱり娯楽がないから子作りってことなのかなぁ……
ちらっとユーリお兄様とアメリーお義姉様を見る。
こいつら、まさか詩と書が娯楽になってるから子作りが二の次とか、そんなこと言い出さないよな?
「急いでトマスを呼んできてくれ。領主様のご用命だ」
村長の言葉に息子さんかな? 青年が外に走っていった。
その、トマスさんっていうのが女神パルミラを見た人かな?
この話の舞台になっているのはイタリアによく似た地形の架空の地域です。
男性登場人物のほとんどにはモデルとなっている人物がおり、「そのモデルとなっている人物の所属している、または所属していたチーム」の本拠地が、その登場人物の勢力範囲となります。
モデルとなっているのはあくまで外見と地域だけであり、その人物の能力や適正、チームの規模や本拠地の規模などはまったく関係ないものとします。
☆今回の登場人物のモデル
ジェルメーヌ・ペドレッティ:ヒト科