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密談

通路をベルナールお兄様におぶわれながら移動する。

お兄様が具体的にどんな方法で王都から脱出したのかはわからないが、お兄様はこの狂乱の夜を生き延びているわけでその方法は参考にしたいとは思う。

ただ、それをそのまますると私は……控えめに言って大変なことになってしまうので、まったく同じ行動はできない。


まぁ、「まったく同じ行動」もなにも設定資料集にはどんな経路で逃げたとか、どんな方法で逃げたとかは書かれていなかった。

ただ、あの書き方だと恐らく私は王都から脱出すらできなかったと思われる。

ベルナールお兄様とはぐれた段階でほぼ詰み、なのかなぁ? そこは……ちょっと脱出方法を考えなければならないかもしれない。


とりあえずベルナールお兄様に危機感を持ってもらおうかな。

「ベルナールお兄様……」

「ん、どうした?」

おんぶされたまま耳元で囁く。

「気づきましたか? ルイーズ殿下の姿が見えなかったこと」

「そういえばおられなかったな。拾ったものでも食べられたか」

お兄様、私にもそれゆうてたね。そんな王族いないよ……いないよね?

「なにかルイーズ殿下から聞いていないのか? どこよく食べ物が落ちているとか……いや、お前は殿下をお止めしなければならないぞ。拾ったものを食べてはいけませんと」

なんでそういう話になるん?

このお兄様、頭が弱いタイプ? 弱点は頭?

「お兄様、真面目な話です」

「むっ」

あ、よかった。拾い食いも真面目な話だって言われたらちょっとどうしようかと思った。

「ご存知のように私は学園で殿下の同窓として、共に学ばせていただいています。その中である日、殿下に相談を受けたのです」

そんな相談なんてちっとも受けていないが、当の本人は今、恐らく幽閉中だ。話を作っても怒られないだろう。

「殿下は国王陛下がっ……おっとぉ?」

変な声が出た。いきなりお兄様が立ち止まったからだ。びっくりした。

「どうしたん……」

聞こうとして、ベルナールお兄様は視線で私に黙るように言ってくる。

上を向いてくんくんと鼻を鳴らして……なに? 匂い? 嗅いでるの?




「戦の匂いがする」


えっ、なにそれ。武力100の特殊能力なの? こわ……


「まさか……王軍がクーデターを……」

あっ、そっちじゃない。

「お兄様。殿下の心配が的中してしまったのかもしれません」

わざと深刻そうな声を出すとお兄様はこっちを向き、話を聞く態勢になってくれた。

「殿下はしばらく前、陛下と宰相閣下が話をしているのを偶然聞かれてしまったということなんです」

作り話を開始する。

作り話なのはそうなのだが設定資料集を読み込んだ私による作り話だ。

「舞踏会で参加した諸侯を殺す、と」

「なっ!?」

普段であれば信じられるはずもないことだろうが、なんか、戦の匂いとかいう気持ち悪いことを言い出す人が、実際に戦の匂いを感じているのだから多少は信じてもらえるはず。

「なぜそのようなことを、陛下は……」

「殿下はその言葉だけを聞かれ、それを私に相談してくださいました。陛下がなにを考えておられるのかはわかりません。しかし殿下はそれをもって陛下を諫めようとなさっておられました……今日、殿下のお姿が見えないこと、私はそれが心配なのです」

お兄様は眉間にシワを寄せて考えている。

「しかし……なぜお前はそれを舞踏会の前に俺に相談しなかったんだ?」

あっ、そりゃそうだよね。事前に伝えてたらもっとうまい方法もあったよね。えーっと、なんて答えようかな……

「あの、英雄王に並び称される陛下がそのようなことをするなんて、いかに殿下の言葉でも、私は信じられませんでしたもの……」

「あー」

……納得してくれた。よかった。

「ですから私は今日は殿下にお会いして『やっぱりそんなことはなかったでしょう』って笑いあいたかったのです。でも……」

「うん、わかった」

わかってくれた。

物わかりのいいお兄様は大好きです。

「まずは、王都を脱出しなければならないな」

「それなのですが……」

私はホールから出るときにデュマとドゥトゥルエルがこちらを見ていたことを伝えた。

お兄様は難しい顔をする。

「王都から出られないように検問がはられるかもしれんな……」

あー、やっぱりそうなるよねぇ。

「ひとつ、アイデアがあります」

私の言葉にお兄様は顔をこちらに向けた、って近い近い! おんぶしたままこっちを向くからキスしそうになったじゃないか!




王都における私の寄宿舎で私付きのメイドが1人。お兄様が所領から連れてきた護衛が5人。

王都脱出大作戦の開始である。

この話の舞台になっているのはイタリアによく似た地形の架空の地域です。

男性登場人物のほとんどにはモデルとなっている人物がおり、「そのモデルとなっている人物の所属している、または所属していたチーム」の本拠地が、その登場人物の勢力範囲となります。


モデルとなっているのはあくまで外見と地域だけであり、その人物の能力や適正、チームの規模や本拠地の規模などはまったく関係ないものとします。


☆今回の登場人物のモデル

ジェルメーヌ・ペドレッティ:ヒト科

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